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愛媛県・肱川流域、「野村ダム放流を検証する住民の会」発足

 西日本豪雨の際。愛媛県の肱川の流域では、野村ダムと鹿野川ダムの緊急放流で大きな犠牲が出ました。
 8/23の愛媛新聞が被災者による団体が結成される動きを伝えていましたが、このほど正式に住民の会が発足したことを各紙が伝えています。
 ダムを管理する国交省四国地方整備局は、現地視察をした安倍首相の発言を受けて、肱川上流ダムの緊急放流の問題について検証するとして、7月19日に「野村ダム・鹿野川ダムの操作に関わる情報提供等に関する検証等の場」を設置したのですが、第一回の会合が開かれただけで、二回目以降の予定が不明のままです。(⇒「愛媛県・肱川ダムの緊急放流に関する国交省検討会資料」
 関東地方整備局は8月9日に地元自治体(西予市)と共同で野村ダム直下の住民を対象とした説明会を開きましたが、ここでも水害に対して責任はないという説明に終始し、住民の怒りが高まっていました。(⇒「愛媛県・野村ダムの説明会、ダム直下の地区で」

◆2018年8月27日 毎日新聞
http://mainichi.jp/articles/20180828/k00/00m/040/096000c
ー西日本豪雨 ダム放流を検証しようと住民側が初会合ー

 西日本豪雨の際、愛媛県の肱川(ひじかわ)が野村ダム(同県西予市)の大規模放流後に氾濫し、下流域で犠牲者が出た問題で、住民らが27日夜、同市野村町地区で、ダムの放流を検証する初会合を開いた。住民側の視点で、ダム放流の経過や犠牲者が出た背景を検証するのが狙いで、会合を重ね、訴訟も視野に活動を続ける。

 住民約80人が参加。呼びかけ人の同町地区の会社役員、和気数男さん(71)が「9日の住民説明会では、(ダム管理者の国側の説明に)納得できない人が多いのではないか」とし、独自の検証の必要性を強調した。その後、ダムの放流について調査・研究を続ける奥島直道弁護士が「大量で急激な放流を避けることは本当にできなかったのか」と題して講演。大規模放流を「操作規則通り」と主張する国側の説明に疑問を呈した。

 野村ダムでは満水が近づいた7月7日朝、流入量とほぼ同量を放流する「異常洪水時防災操作」を実施。肱川が氾濫し、住民5人が死亡した。国側も、情報提供などに関する検証委員会を7月19日に設置している。【中川祐一、遠藤龍】

◆2018年8月27日 日本経済新聞(共同通信配信)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO34656340X20C18A8AC8Z00/
ーダム「被害者の会」発足 愛媛・西予、放流問題ー

 西日本豪雨で氾濫した愛媛県の肱川上流にある野村ダム(西予市)と鹿野川ダム(大洲市)が安全とされる基準の6倍の量を放流した問題で、西予市野村町地区の住民が27日、被害者の会として「野村ダム放流を検証する住民の会」を発足させ、同市内で初会合を開いた。

 今後、ダムを管理する国土交通省四国地方整備局などに損害賠償を求める訴訟を起こすことも視野に入れ活動する。

 会合には約100人の住民らが参加。代表の自営業、和気数男さん(71)は冒頭「ダム操作は本当に適切だったのか、住民目線での検証こそがいろいろな問題の始まりだ」と呼び掛けた。

 講演した奥島直道弁護士は「ダムの事務所が周知をちゃんとやっていなかった。やっていれば、亡くなる人はいなかったかもしれない」と説明。「周知に関しては(国交省の)過失があると言えそう」と述べた。

 野村ダムは7月7日朝、基準の6倍の最大毎秒約1800トンを放流。同地区で家に水が流れ込むなどして5人が亡くなった。死亡した入江善彦さん(59)の息子俊輔さん(30)も参加。「弁護士の説明を聞いて、ダム(の管理者)側が本当のことを言っていないと感じた。説明を求めていく方向性は妥当と感じる」と話した。

 ダムの放流を巡っては、住民から経緯や注意喚起の方法に疑問の声が上がり、国交省は住民や自治体への情報提供の在り方などを検討する検証委員会を設置した。〔共同〕

◆2018年8月28日 愛媛新聞
https://www.ehime-np.co.jp/article/news201808280045
ー住民会合で弁護士が指摘 野村ダム放流5人犠牲「周知不十分 訴訟可能」ー

  西日本豪雨で7月7日、野村ダム(西予市)の異常洪水時防災操作の後に肱川(宇和川)が氾濫し5人が死亡したことを受け、被災した住民らでつくる「野村ダム放流を検証する住民の会」は27日、同市野村町野村の野村公民館で会合を開いた。大洲市の奥島直道弁護士(愛媛弁護士会)が講演で「ダム管理所は住民への危険の周知が不十分だった。法的には訴訟が可能だ」と訴え、住民約90人が聴き入った。

 会合の冒頭、住民らは西日本豪雨の犠牲者に黙とう。登壇した奥島弁護士は、貯水を停止して流入量とほぼ同量を放流する異常洪水時防災操作を行った国土交通省野村ダム管理所に対し「関係機関に通知するだけでなく、住民への周知を義務付けられている。『ここまで浸水する』と言わなければ周知とはいえない」と批判した。

 住民からの「国交省などに損害賠償を求めることはできるか」という質問には、「犠牲となった人命については、危険の周知が十分でないので過失と言えそうだ」と回答した。

 国交省の10分ごとのダム操作データを示して「流入量より放流量の方が少ないのに、ダムの貯水量が減っている時間帯がある」などと疑問を呈したほか、異常洪水時防災操作の前にダム管理所はもっと水位を下げて、貯水容量を空けておくべきだったとした。

 同会は疑問点を整理した上で、国交省に説明会の開催を再度求め、追及していく方針を決めた。

 同市の無職の男性(65)は「ダム放流に関する疑問点がいくつか分かった。(8月9日の)国交省などの説明会では専門用語が多く分かりづらかったので、ダムに関して学習、検証をしていきたい」と話した。

◆2018年8月28日 FNN PRIME (テレビ愛媛)
https://www.fnn.jp/posts/820EBC
ー西日本豪雨の際の野村ダム緊急放流を住民自ら検証「住民の会」開かれるー

西日本豪雨での野村ダムの緊急放流について住民が主体となって検証する「住民の会」が昨夜、西予市野村町で開かれた。

昨夜の「野村ダム放流を検証する住民の会」には約80人が参加。冒頭、ダム放流による肱川の氾濫で犠牲になった5人に黙とうが捧げられた。そしてダム問題に詳しい大洲市の奥島直道弁護士が緊急放流の問題点について講演し、住民から質問を受けた。「管理の結果こういうことが起きた。そうなると弁償するのが当然だと思うんですけど法律的にはどうなんでしょうか」との質問に奥島弁護士は「緊急放流についての一般への周知の点は『過失』だと言えそうな気がします」と回答。ダムの操作規則では緊急放流の際には住民に危険を知らせる措置を取るよう定められていて、奥島弁護士は今回のダム側の対応には『過失』を問えるのではと指摘した。野村ダム放流を検証する住民の会では「まず責任の所在を明確にしてやっぱり追及することかと。犠牲者もでていますので。講演でより具体的になった問題点を後はきちんと精査をしてはっきりと問題点を浮かびださせて次につなげたい」とコメント。住民の会は今後も話し合いを重ね、国などに当時のダム操作の状況などについて改めて説明を求める方針。