八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

五木村民への伝言

2010年12月22日

 ふたたび川辺川ダム予定地、五木村からのニュースです。
 2010年12月17日、五木村議会では最長老議員より「川辺川ダム計画に対する次世代を担う五木村民への伝言について」が提案され、同日可決されました。
 提案したのは、議員を八期務めてきた照山哲栄議員です。照山氏は五木村で建設会社を経営し、川辺川ダム対策同盟会会長、村議会議長などを歴任し、ダムによる地域振興を目指してダム計画と共に歩んできた方です。
 この伝言は五木村の次世代の人々への伝言であるだけでなく、ダム予定地からダム行政がどのように見えるかを告発したものとして、八ッ場ダム問題に関心のある方々にもお読みいただければと思います。

 先月、あしたの会のシンポジウムで五木村の報告をして下さった寺嶋悠さんのブログより、照山氏の伝言全文と関連記事を転載させていただきます。

★「五木村の里より」(寺嶋悠さんのブログ)
http://fromitsuki.exblog.jp/i16/

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 川辺川ダム計画に対する次世代を担う五木村民への伝言について

 昭和41年7月に突然発表された川辺川ダム建陸許画に、五木村は反対し、村民一丸となり、当時の建設省及び熊本県に強く抗議してきた。
 しかし、国、県は強い姿勢でダム建設同意を求めてきた。最終的には、五木村再建計画を条件に、また、下流域の生命及び財産を守るため、ダム建設を受けざるを得なかった。しかし、この44年間の経緯は、図り知れない損失を負い語り尽くせないものがある。

 平成20年8月、相良村長が「ダムは容認しがたい」、更に同年9月、人吉市長も「ダム計画の白紙撤回を求める」と表明、重ねて、同年同月、蒲島熊本県知事も県議会において「現行の川辺川ダム計画を白紙撤回し、球磨川は宝としてダムによらない治水対策を追求するべきである」と表明された。

 一方、ダム建設を強力に進めてきた国も平成21年9月、民主党政権が誕生し、就任当初の前原国土交通大臣がダム中止を表明した。
 因みに、四者とも玉木村に対し一言の事前説明もなく、ダムの原点と全く同じ唐突の表明である。

 現在、五木村は川辺川ダム中止を受け入れてはいないが、ダム中止の場合も含めて多角的に協議するため、国・県・村による「五木村の今後の生活再建を協議する場」に参加している。

 昨今では、突発的で局地的な豪雨が頻繁に発生し、尊い生命財産を奪っている状況である。このような、豪雨災害が当地方で発生した場合、川辺川ダム建設が本格実施に向けて再燃することが懸念される。

 ここに、44年間もダム建設に翻弄され、人口減少及び産業の表退、人間関係の希薄化及び住民感情の対立を目の当たりにした現世代が将来を担う次世代に伝えるべきである。
 よって、川辺川ダム建設は中止の方向に進んでいる現在、拒むことが出来ない状況の中で、現世代を生きてきた責務として、以下のとおり伝言する。

                記

 川辺川ダム建設計画による五木村の衰退を実際に体験した者として、将来に再び川辺川ダム建設が動き出すような事態を迎えた場合は、二度と過去の歴史を繰り返さないよう、くれぐれもダム計画による五木村の繁栄に期待をしないよう願う。

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■ダムによる繁栄期待しない 「次世代への伝言」五木村議会に提案へ
熊本日日新聞 2010年12月16日
http://kumanichi.com/feature/kawabegawa/kiji/20101216001.shtml

 ダム計画に村の繁栄を期待してはならないとする「次世代を担う村民への伝言」が、川辺川ダム計画に翻弄[ほんろう]されてきた五木村の村議会に議案として提案されることが15日、分かった。開会中の12月定例会に議員提案され、可決される見通し。

 提案するのは照山哲栄議員。議案によると、「人口減少や産業の衰退、住民感情の対立を目の当たりにしてきた現世代は、将来を担う次世代に伝える責務がある」と指摘。川辺川ダム計画が中止に向かう中、「ダム建設が再び動きだすような事態を迎えた場合は、過去の歴史を繰り返さないため、ダムによる村の繁栄に期待をしないよう願う」としている。

 反対運動の末、国、県の支援による村の振興を条件に、ダム計画を受け入れた村。しかし、離村が相次ぎ、人口は激減。高齢化率は40%を超えている。2009年には前原誠司前国土交通相がダム中止を表明し、村の基盤整備や生活再建は不透明さを増している。

 照山議員は、同日の村議会全員協議会で提出議案を説明。「ダムの痛みが分かる世代も高齢化した。村の衰退を体験した者として、ダムの話にうかつに乗るなと言い伝えておく必要がある」と話している。(本田清悟)

■「ダムによる繁栄期待しないで」 辞職予定議員の「伝言」可決 熊本県五木村

西日本新聞2010/12/18付 朝刊
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/216262

 五木村の最年長村議で今月末辞職予定の照山哲栄(てつえい)村議(78)が17日、「(川辺川)ダム計画による五木村の繁栄に期待をしないよう願う」と将来世代に向けた「伝言」を記した文書を最終本会議に議員提案、可決された。議会は、44年間にわたり、ダム計画にほんろうされた村の歴史を踏まえた長老議員個人の提言として、取り扱うという。

 議案は「次世代を担う村民への伝言について」。現在、村のダム対策特別委員長でもある照山氏は、「伝言」でダム計画について「新しい首長や新政権の判断で、いとも簡単に覆る。今後も180度の変更があり得る」と指摘、将来世代に主体的な村づくりに取り組むよう求めている。照山氏は辞職後は一民間人として、自ら提案した議員報酬の能力給制度の評価委員を務める予定。