厚生労働省の「水道事業の維持・向上に関する専門委員会」が今年3月からほぼ1カ月おきに開かれています。10月26日に開かれた第8回会議では、人口減少による水道事業をめぐる環境の悪化に配慮して、施設の更新費用を水道料金に上乗せできるようにする水道法改正の方針を明らかにしました。
会議の資料は厚労省のホームページに掲載されています。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-kousei.html?tid=335087
八ッ場ダム事業は水需要の増大を前提として進められていますが、八ッ場ダムの完成予定年度以降、首都圏の人口は減少の一途を辿ることになります。不要なダム事業は水道事業の経営を圧迫していますが、水道法の改正により、水道料金の上昇が加速しそうです。
関連記事を転載します。
◆2016年10月31日 日経コンストラクション
http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/atcl/cntnews/15/102800572/?P=2
「水道法改正へ、施設の点検・修繕を義務化」
厚生労働省は水道施設の老朽化対策を目的に、点検や修繕を自治体などの水道事業者に義務付けるよう水道法を改正する考えだ。人口減少による事業環境の悪化に配慮して、施設の更新費用を水道料金に上乗せできるようにする。
10月26日に開いた同省の専門委員会で、改正の方向性を明らかにした。
検討しているのは、学識者などで構成する「水道事業の維持・向上に関する専門委員会」(委員長:滝沢智・東京大学大学院教授)。同日に開いた会合では、水道事業者による水道施設の点検実態の調査結果を公表した。
巡回時の目視などによる日常点検の実施率は比較的高いが、劣化状況の把握や修繕の検討などに必要な定期点検については厳しい結果が出た。特にコンクリート構造物の定期点検は、90%を超える事業者が実施していなかった。
下水道や河川並みの維持管理を
委員会はこうした状況を踏まえ、水道施設の老朽化対策や耐震化のために、下水道や河川などほかのインフラと同様の維持管理を水道事業者に求める報告書の骨子案を提示した。年内に報告書を取りまとめる予定だ。これを受けて、厚労省が水道法の改正案をまとめ、早ければ来年1月の通常国会に提出する。
改正案では水道事業者に対して、水道施設を良好な状態に保つように点検や維持・修繕を義務付ける見込みだ。コンクリート構造物については5年に1回といった頻度で劣化状況を近接目視などで点検することとする。
施設更新のための料金値上げも
人口が減っていくなかで水道事業者が水道施設の維持管理や更新を進められるように、将来の更新需要も視野に入れて水道料金を設定できるようにする。
改正案では、水道施設の維持管理の効率化という観点から、官民連携を推奨する。その一環として、事業の運営権を民間事業者に売却する「コンセッション」が導入しやすくなるように制度を整えていく。
ただ、厚労省水道課によると委員会ではコンセッションを巡って様々な意見が交わされた。大規模な自然災害が生じた場合に、最重要のライフラインである水道の災害対応を民間事業者に負わせるのは酷だとする指摘もあった。改正案では、連携する官民の役割分担や責任の範囲の明確化が焦点の一つになる見込みだ。
安藤 剛 [日経コンストラクション]