2013年4月25日
昨日、国交省関東地方整備局が八ッ場ダム建設を位置づけた利根川・江戸川河川整備計画案を公表しました。
この計画案には八ッ場ダム建設が位置づけられています。
八ッ場ダム計画は1952年に発表された古くからの計画ですが、1997年の河川法の改正により河川整備計画の策定が義務付けられてからは、上位計画のないダム事業として進められてきました。
しかし関東地方整備局は民主党政権下で一旦はダム事業の見直しが政府に求められたことから、2011年12月に当時の前田国交大臣により本体工事の再開が表明された後も、上位計画なしで本体着手するのはおかしいと、事業の進め方が批判されてきました。
そこで関東地方整備局は昨年から八ッ場ダム建設を利根川の河川整備計画に盛り込むことを目ざして、整備計画の策定作業を急いできました。
昨秋来の利根川有識者会議の議論でも、過大な洪水流量を設定し、八ッ場ダム事業を正当化するのはおかしい、環境に一切触れずに今後30年の利根川のあり方を決めてしまうのはあまりに強引、など、策定の進め方には有識者からも多くの疑問が呈されてきました。
民主党政権下では、民主党内の一部良識派議員らが、関東地方整備局の強権的な手法に異論を唱え、暴走にブレーキをかける役割を果たしたのですが、自公政権の復活を背景に、有識者会議は3月で打ち切られ、パブリックコメント、公聴会で多くの反対意見も一切無視した整備計画案が今回発表されました。
ネット上では以下のURLで関連資料も合わせてご覧いただけます。
●関東地方整備局の記者発表資料 http://www.ktr.mlit.go.jp/kisha/river_00000082.html
●利根川・江戸川河川整備計画(案) http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000078001.pdf
●意見に対する関東地方整備局の考え方 http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000078002.pdf
●利根川・江戸川有識者会議の資料と議事録 http://www.ktr.mlit.go.jp/tonejo/seibi/kaigi.htm
●パブリックコメントの結果 http://www.ktr.mlit.go.jp/river/shihon/river_shihon00000206.html#kekka
●公聴会の結果 http://www.ktr.mlit.go.jp/river/shihon/river_shihon00000213.html#kekka
関連記事を転載します。
一部の記事では「利根川水系の河川整備計画案」となっていますが、今回の案は「利根川・江戸川河川整備計画案」、つまり利根川本川だけの整備計画案であり、利根川水系全体の計画案ではありません。
河川整備計画をつくる時には、水系全体の計画をつくるのが常識です。上流側の支川が本川にも影響するからです。けれども今回、関東地方整備局は、支川の整備計画に手をつけず、、本川の整備計画のみをつくろうとしています。これは、支川まで計画に入れると、策定作業に時間がかかるためです。しかし、これでは川の実態を把握した計画にはなりえません。このような策定手順は、全国でも例を見ない異常なやり方です。
利根川流域住民の今後30年の水との関わり方を決定づける河川整備計画は、八ッ場ダム事業を進める為に異常な手法で策定されることになります。
◆2015年4月25日 上毛新聞
-八ッ場ダム建設明記 利根川整備計画案発表 6都県へ意見聴取ー
国土交通省関東地方整備は24日、利根川水系利根川・江戸川河川整備計画案を発表した。1月に示した原案の方向性を維持し、八ッ場ダム建設の必要性を明記した。今後は本県を含む流域1都5県の知事に計画案を送付し、意見を聴取する手続きへ入る。
計画案は、「洪水調節、流水の正常な機能の維持、水道および工業用水の新たな確保並びに発電を目的とする八ッ場ダムを建設する」と明記。過去の豪雨を基にした8通りの想定値では、八ッ場ダムは毎秒100~1820立方㍍の洪水調節量があるとした。
同局は1月下旬に整備計画の原案を発表した後、パブリックコメントや公聴会で住民の意見を聞き、一部修正を加えた。学識者を含め寄せられた批判や意見の概要と、それに対する同局の考え方を示す資料も計画案と同時に公表した。
◆2013年4月25日 朝日新聞群馬版
http://www.asahi.com/area/gunma/articles/MTW20130425100580001.html
-整備計画案を公表ー
国土交通省関東地方整備局は24日、八ツ場ダム(長野原町)建設を含む「利根川・江戸川河川整備計画」の案を公表した。整備局は関係都県知事に意見聴取の文書を送付。早期の策定を急ぐ。
整備局は1月29日に原案を公表後、利根川・江戸川有識者会議(21人)を4回開き、3月18日の前回会合で議論を打ち切った。ダム見直し派委員の大熊孝・新潟大名誉教授と関良基・拓殖大准教授が、会議再開を太田昭宏・国土交通相らに要請していた。
整備計画案は原案と同様に「洪水調節や水道用水などを目的に八ツ場ダムを建設する」と明記。有識者会議などで寄せられた意見を踏まえ、洪水や渇水の歴史や環境問題を詳述した。
主にダム見直し派から寄せられた意見への整備局の見解も同時に公表。洪水の基準地点の伊勢崎市八斗島で毎秒1万7千トンとする目標流量を「過大だ」とする意見に対しては、「首都圏を抱える利根川水系の社会・経済的重要性を考慮した」と説明。八ツ場ダムの現地の安全性は「対策して設計する」と答えた。
県幹部は「河川整備計画を急ぐのは当然で、中身の事業についても早く進めてほしい」と注文。一方、有識者会議の再開を求めた関委員は「整備計画の案も届いていない。意見をどう取捨選択したのか、会議の場で委員に説明すべきだ」と批判した。(小林誠一)
◆2013年4月25日 読売新聞群馬版
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/gunma/news/20130425-OYT8T00015.htm
ー利根川整備案 ほぼ変更なしー
国土交通省関東地方整備局は24日、八ッ場ダム(長野原町)の本体着工に向けた利根川水系の河川整備計画案を公表した。
同整備局は今年1月に同計画の原案を公表、有識者や地元住民から意見を募ったうえで計画案をまとめた。
原案から大きな修正点はなく、一部有識者らから批判された伊勢崎市八斗島の基準点の目標流量を毎秒1万7000立方メートルとする案や、八ッ場ダムの建設は原案のまま盛り込まれた。
同整備局は24日、計画案について流域都県知事から意見聴取を始めた。意見を踏まえて計画を策定するが、時期は未定という。本体着工について太田国土交通相は「(計画策定に)縛られるものではない」と述べ、計画と切り離して進める考えを示している。
市民団体「八ッ場あしたの会」の渡辺洋子事務局長は「有識者や住民から聴取した意見が十分に反映されず、意見聴取は単なるガス抜きだったとしか思えない」と話している。
◆時事通信 2013年4月24日
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201304/2013042401017&g=eco
-八ツ場ダム建設明記=利根川水系の整備計画案-関東地方整備局ー
国土交通省関東地方整備局は24日、利根川水系の河川整備計画案を公表した。
整備計画はおおむね30年間の整備目標を示したもので、この中で八ツ場ダム(群馬県長野原町)の建設を明記した。今後、関係1都5県の知事の意見を聞いた上で、正式決定する。
八ツ場ダムをめぐっては、民主党政権が一時建設中止を掲げたが、2011年末には建設継続の方針を決めている。計画案では、同ダムの目的として洪水調節や水道・工業用水の確保、発電などを列挙し、「建設する」とした。