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「利根川治水計画 河川改修も併用へ ダムなお18必要」(朝日新聞)

2005年11月17日 朝日新聞群馬版より転載

「利根川治水計画 河川改修も併用へー国交省方針 ダムなお18必要」

 利根川の治水計画が転換される。国土交通省はダムによる洪水調節量を引き下げ、川底掘削などの河川改修で補う方針を打ち出した。ダム依存がその分軽減され、計画を検討している同省の小委員会は「利根川の治水史上の大転換」と太鼓判を押す。しかし、八ツ場ダム建設の反対派などは「小手先の見直しに過ぎず、ダム推進の追認だ」と反発している。

◆反対派「小手先の見直し」

 同省内の社会資本整備審議会河川分科会にある河川整備基本方針検討小委員会が合意した。洪水時の伊勢崎市八斗島地点における流量で、上流のダム群などによるカット分を、従来の毎秒6千トンから5500トンへと引き下げる。

 これにより下流への水量が増えるが、国交省は、川床を掘り下げるなどして河道を拡大する方針を示した。

 新方針に対しては、委員の福岡捷二・中央大教授から「河道に大きな負担を強いる」などの懸念も出たが、国交省は流量の科学的な解析を進めるとし、最終的に全委員が了承した。

 委員長の近藤徹・水資源協会理事長は「大変なチャレンジであり、河川計画の大転換」という。下流の自治体からは「確実に安全にやってほしい」(茨城県)などの注文も出た。群馬県は「県内の負担が軽減される」と歓迎の立場だ。

 だが、県内にある6ダムに、建設中の八ツ場ダムを合わせても、洪水調節能力は毎秒1600トンに過ぎない。今回の見直しでも、2基は減るが、なお18基もの新たなダムが必要となる計算だ。ダム建設に反対する「八ツ場ダムを考える会」は、ダム推進の実態は変わらないと批判する。

 国交省は、計画の前提となる200年に1度の洪水流量である「基本高水流量」そのものを、毎秒2万2千トンのまま変更しない。
 ダムの見直しを訴えている水源開発問題全国連絡会の嶋津暉之共同代表は「いまの基本高水流量は、あまりに過剰で非現実的な数値。国交省の基本姿勢は、開発優先のままだ」と話している。