八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

公開質問状への各党回答ー総選挙を前にして

2005年8月28日

 総選挙告示を前に、23日、八ッ場ダムを考える会は、首都圏のダム問題を考える市民と議員の会と共に、公開質問状を提出しました。

*公開質問状への各党回答文(26日締め切り)*
 (自民党から、「担当者不在につき、期限までに回答できない」との返事。)

【質問1】八ッ場ダム計画はすでに治水と利水の両面で必要性がなくなったという指摘がされています。八ッ場ダム計画の必要性の有無について、どのようにお考えですか?

■民主党■ 「必要性がない」
意見ー利水:利根川、荒川流域は、全体として水に余裕がある。
   治水:ダムに頼らない代替案が可能。

■公明党■ 「必要性がある」
意見ー「治水面での必要性はあると考える。」

■日本共産党■ 「必要性がない」
意見ー「国土交通省自らの計算でも、カスリン台風による洪水の治水効果がないことを、衆院での質問で認めている。水需要の面でも、利根川流域の実状に合わない過大な水利用計画や取水対策を見直し、水利権の転用で調整を行えば、水道用水や工業用水の確保を目的とした八ッ場ダムは必要ない。」(一部省略)

■社会民主党■ 「必要性がない」
意見ー「国交省が利根川水系の治水対策上想定する洪水流量は誇大な数値。水需要についても、東京都の水道用水が約160万㎥/日の余剰水源を抱え、首都圏全体の需要としても水道・工業用水ともに10数年来横ばい。首都圏の人口は2015年をピークに減少に向かうと予想される。」(一部省略)

【質問2】 八ッ場ダムができると、ダムサイト岩盤の崩壊やダム貯水域の地すべりの危険性が生じることが指摘されています。八ッ場ダムによる災害誘発の危険性について、どのようにお考えですか?

■民主党■ 「その他」
意見ー「岩盤については、充分な科学的調査と分析が必要。」

■公明党■ 「補強工事で対応可能」
意見ー「専門家から意見を聞き、さらに調査したい。」

■日本共産党■ 「きわめて問題」
意見ー「ダムの建設予定地は、一帯が火山性堆積物でできており、変質帯や断層も多く、脆弱地質。…(略)・・・むしろダムによって新たな災害を招く危険性が増すと専門家も指摘している。」

■社会民主党■ 「きわめて問題」
意見ー「一帯は、浅間山噴火による火山土層によって厚く覆われている。地層は脆弱で地滑りの起き易い地域。地下水の流出が滞って表土が崩れ、そこから上方の土壊崩落が連鎖的に引き起こされることになるだろうと専門家も指摘。ましてや地形を寸断し、地表を削り取って無理やり切り開いた造成地は、素人目にも最悪の危険地帯。いかにカネ・物量を投入して安全対策を講じたつもりでも、自然のバランス崩壊から生ずる恐るべき事態・現象に耐えうるという保障は、どこにもない。」(一部略)

【質問3】八ッ場ダムの建設の中止について、どのようにお考えですか?

■民主党■ 「中止すべき」

■公明党■ 「事業推進」
意見ー「地元住民や専門家の声を聞きながら進めるべき。」

■日本共産党■ 「中止すべき」
意見ー「八ッ場ダム建設の事業費総額は、19年前の2.2倍の4600億円に跳ね上がり、まさに事業計画も予算も”あって無きが如し”。東電に対する減電補償が大きく膨らむことで、事業費がさらにかさむ可能性も指摘されている。…(略)…地元住民はもとより他都県の広範な市民、学識経験者の声を反映させる協議機関を設置すべき。」

■社会民主党■ 「中止すべき」
意見ー「川原湯温泉など340戸、農地など31600アールが水没することで地域社会を破壊に至らしめ、そのあとには取り返しのつかない自然破壊と大災害の危険性が残されようとしている。不必要という以上に、社会的な大損失。」(一部略)

【質問4-1】(3)の質問で「中止すべき」と答えた場合、地元の53年にわたる精神的苦痛、経済的損失を補償するとともに、これからの生活を構築できるようにするため、生活再建を支援することが必要と考えますが、ご見解をお聞かせください。

■民主党■ 「生活再建支援が必要」
意見ー「川原湯をはじめとする住民に対する生活再建は、国が責任をもって行うべき。」

■日本共産党■ 「生活再建支援が必要」
意見ー「ダムに翻弄され、50年以上にわたって必要な公共事業も満足に実施されず、新たな建物の建設も規制され、経済活動や生活の向上を阻まれてきた住民の被害は深刻。国が生活再建を支援するのは当然。」

■社会民主党■ 「生活再建支援は必要」
意見ー「現在、住民は代替地等などへの移転を前提として将来の生活設計を行っており、現段階でのダム中止はその生活設計を白紙に戻し、地元の人々を絶望の淵に追い込みかねない。そうならないためにも、早急の政策判断が必要。」(一部略)

【質問4-2】ダム中止後の生活再建策について、党のご見解は?

■民主党■
「住民が将来の生活を構築できるように、透明な手続きによって生活再建策を推進する。」

■日本共産党■
「長期にわたった公共事業計画の中止にともなう住民被害を償い、生活再建をすすめるために、住民への個人補償制度を法制化すべき」

■社会民主党■
「中部ダムを中止した鳥取県は、住民の意見を吸い上げ振興計画を作成。日本で初めての個人に対する補償も含まれていた。このような自治体の先進事例にならい、生活再建支援措置、住宅及び営業用建物の新改築に対する助成金に要する支出と利子補給、地域社会構築支援措置を行う。その財源は、ダム起業者と受益都県が地域振興基金を設立して負担すべき。また、移転補償契約または補償金支出がすでに終了していても、移転予定地域の住民が移転前の生活を望む場合は、その意思を優先できるようにする」(一部略)

【質問4-3】 ダム中止後に進めるべき地域振興事業について、党のご見解は?

■民主党■
「住民の方々とともに、真に必要な地域振興事業の計画を策定して振興事業を推進する」

■日本共産党■
「移転した人も含め、希望する住民が住み続けられるように、農業、観光事業の振興のための基盤整備が必要。鳥取県の中部ダム計画を中止した際、県が取り組んだケースを参考にし、徹底した住民参加を貫いて、本当に役立つ施策を”八ッ場ダム予定地域にかかわる振興計画”として策定すべき。」(一部略)

■社会民主党■
「社会資本整備の遅れを取り戻す制度を、特別立法で対応すべき。国の負担、補助と地方債の発行に特例を設けて事業を円滑に実施できるようにしながら、地域基盤整備事業を当該の都道府県と市町村の事業として行う。」(一部略)

【質問5】 ダム予定地の人々は、貯水域の山側に造成する代替地へ移転することになっていますが、国土交通省の約束とは異なり、現実には代替地造成のひどい遅れ、分譲価格の高さ、代替地の居住性の悪さによって、代替地で生活再建をすることが困難になっています。この問題について、どのようにお考えですか?

■民主党■ 「その他」
意見ー「今の国土交通省が進めている代替地計画は、あくまでダム推進のものであり、そのために住民の生活が軽視されている。ダム中止に伴い、早急に本来の生活再建策を構築すべき」

■公明党■ 「わからない」
意見ー調査を行いたい。

■日本共産党■ 「国土交通省の約束不履行は非常に問題」
意見ー「長年、ダム計画でふりまわした上に、代替地をめぐる国土交通省の不誠実な対応は、住民軽視の表れ。もともと現行のダム計画を前提にしての代替地の確保が困難であることは明白だったのだから、国交省は住民に対して誠実かつ手厚い対応をすべき。」(一部略)

■社会民主党■「国土交通省の約束不履行は非常に問題」
意見ー「土盛りされた造成地は、一見して住みたくなる住環境には到底見えない。しかも、住み慣れた地に少しでも近いならばと居住を希望しても、国提示の分譲価格は多くの住民にとって高すぎるという現実が立ちはだかる。すでに移転ずみの長野原第一小も、校舎、施設は立派だが、学校のすぐ上まで、そこが地滑り・土砂崩れの危険地帯であることを示す砂防ダムが連なり、崩落の危険性と背中合わせだ。」(一部略)