八ッ場ダムの関連事業について、行政側と市民団体の示す工事の進捗状況に大きな開きがあります。これは、道路工事などの進捗状況について、行政側が契約済みや発注済み区間を含めた数字を工事の進捗率としているのに対して、市民団体が政府答弁書による工事着手区間と完成済みの区間を分けて示しているためです。
市民団体がこうした数字を示しているのは、「進捗率」という言葉から受ける一般の印象が、「それだけ出来上がっている」と勘違いしてしまう場合が多いからです。八ッ場ダム建設事業全体の進捗率についていえば、行政側の説明は、「工事の進捗率」=「事業費の執行率」となっています。この二つがイコールであれば、ことさら騒ぐこともないのですが、八ッ場ダム事業の場合は、この9年間に計画が三度も変更され、事業費は沢山使ったけれど、関連事業が終わる見通しが立たないという異常な状況です。計画から57年、事業費を7割も使ったのに、まだ本来の目的であるダムを造り始めてもいなかったのか、という驚きが、国民の間に八ッ場ダム事業への不信感を膨らませています。
このほど群馬県議会では、より正確な関連事業の進捗状況が明らかにされました。以下に記事を転載します。
2009年11月18日 上毛新聞より転載
ー「八ッ場」生活再建 道路81%、鉄道86% 県議会特別委 県が進ちょく率報告ー
県は17日に初開催した県議会八ッ場ダム対策特別委員会で、同ダム建設に伴う地元の生活再建関連事業のうち、、道路や鉄道の付け替え工事などの
9月末現在の進ちょく状況を報告した。国・県道4路線は総延長の81.6%、JR吾妻線は86.9%が供用済みか発注済みで、このうち国・県道3路線は計画通り来年度中に大部分の暫定供用が見込まれるという。
県特定ダム対策課によると、4路線のうち国道145号は総延長10.84㌔のうち 0.6㌔(5.5%)が供用済み、4.48㌔(41.3%)が舗装など仕上げ以外が 完成した「概成」、4.42㌔(40.8%)が概成までの工事を発注済みで、計9.51㌔(87.7%)は完成の見通しが立っている。
JR吾妻線は総延長10.39㌔のうち7.79㌔(75.0%)が枕木設置などの 仕上げ工事を残した概成の段階、1.24㌔(11.9%)が工事を発注済みで計9.02㌔(86.9%)は完成の見通しが立っている。
これまでの計画では4路線のうち県道川原畑大戸線は2014年度の供用開始、吾妻線は来年度末までの付け替え線路の完成を予定している。
また、長野原町の水没5地区で代替地への移転を予定している134世帯のうち、23世帯が9月末までに移転を終えた。
前原誠司国土交通相は本体工事中止後も道路などの生活再建関連事業は継続すると表明しており、同省八ッ場ダム工事事務所は「本体工事以外は当初の計画通り進めている」と強調している。
事業の進ちょく率をめぐっては、同ダム建設の見直しを訴える市民団体が、供用済み区間が少ないことなどを理由に計画遅延の可能性を指摘している。