首都圏下流の水需要に応えて、利根川水系のダムを多数抱える群馬県。平野部でも、利根川の扇状地が豊かな地下水を涵養し、おいしい水が何より自慢。
しかし群馬県も、八ッ場ダムの利水事業に参画しており、県南部の自治体では、群馬県による「水の押し売り」が悩みの種です。
2005年3月3日 朝日新聞群馬版より
「水余り」値上げは難題ー動き出す20万都市 新太田市の課題
新しい太田市の水道料金は地域によって三通りになる。
現在、太田市水道局が管理する太田市と尾島町など(03年度給水人口16万6109人)は、井戸水と一部で河川の表流水を混ぜた水を配水している。薮塚本町(同1万9280人)は大間々、笠懸両町と共同経営する渡良瀬水道企業団から県営水道水を各家庭に供給している。新田町(同3万316人)も単独で県の水道水を買っている。
市水道局によると、平均的な標準家庭(口径13ミリ使用)で月平均使用水量を20立方メートルとすると、一ヶ月の料金は太田市と尾島町は月2050円、薮塚本町は同2550円、新田町は同2900円と開きがある。
売れた水の量(有収水量)を単純に比較すると、03年度では太田市と尾島町が1立方メートルあたり156円、薮塚本町が同172円、新田町が同205円となる。
●5年を目標に
1市3町の合併協議では、異なる料金を5年を目標に「できるだけ早く統一する」とした。
どこを基準にするのか。受給者にしてみれば、料金が高い新田町を料金の低い太田・尾島に近づけて統一するのが望ましい。しかし、市民の生活様式の変化が料金設定に影響を及ぼしかねないという。
同市水道局によれば、有収水量は00年度をピークに年々減少している。冷夏だった03年度は一般家庭の使用水量が2・8%も減った。その間、給水人口や給水戸数は増えている。
同水道局では、節水型家電製品が普及するなど「節水」が市民に定着したこと、ペットボトル入り飲料水が好まれて飲まれることなどを理由にしている。
市は、03年6月に標準家庭(口径13ミリ使用)で22.5%の値上げをした。だが、有収水量が予想より伸びなかったこともあり、同年度は約35億7千万円の事業収益に対し事業費用は34億4千万円で、純利益は前年度より約27.1%減少の1億3千万円にとどまった。
●累積する借金
一方、水道施設の整備・拡充や石綿セメント管の敷設替え工事などのため11億1千万円の企業債(借金)を借り入れた。累積額は200億円を超えている。
薮塚本町は約1億3700万円の起債の未償還額がある。新田町の水道事業の累積欠損額は9千万円を超える見込みだ。
「水余り」のなか、06年8月からは東部地域広域水道から買った八ッ場ダムの水を受け入れる。県との約束とはいえ、施設整備などに数億円の費用がさらにかかる。
阿久戸征三・太田市水道局長は「料金を値上げして赤字分をユーザーに負担してもらう時代ではない」と話す。
同局では、99年度から水道料金などの徴収業務を、02年からは渡良瀬浄水場の維持管理業務をそれぞれ民間委託した。
「民活を最大限に生かして組織の体質を強化し、新市の水道料金を統一したい」