八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

太田新国交相による八ッ場ダムに関する発言

2012年12月29日

 公明党の太田昭宏議員がこのほど国交大臣に就任しました。
 新聞紙上では、さっそく新大臣の八ッ場ダムに関する発言を取り上げています。太田大臣は昨年、民主党の前田武志大臣が八ッ場ダム事業の継続を決定したことを尊重すると発言しているようです。前田大臣による決定は、民主党政権における八ッ場ダム検証の結果を受けたものですが、この検証は科学的合理性がなく、説得力がまったくないと批判を浴びてきました。民主党政権ではこうした批判を受けて、八ッ場ダム計画の上位計画である利根川水系の河川整備計画に八ッ場ダムを位置づけるかどうかを決めたうえで、改めて判断するとして、本体工事の再開を留保してきました。
 太田大臣はこうした経緯やこれまで指摘されてきた八ッ場ダムの危険性などの問題に、どのように対処するのでしょうか。

 当会では今回の総選挙にあたり、八ッ場ダム問題に関する公開アンケートを実施しましたが、公明党は「選挙時期に入り、対応できない」という理由で無回答でした。
 2010年の参院選における公明党の回答はこちらのページに掲載しています。
 https://yamba-net.org/wp/modules/news/index.php?page=article&storyid=943

 このアンケートでは、公明党は八ッ場ダム計画には問題があると回答しています。また、自由記述欄に、「(八ッ場ダムの本体工事について)前提を設けずに、科学的検証や経済的証を行い、地元住民の合意をしっかりと確立した上で、判断すべきと考えます。」と書いています。

 また、だいぶ時代を遡りますが、1982年、当時野党だった公明党の矢野絢也書記長は、2月2日に開かれた予算委員会において、大型ダム事業の談合資料を明らかにしました。この資料について、予算委員会の議事録によれば矢野氏は、「昭和四十七年ごろに土工協の裏組織である当時の合理化委員会のリーダー、実力者たちによって作成された談合の資料」と説明しており、四十七年ごろから十年間のダム工事について談合し、業者の割り振りを決定をしていた資料であったということです。

 昭和57年2月2日 衆議院予算委員会議事録
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/096/0380/09602020380003a.html

 この談合表は当時、新聞でも公表されましたが、それによると八ッ場ダムの本体工事は大手ゼネコンの大成建設と前田建設が請け負うことになっていました。談合表が作成された1970年代初頭、八ッ場ダム予定地ではまだ地元民による反対運動が盛んでしたが、建設省は自民党の福田元首相らと共に強引に事業を推進しようとしていました。
 現在、八ッ場ダムの予定地では四本目の巨大な湖面橋の建設が行われていますが、この橋脚はこれらの大手ゼネコンが地元業者とジョイントで受注しています。また、ダム本体工事の前段階である仮排水トンネルは、2009年に大成建設によって完成しました。↓
http://www.taisei.co.jp/works/jp/data/0911/1257756358653.html

 公明党については、憲法問題をはじめとして、自民党と見解が異なるテーマについての対応が注目されています。八ッ場ダム事業について、かつては野党として不正を追及したことのある公明党ですが、どのように政策を進めるのでしょうか。八ッ場ダム推進を一貫して主張してきた群馬県知事、長野原町長らは、早くも地元視察を強く求めています。

 関連記事を転載します。

◆2012年12月29日 上毛新聞

 -八ッ場ダム「早く完成させる」 太田国交相 建設予定地ー

 太田昭宏国土交通相は28日、上毛新聞社などのインタビューで、八ッ場ダム(長野原町)建設について、「一日も早く完成させる」と強い意欲を示した。本体工事の着工時期は明言しなかったが、早いうちに建設予定地を視察する考えを明らかにした。
 太田氏は「大事なのは群馬や流域の人たちに『大臣が替わることによってまた考え方が変わるのだろうか』と思われないことだ」と指摘した。ダム問題に翻弄されてきた地元に向けて、「(事業継続と早期完成という)私の意思をぜひとも伝えていただきたい」と力を込めた。
 一方、大沢正明知事は同日の定例会見で、民主党政権時にダム本体着工の条件とした利根川水系の河川整備計画策定の状況にかかわらず、早期に本体工事を始めるよう自民党の石破茂幹事長ら党幹部に要望したことを明らかにした。

 
◆2012年12月29日 産経新聞
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/121228/plc12122822200021-n1.htm

 -太田昭宏国土交通相「命守る公共事業を進める」ー

--公共事業の増額が平成24年度補正予算と、25年度予算編成の焦点になる

 「公共事業費は、民主党政権が急に削減したことで、建設業などが大きな影響を受けた。もちろん無駄な公共事業をするつもりはない。

 脆弱(ぜいじゃく)な国土の中で、命を守る公共事業をやるべきで、国民が納得する内容を積み上げていくことが大事だ。その結果として、予算規模も決まってくる」

--防災、減災など課題が山積する中で優先順位は

 「災害が集中することが多い中で、危機に対応することが第一で、次いで高速道路などの経年劣化対応をする。その結果として経済活性化が進むという流れではないか。予算額や規模が先行し、防災、減災に資することがおろそかにならないようにしたい」

--八ツ場(やんば)ダムは今年度中に工事を再開するのか

 「前田(武志元)大臣が1年前に工事の継続をおっしゃっており、それを受けて早期完成を目指したい。住民に安心していただくためにも、急ぎ視察したい。

群馬県だけでなく、利根川の治水、利水という観点からも、工事を進める意思を国民に明確にすることが行政を預かるものとして大切と考える」

◆2012年12月29日 日本経済新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS2804E_Y2A221C1000000/

 -老朽化し危険なインフラの補修急ぐ 太田国交相会見ー

 太田昭宏国土交通相は28日、日本経済新聞などとのインタビューで、老朽化して危険な公共インフラの補修を急ぐ考えを示した。通常の堤防より決壊しにくいスーパー堤防は「大きな役割を果たす」と評価し、整備する必要性を指摘した。

――スーパー堤防についてどう考える。

 「集中豪雨など雨の降り方が変わってきているので、しっかりした堤防を作っていかねばならない。

 河川管理の1つの手段としてスーパー堤防は大きな役割を果たす。お金がかかるという誤解もあるが、土地を買収しなくてもよいという利点がある。どの箇所にどう作るかを洗い直して冷静に対処しなければならない」

――インフラの新設と老朽化対策をどう両立させるか。

 「老朽化対策でも優先順位がある。例えば笹子トンネルの事故の対応はすぐやらなければならない。新規建設もここを優先するというものがある。特に安全に関わるところは急がなくてはいけない」

――群馬県の八ツ場ダムの着工をどう進める。

 「今言えるのは、1年前に継続を決めたことを尊重すること。一日も早い完成を目指す」

――補正予算での公共事業の規模は。

 「防災・減災に資するもの、経済活性化につながるもの、早くやった方がいいものを吟味して作業する」