初夏を告げるアユの解禁シーズンがやってきました。坂東太郎と呼ばれた利根川は、首都圏の水利用のために自然の生態系を失ってきましたが、近年、流域住民の様々な取り組みによって、天然アユの遡上が上昇に転じています。水源県・群馬において、昔ながらのアユの復活をめざす「日本一のアユを取り戻す会」(http://ayunihonichi.gunmamap.gr.jp/index.htm)
によれば、5月末時点で利根大堰のアユ遡上推定数は96万尾に達する勢い。これは調査開始以来最高の数字で、水源の豪雪による豊かな水量、江戸川水閘門の運用改善などのおかげといわれます。荒川、多摩川においても、平成18年は例年の3~4倍の遡上が確認されています。このまま稚アユが利根川をのぼってくれば、今夏、上流での本格的なアユ復活が期待されるのですが、利根川支流の烏川では水量不足と堰の悪影響が心配されています。
2006年6月3日 上毛新聞より転載
「天然アユ、立ち往生」
三日にアユ釣りが解禁される烏川で、高崎市と榛名町の境界上にある長野堰(ぜき)の下に、遡上(そじょう)できない天然アユの稚魚が大量に滞留する状況となっている。漁業権を持つ上州漁業協同組合が二日、確認した。天然アユが大量発生する一方、長野堰の魚道が水量不足で十分機能していないのが原因とみられる。好転すれば異例の大漁も期待できるが、このままではえさ不足で稚魚が成長できない恐れがあるため、上州漁協は頭を悩ませている。
県ぐんまの魚振興室によると、今年は下流の利根川・利根大堰(おおぜき)で平年の約五倍の遡上が確認され、年間百万匹に達する見通し。しかし、ここ数日間は烏川で水量不足が目立ち、利根川から遡上してきたアユが長野堰で立ち往生している状態だ。
長野堰は魚道が旧式なことや、農業用水などの取水で水量不足に陥りがちなことから、過去にも遡上に支障が出ていた。そのため、県が魚道を改良したり簡易魚道を設置するなどし、一定の成果を上げてきた。
しかし、今年は天然アユの大量発生と水量不足が重なり、稚魚の滞留が深刻化。上州漁協の淡島敏彦放流委員は「すごい量の天然アユが来ているが、水が少なくて魚道にたどりつけない。えさ不足で育たなくなる」と危機感を募らせる。
上州漁協は四月、烏川に二㌧の養殖アユを放流したが、今年の天然アユはそれに匹敵する釣果が期待できるという。淡島委員は「養殖は六月、天然は八月がピーク。順調に遡上すればシーズンを通じ釣りが楽しめる」と改善に期待を込める。
県は二日までに、魚道の改良に着手。稚魚を捕獲して上流に放流するなど、新たな対策も検討している。
三日は碓氷川、鏑川、神流川でもアユ釣りが解禁される。