2012年1月11日
わが国には、ダム中止を前提とした法整備がなく、長年のダム計画で疲弊したダム予定地がダム中止を恐れる背景となっています。
前田国土交通大臣は昨年末、八ッ場ダム建設の再開を表明し、それと同時に、ダム中止後の支援法案を川辺川ダム予定地をモデルとして次の国会に提出することを目指すとしています。
これは八ッ場ダム予定地の住民にとっては実に残酷な決定ですが、マスコミではダム推進を歓迎する地元有力者や群馬県知事らの声が地元民の声として取り上げられています。
NHKは、民主党の「八ッ場ダム等の地元住民の生活再建を考える議員連盟」(川内博史会長)が昨年9月に公表した「ダム中止後の生活再建支援法案」を取り上げました。これは八ッ場ダム予定地を念頭に、ダムに依存しない地域住民の真の生活再建を可能とするために、同議連が衆議院の法制局との協働作業で作成したものです。
民主党議連による生活再建支援法案の内容はこちらに掲載しています。↓
http://p.tl/Jv8x
◆2012年1月10日 NHK -ダム建設中止地域へ支援法を
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120110/t10015149711000.html
民主党の有志の議員らは、ダムの建設計画の見直しを進めるため、ダム建設が中止になった地域を支援する新たな法案が必要だとして、政府に対し、通常国会に法案を提出し、早期成立を目指すよう求めていくことにしています。
ダムの建設を巡って、政府・与党は、先月、群馬県の八ッ場ダムの建設継続を決め、新年度=平成24年度予算案に必要な経費を計上しましたが、建設計画の見直しを求める民主党内の反対意見に配慮し、ダム建設が、今後、中止になった地域を支援する法案を作成し、通常国会への提出を目指すことを確認しています。
こうしたなか、民主党の川内博史衆議院議員ら有志の議員は、独自にこの支援法案の要綱をまとめました。
それによりますと、国がダム建設が中止になった地域を指定し、地域振興の基本方針を定めるとともに、産業の振興や公共施設の整備を支援するなどとしています。
また、地元にとどまった住民に対し、都道府県が生活再建の支援金や住宅の新改築などの助成金を支給することができるとしています。
有志の議員らは、ダムの建設を中止しても地元が不安にならないよう、法整備することで、ダムの建設計画の見直しにつなげていきたいとしており、政府に対し、この案を基に法案を作成して提出し、通常国会での早期成立を目指すよう求めていくことにしています。
~~~転載終わり~~~
上記のNHKの報道には、不可思議なことがありました。
テレビは映像とアナウンサーの解説が同時に流れるため、視聴者は記事(解説)に沿った映像が流れているという前提でテレビを見ます。
上記の報道では、民主党議員らが藤村官房長官に書類を手渡している映像が流れました。記事に沿った映像であるのなら、その書類は「生活再建支援法案」でなければならないはずです。
しかし、このニュースで流れた映像は、民主党議員らが八ッ場ダム建設中止の要望書を提出した昨年12月20日に録画されたものでした。
昨年12月21日の東京新聞群馬版に、この時の写真と記事が載っています。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/20111221/CK2011122102000096.html
民主党議員有志らは、ダム中止後の生活再建支援法整備と八ッ場ダムの中止を求めてきました。ところが、前田国交大臣は八ッ場ダム建設再開と引き換えに生活再建支援法整備に取り組むことを明らかにしました。NHKは国交省が八ッ場ダムに反対してきた民主党議員らに配慮してこうした政策に取り組むことになったと報じていますが、二つの政策をセットで求めていた民主党議員らに対して、一つの政策(八ッ場ダム中止)を撤回する代わりにもう一つの政策(生活再建支援法整備)に取り組むというのは、強引な手法をカモフラージュするための欺瞞でしかありません。
むろん、八ッ場ダムに反対する民主党議員らは、こうした国交省の対応に激しく反発し、その後、離党者が出る騒動に発展しています。