八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

公開質問書への県の回答への当会の見解と意見交換の場の提案

 八ッ場あしたの会では2009年12月16日、群馬県知事に「公開質問書への県の回答への当会の見解と意見交換の場の提案」を提出しました。
 12月4日の公開質問書は、群馬県知事宛に提出したものですが、国土交通省から出向している川瀧弘之県土整備部長名で回答が届きました。
 あしたの会では、10月19日に発表された一都五県知事声明には事実認識の誤りがあるとして会の見解を公表しており、公開質問では会の見解についての知事の考えを求めましたが、回答はありませんでした。この問題について、県土整備部の特定ダム対策課長より、一都五県知事声明は一都五県で発表した声明文であるので、群馬県知事としての見解を公表することはできなかったとの口頭での説明がありました。
 一都五県知事声明とは、知事らが責任を持って見解を述べたものではなく、国土交通省から各都県へ出向している職員らを通して作成されたものであるのなら、国土交通大臣に抗議しているのは実際には各都県の知事ではなく、国土交通省ということになります。実際、知事声明で使用されている資料はすべて、旧政権下で国土交通省河川局が使用してきたものです。八ッ場ダム中止方針を批判する知事らは、地方自治をないがしろにしていると批判していますが、実際は国土交通省が組織防衛のために知事を利用しており、知事ら自身は地方自治の精神を放棄しているというのが真相ではないでしょうか。

*群馬県に提出した公開質問書の質問内容は、こちらに掲載しています。↓
 https://yamba-net.org/wp/modules/news/index.php?page=article&storyid=761

 12月16日に群馬県知事に提出した文書を転載します。

 群馬県知事 大澤 正明 様        
                        八ッ場あしたの会
                    
 12月4日に大澤知事に「前原国土交通大臣との会談における発言に関する公開質問書」を提出しました。それに対して、11日に県土整備部長から回答をいただきました。
知事個人の発言について公開質問書を提出したにもかかわらず、なぜ県土整備部長から回答が出されるのでしょうか、知事はご自身の発言に責任を持たれないのでしょうか。
 県土整備部長から出された回答の内容は個々の質問に対してまともに答えず、発言内容の責任回避に終始しているように思われます。
今回の公開質問では、四項目の質問に加え、『「八ッ場ダム建設事業に関する1都5県知事共同声明」の事実認識の誤り』についてのご見解を伺いたいとお伝えしましたが、これについてのお返事は残念ながらありませんでした。
 八ッ場あしたの会では12月13日、八ッ場ダムを考える1都5県議会議員の会と共催で緊急集会を開催し、ダム予定地の生活再建、地域再生の課題について提言を行いました。
 上記公開質問書の回答に対する当会の見解を伝えるとともに、緊急集会の資料をお渡しし、八ッ場ダム問題についてオープンな場で意見交換できる場を設定するよう提案します。

◆ 質問1
【県の回答】 
 貴会が、平成10年の台風5号による洪水における八ッ場ダムの効果を単純な試算で13cm程度と推定し主張されている地点は、八斗島であると承知している。

【当会の見解】
 設問は発言の事実誤認を指摘し、発言の出自を問うものです。「(八斗島の数値である)13cmしか上がらないが、とんでもない」という発言をする際に示したのが、前橋の状況を写した写真パネルだったということから、発言と資料に関連性がないのは明らかです。仮に「八斗島と承知している」ならば、前橋の水害説明に「13cm」を持ち出すのは明らかに不適切な例示と発言です。
 また、私達が質したのは「八斗島であると承知しているか否か」ではなく、何故その現場(前橋)の水位として不適当な八斗島の調整能力の数値を持ち出して前原大臣に訴えたのかという部分です。
治水の本質的な議論は、極めて定量的な実証の積み重ねです。その意味では、県の回答は意図的な議論のすり替え以外の何物でもありません。

◆ 質問2
【県の回答】
 貴会が、平成10年の台風5号による洪水における八ッ場ダムの効果が少ないと主張していることについて、災害の発生状況を踏まえると、洪水時の水位を下げる八ッ場ダムは必要という趣旨の発言である。

【当会の見解】
 この設問で質したのは、八ッ場ダムの治水効果について「とんでもない話」と力説する論拠です。仮に八ッ場ダムが「必要」とされるなら、大澤知事は何を根拠にそれを訴えるのか、「13cm」を覆す具体的な数値を示されなければ、説得力がありません。趣旨を問うているのではなく、論拠を問うているのです。
 政府・国交省が「詳細を把握していない」とする中で、大澤知事が「とんでもない話」とするならば、独自の論拠を示すことが求められます。それが示されないのであれば、知事の抽象的な思い込みか暴論の域を脱しません。

◆ 質問3
【県の回答】
 平成10年の台風5号による洪水は、車の避難も容易にできないほどの急激な増水による水位上昇、そして車が70数台も流されるという洪水の破壊力など、当時の洪水の恐ろしさと自然の脅威を発言したものである。

【当会の見解】
 この回答には、危険区域に駐車場を設営していた事実に対する見解が何も述べられておりません。会議の場におられた大臣その他の出席者およびその後の報道で知った一般国民はほとんど当時の事実を知りません。この発言が埼玉県他に波紋を呼んでいる影響もあり、例示すべき事象としては極めて不適切な印象操作の手法にあたると考えます。
 車の流出の多くは、自然の脅威を前にして、「危険箇所には駐車しない」「速やかな情報伝達」という手段を以て人為によって危険を回避するという危機管理の欠如により発生したものです。台風上陸の予報は出されていたわけですから、当日未明より駐車場ゲートを閉めていれば流出は回避された事象です。人為の不作為を以て「洪水の恐ろしさ」「自然の脅威」を説明するのは、行政責任の逸脱と言われても仕方ありません。

質問4
【県の回答】 
 群馬県が見舞われた大きな災害として、昭和56年の台風15号と平成10年の台風5号を事例にして紹介したものである。昭和56年の台風15号においては県内で河川の増水による死者が発生している。

【当会の見解】
 この回答には、一職員を自殺にまで追いやった県の責任について何も示されていません。当時、県議会議員として事の経緯を知る立場にあった知事がそのことに遺憾の一言も言及しないと云うことがまず問われます。
 会議録にもある通り、確かにその前段では「現実に、昭和56年と平成10年におきまして、群馬県は利根川で非常に大きな災害がおきまして、死者も出ております。」と述べられている事実は承知しております。しかし、指摘した部分は、パネルを掲示しながら「これは、車が70何台も流されて、死者が出るような事件」と一連に語られた平成10年台風についての発言であり、県の「八ッ場ダム関連情報」でも明らかなように、不幸中の幸いに被災による死者は出ておりません。
 従って、回答は全く当を得ていない不適当かつ不誠実なものです。

◆2009年12月17日 東京新聞群馬版より転載
ー『意見交換を』知事に要望書 八ッ場ダム 中止求める「あしたの会」ー
http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/20091217/CK2009121702000108.html

 八ッ場(やんば)ダム(長野原町)の建設中止を求める市民団体「八ッ場あしたの会」は十六日、同ダム問題の解決に向けて、県に意見交換の場を設定するよう求める要望書を大沢正明知事あてに提出した。

 要望書では「ダム予定地の生活再建・地域再生について冷静に意見交換を行い、事実に基づいて問題解決を図る必要がある」と指摘し、あしたの会と県の担当者が率直に話し合うことを必要としている。今年中の返答を求めている。

 あしたの会の渡辺洋子事務局長は、八ッ場ダムを含むダム事業の中止を決めた場合の住民補償法案について、前原誠司国土交通相が来年の通常国会への提出を見送る方針を示したことに触れ、「問題解決の先送りにつながる懸念もある。なるべく前向きに対応してほしい」と主張。川辺川ダム(熊本県)を中止のモデルケースにする考えにも「八ッ場の生活再建は、川辺川よりも複雑な要素を多く抱えている」と疑問を呈した。 (中根政人)

◆2009年12月17日 朝日新聞群馬版より転載
ー知事と意見交換 見直し派が要求ー
http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000580912170002

 八ツ場ダム(長野原町)の建設中止問題をめぐり、大沢正明知事あてに公開質問書を出した同ダム見直し派の市民団体「八ツ場あしたの会」は16日、知事に意見交換会を催すよう文書で申し入れた。

 あしたの会は、10月に前橋市内であった関東知事会議での大沢知事の発言内容に事実誤認があったとして、今月上旬に4項目の公開質問書を提出。

 県土整備部長名で回答があったが、「部長名で届いたうえ、回答の多くが質問に正面から答えていない」として、知事本人を交えた意見交換を求めている。