2007年12月13日、関東地方整備局は八ッ場ダムを含む4事業について記者発表を行い、工期延長の見通しを初めて明らかにしました。
http://www.ktr.mlit.go.jp/kyoku/kisha/h19/0856.pdf
(国土交通省のホームページ)
概要は以下のとおりです。
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八ッ場ダム 5年延長して平成27年度末まで
湯西川ダム 延長なしで平成23年度まで
霞ヶ浦導水事業 5年延長して平成27年度末まで
思川開発(南摩ダム) 5年延長して平成27年度末まで
八ッ場ダムについて(事業主体:国土交通省)
群馬県吾妻郡長野原町に建設中の八ッ場ダムは、代替地計画やダム本体施工時間帯等を見直したことにより事業工期を5年延長し、平成27年度末に変更することが必要となりました。
事業費については、「コスト縮減技術委員会」の提言を受け、ダム本体のスリム化や橋梁の施工計画の見直し等のコスト縮減を図ることとしており、現在の事業費内で完了する見込みです。
(中略)
湯西川ダム以外の事業は、今後、関係都県との協議等、計画変更に必要な手続を行う予定です。
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国土交通省の説明によると、八ッ場ダム、霞ヶ浦導水事業、思川開発(南摩ダム)の3事業については08年の年明けに、事業工期の延長について「関係都県との協議等、計画変更に必要な手続」のための申し入れが行われる見込みです。
1)事業費の増大について
八ッ場ダムの事業費の増額については、以下に述べる状況から判断して、増額せざるを得ないのではないかと考えられます。
第一に国土省はコスト縮減としているが、平成16年度の実績(17年度以降は公表されていない)によると、年間事業費199億円に対して縮減額は8千万円であり、0.4%しかなく、わずかなものである。
第二に、川原畑地区二社平の国道をはじめ、地質が悪いための難工事で、工事のやり直しているところが少なからずあり、その部分の工事費が大きく嵩んできている。
第三に東電への減電補償がある。国土交通省は、減電補償は4600億円に含まれているとしているが、東電の補償額として計上されているのは約190億円(推定)だけである。これは、代替地等の造成に伴う導水トンネル約1.7kmの補強工事とその工事中の減電補償であって、ダム完成後に永続する減電に対する補償額数百億円は含まれていない。実際に都県への回答で、国交省は次のようにのべている。「なお、今後生じることとなる減電補償は、「公共事業の施行に伴う公共補償基準要綱」に基づき、最近年で補償額を算出し、補償するものである。」 また、発電所への減電補償はダム完成の直前に行われるから、減電補償による事業費の増額はその時点まで明らかにされない。
第四に、4600億円のうち、2009年度以降の残額は1357億円である。しかし事業工期の延長で2009年度以降の工事年数は7年間となり、毎年300億円以上の事業費を使ってきた事業の実施実績から、残額ではおさまらないと判断せざるを得ない。
2)利水への影響について
事業工期が2015年度まで延長されることとは、利水面で八ッ場ダムの必要性がますます希薄になってきたという重要な意味を持つものです。
4600億円へ増額された(平成15年度)際の6都県と関東地方整備局との間の文書は2回にわたって行われています。このうち6都県による合同調査チームが出した2回目の「意見・質問・要望等」の中で次のように主張しています。
「平成22年度の完成ということが、利水者が八ッ場ダムへの参画を判断する一つの材料となっており、予定年度における完成を強く要望したい。(完成が遅れた場合、ダム完成の時点で、ダム参加が不要になっていることも想定されるため。)」
これは、都県側も水需要が減っていくことを予想したためです。