国はこれまで、水没予定地住民の犠牲、国民の税負担の根拠として、八ッ場ダムの必要性を強調してきました。政権交代による八ッ場ダムをめぐる政策転換について、「マニフェストに八ッ場ダムが入っているから中止とは、非民主的だ」との八ッ場ダム推進の意見に対して、前原大臣は「予断を持たずに八ッ場ダム事業について再検証する」ことを表明しました。
情報を公開し、国民に丁寧に政策を説明して理解を求めることー河川行政において旧政権では決してなし得なかった民主的な取り組みが八ッ場ダムをめぐってなされるのか、期待と不安が交錯する中、前原大臣の手腕が注目されます。
◆2009年10月27日 毎日新聞より転載
ー八ッ場ダム:前原国交相「再検証する」
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20091027k0000e010052000c.html
前原誠司国土交通相は27日の閣議後会見で、中止を明言した八ッ場(やんば)ダム(群馬県)について、全国で見直しを進めているダム事業の一つとして「再検証する」と明らかにした。中止ありきの姿勢を軟化、地元住民との意見交換ができる状況作りをしたい考え。前原国交相は「マニフェストに掲げた基本的な考え方は堅持する」と明言したものの「予断を持たずに再検証する」と述べた。
同日午後に前橋市で開かれる八ッ場ダム関係6都県の知事との意見交換でも同様の方針を伝える。
会見で前原国交相は八ッ場ダムを再検証とする理由を「マニフェストに掲げた方針は堅持したい。ただ、地元と話ができない。打開しないといけない」と述べた。そのうえで「予断を持って再検証するわけではないが、結果としていろんな議論が出てくる可能性はある。検証の過程で住民にご納得いただけるように説明し、ダムに頼らない治水、河川整備にご理解いただくきっかけをつくりたい」とした。再検証の結果を示す時期は明確に決めていないと話した。
最初に中止を表明した点については「政治とは、中止表明して現状があり、こちらが是正策を考えるということ。批判は真摯(しんし)に受け止めるが、間違っているとは思いません」などと述べた。
再検証の内容の一つとして、前原国交相は水系ごとに定められているピーク時の流量を指摘。八ッ場ダムが位置づけられた利根川の整備方針が200年に1度の洪水流量を想定していることに触れ、「ダムを造り続ける方便になっている」と述べた。現在進めているダム事業見直しの結果、凍結となったダムがある水系については「ピーク時の流量も含めて河川の整備計画、基本方針を抜本的に再検証する」と全国的に治水行政が転換する可能性にも触れた。見直し基準については専門家チームを発足させるという。【石原聖】
◆2009年10月27日 共同通信ニュースより転載
ー八ツ場ダム、治水再検証し代替案 国交相が6知事と会談ー
http://www.47news.jp/CN/200910/CN2009102701000060.html
前原誠司国土交通相は27日、建設中止を明言した八ツ場ダム(群馬県)をめぐり、事業費を負担している流域6都県の知事と前橋市内で会談し、治水、利水の両面でダムの必要性を再検証し、ダムに頼らない代替案を示すと表明した。6知事がそろって前原氏と会うのは初めて。
これに先立ち、前原氏は27日の閣議後の記者会見で、全国のダム整備計画の前提になっている水系ごとの洪水ピーク時の流量想定を見直す考えを示した。近く設置する専門家チームが、こうした見直しの基準を作ることも明らかにした。
会談で前原氏は八ツ場ダムについて「マニフェスト(政権公約)に書いた(建設中止の)基本方針は堅持する」と表明。その上で「徹底的に情報公開し、知事から意見を聞く。しっかり再検証して最終的な結論を得る」と述べ、理解を求めた。
これに対し上田清司埼玉県知事は「メリット、デメリットを考えないまま(中止を)決めた」と前原氏を批判し、建設推進を要望。森田健作千葉県知事は「一度、中止を棚上げしたら地元の人たちも(前原氏との話し合いに)出やすくなる」と中止撤回を提案した。
大沢正明群馬県知事は会談後の記者会見で、前原氏について「中止ありきの姿勢からは後退した」と評価した。
ダム建設をめぐっては、前原氏が9月16日の就任直後から民主党の政権公約通りに中止を明言。10月2日にはダム本体工事の入札を中止した。
これに対し事前の説明や意見聴取がなかったこともあり、ダムの事業費を負担する6都県の知事は「一方的だ」と反発。19日には、新政権が「地域主権」を掲げるのであれば地元や関係都県の考え方を尊重し、「中止方針を白紙に戻す」ことなどを求める共同声明を発表していた。
◆2009年10月27日 朝日新聞群馬版より転載
ー八ツ場ダム、必要性を再検証 前原国交相、地元に配慮ー
http://www.asahi.com/politics/update/1027/TKY200910270243.html
前原誠司国土交通相は27日の閣議後の記者会見で、中止を表明した八ツ場(やんば)ダム(群馬県)について、見直しを進める全国のダムと同様、必要性を再検証する考えを明らかにした。中止が前提では対話には応じられないとする地元住民に配慮した形で、膠着(こうちゃく)状態を打開するのが狙いとみられる。一方で、治水基準を下方修正する考えも示しており、利根川水系全体のダム計画にも影響を与える可能性がある。
前原国交相は会見で、八ツ場ダムについて、「中止の方向性は堅持する」と表明。専門家によるチームを設けて、治水計画の前提となる「200年に1度の雨量」を見直すことにも触れた。
現在は、ダム下流にあたる群馬県伊勢崎市の八斗島(やったじま)で毎秒2万2千トンの流量が治水基準とされているが、この流量だと、八ツ場ダムが完成したとしても、さらに十数基のダムがなければ対応できない。
前原国交相はこの治水基準を下方修正するとともに、八ツ場ダムが必要か否かを再検証する方針。利根川水系では、八ツ場ダム以外にも栃木県で国交省が建設中の湯西川ダムや、水資源機構の思川(おもいがわ)開発(南摩ダム)の事業があり、治水基準見直しは、利根川水系のダム計画に影響を与える。
前原国交相は中止を表明した八ツ場ダムや川辺川ダム(熊本県)以外の141カ所のダム事業について、予算編成の中で、事業の継続か中止かの再検証の作業を進めることを表明している。今後、八ツ場ダムも、この作業の中で必要性を再検証する。
前原国交相は27日午後、前橋市で開かれた関東知事会に出席。八ツ場ダムの事業費を負担してきた6都県の知事に対し、こうした考えを説明して理解を求めた。
八ツ場ダムについては、前原国交相が就任直後に中止を表明したため、地元住民は「中止ありきでは話し合いに応じられない」として意見交換を拒絶してきた。前原国交相は27日の会見で、「再検証のプロセスを通じて、地元と意見交換できる状況をつくりたい」と述べた