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「八ッ場ダム建設:納得したわけではない 苦渋の判断ー移転地基準調印」(毎日新聞)

2005年9月8日 毎日新聞群馬版より転載

●八ッ場ダム建設:「納得したわけではない」 苦渋の判断--移転地基準調印 /群馬
 ◇生活再建へ住民、苦渋の判断

 長野原町の八ッ場ダム建設に伴い転居を余儀なくされる水没5地区の地元住民でつくる連合交渉委員会と国土交通省は7日、同町与喜屋で移転代替地の分譲基準について調印した。これで地元住民全体との主要な交渉は終了。07年度の本体工事着工に向け大きく前進したが、一方、調印式で住民代表が「納得したわけではない」と口々に語り、計画浮上から半世紀以上にわたった住民らの苦悩がにじみ出た。

 同ダムは治水、利水などの多目的ダムとして1952年に計画浮上。以来、住民は反対運動や条件闘争などに50年以上を費やした。03年11月には総事業費が4600億円に倍増され、6都県で市民グループが負担金支出差し止めを求める住民訴訟を提起するなど見直しを求める声は根強い。水没する340世帯のうち半数以上が既に現地再建をあきらめ転居していく中、今回の調印は住民が早期の生活再建を目指した「やむを得ない結論」(同委)だった。

 調印式の経過報告で、高山欣也・同委事務局長が一部の協議について「不満が残る結果」と言及。あいさつに立った萩原昭朗委員長は「内容的にすべて納得したわけではございません」と明言したうえで「今後も県や町などに支援頂けなければ、せっかくの調印も画竜点睛(がりょうてんせい)を欠く」と関係機関の協力を強く求めた。門松武・国交省関東地方整備局長は「生活再建に全力を投入していきたい」と述べた。

 5地区の中で最も分譲基準受け入れが難航した川原湯地区の豊田治明委員長は式後、「本当は式に来るつもりはなかった。(国交省側から)請われて仕方なく来た。みんなきれいごとを言っているが温泉地が再建なんてできない。昔に帰ってゼロから数十年とやるしかない」と話した。

 国交省は今後、住民の代替地の意向調査をまとめて用地取得を進め、今年度中にも代替地への第1次移転を始める方針。しかし、代替地の希望者が当初計画よりも下回る可能性もあり、計画通りに代替地造成、移転が進むかは不透明だ。【山田泰蔵】