八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

八ッ場ダムに発電所

 八ッ場ダム事業に、新たに「発電」の目的が加わる可能性が出てきました。治水・利水という当初からの目的が必要性を喪失していると指摘されている八ッ場ダム事業ですが、「発電」にも盲点があります。
 八ッ場ダムを建設することにより、吾妻川で現在稼動している複数の発電所は、ダムに水をためるため、発電所への送水量が大幅に減ります。これによって失われる発電量が、新規に計画されている発電所の発電量を遥かに上回るからです。失われる発電量に対して、国は東京電力に多額の減電補償をする必要がありますが、現在の八ッ場ダムの事業費には、この費用が含まれていません。

2007年12月26日 上毛新聞より転載~
「八ッ場ダムに発電所 県企業局 1万1000世帯分確保15年度稼動へ 採算、環境踏まえ申請」

 県は二十五日、国土交通省が長野原町に建設中の八ッ場ダムを活用した発電事業を行う手続き(ダム使用権設定申請)を開始したと発表した。原油高や地球温暖化対策が課題になる中、クリーンエネルギーを使って一般家庭一万一千世帯分の電力を確保する計画。ダム完成予定の二〇一五年度をめどに発電所を建設、事業を開始したいとしている。

 発電所は同ダム直下左岸に計画。最大出力一万千七百㌔㍗で、企業局の水力発電所の中では六番目の規模。年間可能発電量は四千九十九万㌔㍗時。総事業費六〇億円。ダムからの放流水を活用し、発電後は下流に放出する。

 企業局は放流計画などを基に研究を進めた結果、採算が取れると判断、環境に優しいエネルギー確保の観点から、今回の申請を行った。

 発電所が稼動した場合、年間でドラム缶四万千本分の重油削減効果と、二万千七百㌧の温室効果ガス削減効果が見込めるとしている。

 企業局は一九五八年に桃野発電所(みなかみ町)で発電事業を開始。現在県内に三十一発電所(水力二十九、風力一、火力一)を展開、発生電力は全て東京電力に売却している。

 最大出力が一万㌔㍗を上回る大規模な県営水力発電所は奈良俣(同町、八九年稼動)以来。東京電力群馬支店によると、近年は大規模ダム建設自体が減少してきたことから、揚水式以外での大規模水力発電所は少なくなっているという。

 佐藤直嗣発電課企画調査室長は「国と協議を続けながら計画を進めてきた。売電先との価格交渉など課題や必要な手続きも多いが、八ッ場ダムの建設に合わせ実現を目指してきたい」としている。

 八ッ場ダムは総貯水量一億七百五十万㌧の重力式コンクリートダム。現計画では洪水調節のほか、本県含め一都四県に水道・工業用水を供給することを目的としている。

2007年12月26日 東京新聞群馬版より転載~
「県営水力発電所設置へ」

 県企業局は二十五日、八ッ場ダムに県営の水力発電所を設置するため、ダム使用権を設定する手続きを開始したと発表した。

 県企業局によると、総事業費は六十億円強を見込み、うち約五億円分が国庫補助の対象となる。最大で毎秒一三・六立方メートルの水量を使用し、出力は最大一万千七百キロワット、年間の最大発電電力量は四千九十九万二千キロワット時となる見通し。一般家庭一万一千軒分の年間電力を発電できる計算となる。また、二万一千七百トンの二酸化炭素削減につながるという。ダム直下の左岸に設置する。

 発電所設置について、県企業局はこれまで事業として成立するかどうかを検討してきたが、今年八月、八ッ場ダムの放流計画が決定したことを受け、売電先の東京電力と交渉し、採算がとれると判断した。

 県営の水力発電所は二十九カ所あり、年間の発電量は計八億二千六百九万キロワット時で、約九億円の利益があるという。