長崎県は石木ダム建設計画で、地権者らによる工事妨害行為の禁止を求めて仮処分を申し立てた際、写真家・村山嘉昭さんの写真集の写真を無断使用しました。これに対して、村山さんが長崎県に抗議文を提出したことが報道で大きく取り上げられています。
住民や支援者の願いを踏みにじる長崎県のなりふり構わぬ姿勢に対して、世論の批判がますます高まっています。
★村山さんのブログより
https://murayama.themedia.jp/posts/1815274?categoryIds=414484
「2016.12.26 13:30 ひとりの写真家として、長崎県知事に抗議文を出しました。」
★村山さんのTwitter より https://twitter.com/_murayama?lang=ja
ー石木川のほとりで暮らす人々は普段とても温厚だけれど、抗議の声を上げる時は真剣に自分の思いをぶつける。メディアは日常を取り上げない。カメラが映すのはいつも抗議の姿ばかり。だから住民はいつも怒っているように見える。石木ダムを多面的に考えるには日常を知ることが必要。そう思い、本を制作。
ー過激派や活動家でもなんでもない、普通のおばちゃんやおっちゃん、おばあさんやおじいさん、若者世代が「この計画はおかしか」と言い続けて半世紀。石木川のほとりでこれからも暮らし続けるために、嫌々でも「抗議活動」をせざる得ないのが実態。なのに「反権力集団」と決めつける人がいる理不尽さ。
ー稲穂が揺れる川原地区。ここに暮らす住民が、この先もずっと残したいと願う稲田で、ある夫婦を撮影。豊作を喜んで笑顔となった瞬間にシャッターを押し、収穫前の日常を写すことができた。その写真を長崎県は”工事妨害”の人物特定の証拠として使用。こんなことの繰り返しで、事業の理解が深まるか(呆
◆2016年12月27日 NHK長崎放送局
http://www3.nhk.or.jp/lnews/nagasaki/5035619171.html?t=1482802519382
ー石木ダムの写真使用で抗議ー
長崎県が、川棚町に計画している石木ダムの建設をめぐって、地権者らが妨害しないよう求める仮処分を裁判所に申し立てた際、工事に反対する住民を写した写真集の写真を、無断で、裁判所に提出したとして、撮影した写真家が県に抗議文を提出しました。
石木ダムをめぐっては、建設に反対する地権者などが工事現場で座り込みを続けていて長崎県はことし10月、地権者らが工事を妨害しないよう求める仮処分を長崎地方裁判所佐世保支部に申し立てています。
これについて、石木ダムや住民を撮影している写真家の男性が、写真集の写真を、県が、無断で、裁判所に提出したとして県に抗議文を提出しました。
男性や県によりますと、提出した写真は、現場で抗議活動をする住民が写った4枚だということで男性は、「ダム建設に反対する住民の思いを伝えようと撮影したのに、逆の意図に使われ不利益になりかねない。裁判での使用は住民も自分も想定しておらず、今後の撮影活動にも大きな影響が出る」と批判しています。
一方、長崎県は、NHKの取材に対し、抗議活動をする住民を特定するための証拠として裁判所に提出したと説明していて「写真集は公に出版されており、法的に問題はない」と話しています。
◆2016年12月27日 朝日新聞長崎版
http://digital.asahi.com/articles/ASJDV3Q9VJDVTOLB001.html
ー長崎)写真家が県に抗議 石木ダム仮処分で写真無断使用ー
県と佐世保市が川棚町で進める石木ダム建設計画で、地権者らによる工事妨害行為の禁止を求めて県が今年10月に仮処分を申し立てた際、提出書類の中に東京都内の写真家村山嘉昭さん(45)が撮影した写真集の写真4枚が使われていたことがわかった。村山さんは26日、県石木ダム建設事務所(同町石木郷)に「自分の意図と大きく異なる使われ方をした」との抗議文を提出し、写真の削除を求めた。
県が申し立てた仮処分は、ダム反対の地権者ら19人に、付け替え道路工事現場への県や工事業者の通行を妨害しないよう求めるもの。10月28日、長崎地裁佐世保支部に申し立てた。
村山さんによると、県が提出した証拠書類に、今年5月刊行の自身の写真集「石木川のほとりにて 13家族の物語」の写真4枚が使われ、工事を妨害したとされる人物5人の特定に使われているという。村山さんは、知事宛ての抗議文で「撮影者と被写体の信頼関係をないがしろにする行為」「著作権を有する私の人格権を著しく侵害した」などとして、県に証拠書類からの削除を求めた。
知事宛ての質問書も提出。写真を裁判資料に使うことを決めた経緯や、「著者の同意を求めるべきだとは考えなかったのか」などを尋ね、1カ月以内の回答を求めた。
同事務所によると、書類は主に県河川課が作成。同事務所の浅岡哲彦次長は取材に、村山さんの写真が使われていることを認めた上で「弁護士に相談したところ法的に問題ない、との判断だった」と答えた。
村山さんは取材に「地権者らがどう考えているのかを知ってもらうための写真集。撮らせてもらう以上、ふるさとを守りたいという地権者らの心を尊重して撮っている。その意図と違う使われ方をしている」と話した。
県は2014年8月、地権者ら23人に、付け替え道路工事の妨害禁止を求める仮処分を申請し、翌年3月、うち16人について妨害行為を禁じる決定が出た。
今年10月には、新たに19人について同様の決定を求めて申し立てた。
ダム反対の地権者や支援者らは、マスクなどで顔を隠すなどして付け替え道路のゲート前で抗議行動を続けており、県は工事を進められないでいる。
■県収用委の調査 途中で中止 現地で2人から抗議受け
県と佐世保市が川棚町で計画している石木ダムの用地収用を巡り、県収用委員会(梶村龍太会長)は26日、川棚町岩屋郷で現地調査をした。しかし、途中で建設反対を主張する男性2人が軽トラックで乗り付けて猛然と抗議したため、現地調査を途中で中止した。
県が昨年7月に裁決申請した土地約3万平方メートルと、住宅4戸や団結小屋の現況を、徒歩や車両から約1時間かけて確認する予定だった。しかし、調査を始めて約15分後、県道を歩いていた委員らの前に軽トラック2台を運転して男性2人が現れ、猛然と抗議。「帰れ!」「勝手なことをするな」「人の土地を取りあげるのは泥棒と同じことだ」などと訴えた。現場にいた女性も「帰れー」と声を上げた。
これを受け、梶村会長がこの日の現地調査終了を表明。梶村会長は、現地を離れた後、川棚町公会堂前で取材に応じ「財産権を奪うことなので地権者が反対する気持ちは分かる。しかし適正な補償を実現しなければならない。収用委としては法にのっとって迅速に手続きを進めなければならない」と話した。
現地調査には委員7人全員が参加。町中央公民館で県石木ダム建設事務所の有吉正敏所長らから概要説明を受けた後、現地へ向かった。
県が昨年7月に裁決申請した土地や家屋については県収用委が昨年10月、現地調査と審理を川棚町内で実施しようとしたが、地権者らの抗議で見送ってきた経緯がある。(福岡泰雄)
◆2016年12月27日 毎日新聞西部朝刊
http://mainichi.jp/articles/20161227/ddp/012/010/022000c
ー長崎・石木ダム建設 反対派の写真、県が無断で証拠申請 地裁支部仮処分ー
長崎県が同県川棚町で計画している「石木ダム」建設事業を巡る長崎地裁佐世保支部の仮処分で、県が写真を撮影者に無断で証拠申請していたことが分かった。反対派の地権者らの日常風景を写したもので、撮影した写真家の村山嘉昭(よしあき)さん(45)=東京都大田区=は26日、「連絡もなく意図に反する形で使われている」として、県に抗議文を提出した。【浅野孝仁】
撮影者が抗議文
ダム建設予定地の周辺では、地権者らが連日、座り込みを続け、県は10月、妨害行為で工事が進まないとして妨害禁止を求め仮処分申請した。
この中で県は、村山さんが5月に出版した写真集「石木川のほとりにて 13家族の物語」に収録された4枚の写真を証拠として提出した。計5人の地権者や支援者の顔が写っており、県の職員が撮影した、サングラスやマスク姿の別の写真と並べ、人物を特定する目的で使用している。
村山さんは「抗議行動をしている人物を特定するために撮影したわけではない。地権者との信頼関係も壊れかねず、無断利用は道義的に許されない」と話した。県河川課は取材に対し「弁護士と相談しており、何ら問題ない」と反論している。
本来の目的と違う
青山学院大の大石泰彦教授(メディア倫理法制)は「著作権法上は問題ないかもしれないが、写真や映像の勝手な利用は本来の目的とは違う。取材対象者もナーバスになり、取材側を萎縮させる可能性もある」と指摘している。