富山湾に流れ込む黒部川は、有名な黒部ダムの下流に関西電力の出し平ダム(1985年完成)や国土交通省の宇奈月ダム(2001年完成)があります。
黒部川上流は地質がもろく、ダム計画の想定を超えて各ダムに土砂がたまってきています。ダムにたまる土砂は、ダムの貯水量を減らし、海岸浸食の原因ともなりますので、出し平ダムと宇奈月ダムでは、連携排砂という方法でダムにたまった土砂を下流に流す試みが続けられています。しかし、ダムにたまった土砂はヘドロ化し、富山湾の生態系に深刻なダメージを与えたとして、過去には漁民が裁判に訴える事態も起こりました。
◆2008年8月18日 日経BPネット
http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/z/32/
ー黒部川の“黒い泥”今年も32万m3排出 漁民が関西電力を提訴」
◆2010年7月9日 フジテレビ
http://www.fujitv.co.jp/b_hp/fnsaward/19th/10-129.html
「不可解な事実~黒部川ダム排砂問題」
報道によれば、昨年6月に行われた両ダムの連携排砂では合計50万立法メートルもの土砂が排出されたとのことです。
全国のダムの堆砂状況によれば、連携排砂をしているにもかかわらず、完成後32年目の出し平ダムは堆砂量が総貯水容量(901万立法メートル)の半分近い449万立方メートル、16年目の宇奈月ダムは総貯水容量(2470万立法メートル)の三分の一近い764,2万立法メートルの堆砂量となっています。
◆2017年1月18日 朝日新聞富山版
http://www.asahi.com/articles/ASK1K55GXK1KPUZB00Q.html
ー宇奈月ダムからの土砂流出が大幅増 連携排砂ー
黒部川の出し平、宇奈月両ダムの連携排砂の影響を評価する「黒部川ダム排砂評価委員会」(委員長=田中晋・富山大名誉教授)が17日、富山市内で開かれた。昨年6月の連携排砂で、上流の出し平ダムから約30万立方メートル、下流の宇奈月ダムから約20万立方メートルが流出したことが報告された。宇奈月ダムからの土砂流出が大幅に増加して過去最大になり、委員から「下流に影響が少ない連携排砂の方策を検討すべきだ」などの意見が出た。
連携排砂は、宇奈月ダムが稼働した2000年から国土交通省と関西電力が実施。国交省黒部河川事務所によると、当初は出し平ダムのみでたまった土砂の減少が確認されていたが、宇奈月ダムでも12年から確認されるようになり、15年まで年0~7万立方メートルで推移していた。
16年は宇奈月ダムからの土砂流出がこれまでの最大値の約3倍に達し、藤田士郎所長は取材に「稼働から16年経ち、ダム湖にたまった土砂が増えて流出しやすい状態になったと考えられる。流域関係者から懸念の声もあり、今後は土砂の出入りをきちんと把握し、連携排砂の際に流出する土砂量を予測することも考えたい」と話した。
下流で河床がえぐられる原因を確かめるため、発信器を埋め込んだ石をダム湖に沈めて追跡する調査については、昨年の20個から今年は30個に増やすことが報告された。(高津守)
◆2017年1月17日 北日本放送
http://www.knb.ne.jp/news/detail/?sid=13665
ー黒部川ダム排砂、下流への影響少ない方策検討ー
黒部川の2つのダムにたまった土砂を下流に流す連携排砂の結果について評価する委員会が17日、富山市で開かれ、下流の宇奈月ダムの排砂量が前の年の3倍に増えたことから今後、下流への影響が少ない方策を検討することを確認しました。
環境や地質などが専門の学識経験者で構成する黒部川ダム排砂評価委員会が17日、県民会館で開かれ、ダムを管理する国土交通省と関西電力の担当者が出し平ダムと宇奈月ダムで去年6月に実施した連携排砂の経過と水質や水生生物について調査した結果を報告しました。
去年の排砂では、上流の出し平ダムからおよそ30万立方メートルの土砂が、下流の宇奈月ダムからはおよそ20万立法メートルの土砂が流れ出ました。
宇奈月ダムからの土砂は、前の年の7万立方メートルから3倍に増えていて、委員からは、宇奈月ダムから多くの土砂が流出しやすい状態になっていると指摘がありました。
このため、今後の留意点として、「下流に影響が少ない方策について検討する」ことを盛り込みました。
また、環境への影響については、「大きな影響を及ぼしたとは考えられない」という見解で一致しました。
国土交通省と関西電力は、17日の意見を踏まえ、3月に新年度の排砂計画をまとめる予定です。