さる1月25日、スーパー堤防の建設事業の差し止めと損害賠償を住民が求めた行政訴訟の判決が東京地裁でありました。関連記事をこちらにまとめています。
弁護団より、この訴訟の説明資料をご提供いただきましたので掲載します。
PDFデータはこちらです。➡弁護団説明資料(PDF)
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2017(平成29)年1月19日
江戸川区スーパー堤防事業差止め等請求訴訟(事前レク資料)
~スーパー堤防事業に初の司法判断~
第1 江戸川区スーパー堤防事業差止請求訴訟一審判決
入廷行進:1月25日(水)10:30 東京地裁前
判決:同日11:00 東京地裁103号法廷
記者会見:同日13:00 司法記者クラブ(東京地裁2階)
第2 訴訟の概要
1 原 告 東京都江戸川区北小岩地域に居住する地権者等(4名)
原告団長 髙橋新一
被 告 国、江戸川区
係属部 東京地方裁判所民事第28部(岸日出夫裁判長)
提訴日 平成26年11月12日
2 江戸川区スーパー堤防事業の概要
(1)スーパー堤防とは
・ 通常の堤防とは異なり、裏法面(市街地側)を3%以内という緩やかな斜面とした堤防。
・ 大きな洪水により越水が生じた場合でも破堤せず壊滅的な被害を生じさせないことを目的。
・ 事業開始から24年が経過した平成24年の段階で5.8%しか完成しておらず、完成までには400年・12兆円を要すると試算された。その後会計検査院の調査により完成率は1.1%に。
・ 民主党政権による事業仕分けで「廃止」判定、政権交代後復活。
(2)江戸川スーパー堤防事業
・ 江戸川区北小岩1丁目の江戸川右岸120mをスーパー堤防として整備するもの。
・ 北小岩一丁目東部地区では、そもそも江戸川の堤防が越水したことはなく、本件地区でスーパー堤防事業を実施する必要性はない。
3 請求の概要
①(国に対し)江戸川区スーパー堤防事業に係る盛土工事の差止め
②(国・江戸川区)違法なスーパー堤防事業により原告らに生じた精神的苦痛への賠償として各100万円の慰謝料請求
*なお、国による盛土工事は平成28年3月で完成したため、請求①は訴えの利益を失っている。
4 訴訟の争点(原告の主な主張)
(1)国による盛土工事権限の不存在(所有権侵害)
・ 「共同実施」の名の下に、江戸川区による土地区画整理事業に基づく仮換地指定を利用して住民を追い出し、国が盛土工事を実施。これは、地権者等の同意なく実施可能な工事を区画整理の「施行者」による「土地区画整理事業」の工事に限定した土地区画整理法に違反。
(2)スーパー堤防事業による人権侵害
盛土工事のための二度の移転による居住の自由および人格権侵害
盛土による被害:①盛土の崩落・地盤沈下の危険性 ②JR総武線からの騒音増大 ③傾斜地化による高齢者等に対する身体的負担
(3)スーパー堤防は必要性・公共性を欠く
・ スーパー堤防事業は、連続して整備されないと機能を発揮しない一方、整備率が低く、完成時期も示されていないのであって、治水事業として機能する見通しがない
・ 会計検査院もスーパー堤防よりも通常堤防の強化が優先的に実施されるべきと指摘
・ 江戸川区スーパー堤防事業の費用便益計算は国が定めたマニュアルに違反しており、マニュアル通りに計算すると費用便益比は0.5を下回る
【江戸川区スーパー堤防事業の流れ】