劇作家の坂手洋二氏が川辺川ダム予定地を舞台に、二年前、東日本大震災の衝撃の中、名優、大滝秀治のために書き下ろした作品が、新たに燐光群によって蘇ることになりました。
舞台のアフタートークでは、坂手氏とゲストの対談も企画されており、6月6日は八ッ場ダムのトークが予定されています。
燐光群の公式サイトより一部転載
http://rinkogun.com/Next.html
燐光群 創立30周年記念『帰還』
作・演出○坂手洋二
5月31日(金)~6月9日(日) 下北沢ザ・スズナリ
受付開始○開演の40分前 開場○開演の20分前
男は帰ってきた。その集落に。故郷でもない、何十年も訪れたことのない、その場所に。
なぜもう一度その地を訪ねようと思ったのか。
記憶の外に追いやり、封印してきた歴史。日本が高度経済成長期に入る以前の、もはや忘れられたはずの時代の出来事……。
男は、約束を果たさねばならなかった。
坂手洋二が二年前、東日本大震災の衝撃の中、大滝秀治のために書き下ろした、たましい燃ゆる大作。
1950年代の日本から現在へ。終わりなき精神の彷徨が、受け継がれる。
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何年前だったか、保坂展人さんの八ッ場ダムへの取材につきあった。壮大なスケールの準備が進められているその場所は、豊かな自然の営みに逆行する、極めていびつな、SFにさえなり得ぬ非現実の違和感に満ちていた。
当たり前のことだが、ダムも一つ一つ違う。私はその後、「川辺川ダム」について調べるため、熊本・五木村へ行き、最後の二日間、ダム湖に沈むかもしれなかったその場所での生活を続けている、Oさんにお会いした。
Oさんは畑を手放した時、畑の土を少しずつ持ち帰りお坊さんにお経を上げて貰ったという。一つ一つの田、一枚一枚の畑から、土を持ってきた。土地が変わったということを先祖に報告するという意味でそうしたのだという。新しい畑に撒こうかという気持ちもあった。祖先との対話、自然との交流を重ねてきたOさんは、言いきった。「文明は人を、弱い存在にする」と。
「3.11」のその日、プロットは完成した。その後、私は、Oさんの決意と、演劇について話しはじめるといつも顔を紅潮させ昂揚する大滝秀治さんの意欲に押されるように、自身の直感を、確信へと固めていった。 坂手洋二
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坂手洋二氏とゲストのアフタートーク
3日(月)嶽本あゆ美(劇作家 メメントC)
4日(火)高橋ユリカ(ルポライター)
5日(水)永井愛(劇作家・演出家 二兎社主宰)
6日(木)渡辺洋子(八ッ場あしたの会)
7日(金)保坂展人(世田谷区長)