メコン川のダム問題についての記事が発信されています。
メコン川流域の開発問題に取り組むメコン・ウオッチは、この記事に関連して、「ダム開発の主流は国際金融機関から中国に移って久しいですが、それ以外の開発事業も中国のプレゼンスは上がる一方です。日本はそれと競争するのではなく、環境や人権の問題解決により強く取り組んで欲しいものです。」とツイートしています。
◆2018年2月11日 AFP=時事ニュース
http://news.livedoor.com/article/detail/14286966/
ーメコン川上流を支配する中国、下流域諸国の生命線を握るー
カンボジアの漁師、スレス・ヒエト(Sles Hiet)さん(32)はメコン川(Mekong River)の恵みで生活している。大勢の人の暮らしを支えているメコン川だが、中国が東南アジア諸国への物理的・外交的支配力強化のために利用するダムの脅威にさらされている。
ヒエトさんはイスラム教を信仰するチャム族(Cham)の一員で、カンダル(Kandal)州を流れる川に浮かぶぼろぼろのボートハウスに住んでいる。ヒエトさんの1日の漁獲量は年々減少しているという。
水揚げ量の減少によって大勢が貧困の泥沼に陥っている。ヒエトさんはAFPに対し「なぜ魚が減っているのか分からない」と語った。
こうした嘆きがチベット高原からミャンマー、ラオス、タイ、カンボジア、ベトナムを通過し南シナ海(South China Sea)に流れ込むメコン川流域の村々から聞こえてくる。
全長約4800キロのメコン川は世界最大の淡水漁場で、アマゾン川(Amazon River)に次ぐ生物多様性を誇り、流域に暮らす約6000万人の胃袋を支えている。
しかし、源流の管理は上流の中国に委ねられている。
■中国に抵抗できない下流域諸国
米環境団体インターナショナルリバーズ(International Rivers)によると、中国政府はすでにメコン川上流に6基のダムを設置し、南部に建設が予定されている11基のダムの半数以上に出資している。
複数の環境団体はダムによる川のせき止めによって、大勢の人が洪水の被害を受け避難を余儀なくされるのはもちろん、魚類や重要な栄養素、堆積物の移動が妨げられることで魚の生息環境に深刻な脅威をもたらすと警鐘を鳴らしている。
メコン川下流域の国々では近年魚類資源の激減が報告されており、その原因はこうしたダムにあるとする批判もある。専門家らはメコン川の生態系の基本データが欠如していることやその複雑さから、確定的な結論を出すのは時期尚早だと指摘している。
しかし下流域の貧しい国々の経済の生命線を中国が握っているという点で専門家の意見は一致している。タイ・チュラロンコン大学(Chulalongkorn University)の外交政策の専門家ティティナン・ポンスディラック(Thitinan Pongsudhirak)氏は、メコン川下流域の国々は「地政学的に中国に抵抗できない」と指摘し、こうした状況が中国政府に「下流域の魚類の生息環境や大勢の人々の生活手段をむしばみ続けることを許すことにつながっている」と説明した。
現地で瀾滄江(Lancang River)と呼ばれる源流を支配する中国政府はメコン川の一部をせき止めることができるほか水位の調整も可能で、下流がその影響を受ける。
2016年に中国側のダムの水門を開き、ベトナムの深刻な干ばつの緩和に一役買ったことで示されたように、交渉における強力な切り札となっている。
【翻訳編集】AFPBB News