八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

国交省近畿地方整備局、大戸川ダム推進のため、淀川水系河川整備計画変更めざす動き

 淀川水系では、嘉田由紀子滋賀県知事のリードにより、ダムに頼らない治水を目指す動きが先行していましたが、2014年の嘉田氏退任の後、凍結された大戸川ダム推進の動きが出てきました。昨日の京都新聞によれば、国交省近畿地方整備局はいよいよ大戸川ダム再開に向けて、ダム計画の上位計画である淀川水系河川整備計画の変更を行うための手順を踏み始めたようです。

 八ッ場ダム計画の上位計画は、利根川水系河川整備計画です。民主党政権は選挙公約に掲げていた八ッ場ダム中止を撤回した2012年12月、八ッ場ダムに反対する同党議員らの意見を入れて、当時未策定であった利根川水系河川整備計画に八ッ場ダム計画を位置づけることをダム建設再開の条件としました。民主党議員らの要望により、利根川水系河川整備計画を策定するための有識者会議のメンバーには、八ッ場ダムに反対する複数の学者が選ばれましたが、座長をはじめ多数を占める有識者は八ッ場ダム推進をめざす国交省関東地方整備局が作成した事務局案をそのまま受け入れました。同局は2013年に八ッ場ダムは利根川水系河川整備計画に正式に位置づけ、2014年に八ッ場ダム本体工事の入札を行いました。
 河川整備計画の策定・変更に当たっては、国土交通省は流域自治体の意見を聴く必要がありますが、知事が国交省の方針に逆らわなければ、流域住民の反対がどれほど大きくとも、ダム事業を推進することが可能です。このままでは、河川行政が流域住民の手の届かないところで進められるばかりです。

◆2019年1月15日 京都新聞
https://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20190115000019
ー淀川水系の治水検証へ 近畿地方整備局、大戸川ダム計画変更もー

 国土交通省近畿地方整備局が、桂川の嵐山地区(京都市右京区、西京区)での治水対策の方針決定や近年相次ぐ豪雨被害などを受け、淀川水系全体で進めている河川整備の効果を調べるため有識者会議を設け、検証を始めることが14日、分かった。検証結果によっては、大戸川ダム(大津市)の建設を「凍結」としている淀川水系河川整備計画の変更につながる可能性がある。

 2009年策定の同計画は、大戸川ダムに関して京都、滋賀など4府県の当時の知事が凍結を求めたのを受けて「検証しながら実施時期を検討する」としており、ダム本体は未着工となっている。国は16年に事業継続を決めているが、着工するには同計画を変更する必要があり、淀川水系中・上流部での河川改修による影響の検証がその前提となっている。

 同整備局が淀川水系で優先的に進めてきた主な治水対策では、宇治川の天ケ瀬ダム(宇治市)で放流能力を増強する再開発事業が21年度に完了するほか、木津川上流の川上ダム(三重県伊賀市)の建設も22年度に完成する見通しとなった。桂川の嵐山地区で改修と景観の調和を図る治水対策が昨年12月にまとまったため「検証に入る段階」(同整備局)になったという。

 有識者会議は近く初会合を開く。淀川水系で進めている各事業の進ちょくを確認するとともに、降雨時の効果などを検証する。京滋でも大きな浸水被害が出た13年の台風18号や昨年の西日本豪雨など計画策定後の気象の変化も踏まえる。

 有識者会議による検証後、同整備局が淀川水系河川整備計画の変更について必要性を判断する。変更する場合は、流域府県の知事意見を改めて聞く手続きが必要となる。