八ッ場ダムの住民訴訟の原告らで2004年に結成された八ッ場ダムをストップさせる東京の会は、住民訴訟が終結したため、このほど、「多摩の地下水を守る会」、「多摩川を飲める水にする会」と共に「東京の水連絡会」を結成し、9月24日の結成集会を機に新たなスタートを切ることになりました。
結成集会の前日、東京の水連絡会は、最初の活動として、八ッ場ダム事業費の再増額案に同意しないよう求める請願を都議会に提出しました。同会は同日付で、小池都知事へ公開質問書も送付しています。
請願の本文をお送りいただきましたので、転載します。(太字は当会による)
紹介議員は共産党の白石たみお議員、徳留道信議員と生活者ネットワークの山内れい子議員とのことです。
2016年9月23日
東京都議会議長 川井 しげお 様
請願者 東京の水連絡会 代表 遠藤保男
八ッ場ダムの建設に関する基本計画の変更(第 5 回)についての請願
『要旨』
八ッ場ダム事業は四度の計画変更により、工期 2019 年度、事業費 4,600 億円となっています。
東京都を含む関係都県は、これ以上の計画変更は認められないと意見表明してきましたが、国土交通省関東地方整備局はさる 8 月 12 日、事業費を 5,320 億円に再増額する五回目の計画変更案を提示しました。更に東京都知事はこの提示を受入れるとし、貴議会への同意を求めています。
貴議会には、この計画変更案について、計画変更案自体の問題と、受益者である東京都の受益内容の問題、の二つの視点から慎重審議をする必要があります。
<計画変更案に関する5つの問題>
① 関係都県の求めるコスト縮減の結果、地すべり等を防止するための安全対策の対象箇所が5か所も減らされ、代替地を始めとする地元住民の居住地の安全性が強く懸念されます。
② 八ッ場ダム本体工事の基礎岩盤において、除去を必要とする弱層部が想定より深かったことが明らかとなり、従来から心配されてきたダムサイト地質の脆弱性が問題になっており、その解明が必要です。
③ 地すべり対策の追加や東京電力㈱水力発電所への減電補償などによって、更なる事業費増額が予想されます。
④ 本体工事の遅れや地すべり対策の追加などにより、八ッ場ダム建設事業の工期の更なる延長の可能性が高いと予想されます。
⑤ 東京電力㈱松谷発電所の水利権更新により、ダム建設の目的の一つ、「吾妻川の流量維持」が喪失します「吾妻川の流量維持」に関して、計画変更で取り上げられていないことから、その解明が必要です。
<東京都の受益に関する2つの問題>
① 東京都の水需要は1993年から減少が続き、2007年度からの年間一日最大配水量は500万m3/日を下回り、2014年度は465万m3/日に過ぎません。東京都の人口は2020年頃をピークに減少すると予想されていること、節水システムがより普及することから、今後の水需要が上昇傾向に転ずることは考えられません。一方、東京水道の保有水源は地下水源等、水道局が算入していない水源を含めると700万m3/日もあり、一日最大配水量を200万m3/日以上も超えています。八ッ場ダム完成時点が延びることでこの傾向は益々強くなります。
② 東京都は治水上、八ッ場ダムにより「著しい利益」を受けるとされていますが、ダムによる洪水の削減効果は下流に行くほど少なくなります。江戸川では、八斗島地点に比べ効果が10分の1になることを国交省が認めています。東京都が「著しい利益」を受けとされていることに大きな疑義があります。
以上、7つの問題から、次の二項目を請願として提出します。
『請願項目』
1.八ッ場ダムの建設に関する基本計画の変更(第 5 回)について、詳細に審議して下さい。
2.東京都議会として、八ッ場ダム基本計画の変更案に同意しないでください。