静岡県では、駿河湾の桜エビ不漁が大きな問題となっています。
これまで、山梨県を源流とする富士川水系・早川上流の雨畑ダムによる川水の濁りが原因ではないかという話が地元紙で取り上げられていましたが、新たにリニア新幹線の影響も考えられるということです。南アルプスの山懐にある山梨県の早川町では、リニア新幹線の大規模なトンネル工事が続いています。4月1日の静岡新聞の記事の末尾には、「早川水系の主な状況略図」が掲載されており、参考になります。
◆2019年3月27日 静岡新聞
http://www.at-s.com/sp/news/article/politics/shizuoka/615697.html
ー知事「リニア工事影響も視野」 富士川水系濁り、県が本格調査へー
由比港漁協(静岡市清水区)がサクラエビの不漁などとの関係を指摘する富士川水系の濁りの原因について、川勝平太知事は26日の定例記者会見で、富士川支流の早川(山梨県早川町)上流部でJR東海が行っているリニア中央新幹線工事の影響も視野に入れていることを明らかにした。山梨県と連携し、現地で本格調査に着手する方針も明らかにした。
川勝知事は既に難波喬司副知事が、早川流域を視察したことを明らかにした。その上で「早川から富士川に入る水が濁っている。早川の上流ではリニアの工事をしていて、濁りをなくすため凝集剤を使っている。こうしたことが生態系にどのような影響を与えるか(調査したい)」と述べた。山梨県の長崎幸太郎知事に意向を伝え、了承を得たという。
サクラエビ漁師たちは、富士川流域で取水し、導水管を経て水力発電に利用されるなどした後、静岡市清水区蒲原の工場放水路から駿河湾に流れ出る濁り水が「サクラエビやシラス、タチウオの不漁に影響している可能性がある」として、周辺の泥や早川上流域の雨畑ダムの水の成分調査を独自で行った。
川勝知事は「サクラエビとの関連でわれわれは神経質になっていたが、(他県の川のため)調査ができなかった。濁りは工事がないと出ない。徹底的に調べたい」と述べた。
由比港漁協の宮原淳一組合長は取材に対し「われわれだけの力では原因を究明しようにも限界があった。行政が県境を越えて調査に乗り出してくれるのは誠にありがたい」と述べた。
◆2019年4月1日 静岡新聞
http://www.at-s.com/news/article/politics/shizuoka/617593.html
ーダンプの列、残土の山 土ぼこり舞う川沿い 山梨・早川本流ルポー
駿河湾サクラエビの不漁などとの関係が指摘される富士川水系の濁り。濁りの出どころとされた雨畑ダム(山梨県早川町)に加え、上流の早川本流(同町)でも強い濁りの存在が明らかになった。現場で何が起きているのか。3月中旬、早川をさかのぼり現状を取材した。
富士川との合流地点から早川上流部に通じる県道37号。最初に気付くのは土ぼこりをあげながらすれ違うダンプカーの多さだ。川沿いでは工事現場や採石プラントなどが少なくとも10カ所以上。昨年末に最初の取材をしたが、変わらない光景だ。
合流地点から約1キロ上流には、河川敷に積まれた高さ十数メートルの“ピラミッド群”。中部横断自動車道のトンネル工事で出た残土の山が見える。
雨畑ダムに続く雨畑川と早川の合流地点まではさらに約8キロ。民間の水力発電所や、採石業者のプラントが複数ある。操業する平日の川の水はすでに濁り気味。周辺は地下の導水管が張り巡らされていて、水の流れは非常に複雑になっている。
早川中流部には、リニア中央新幹線のトンネル残土置き場が河川敷に数カ所。リニアの本坑から地上に伸びる「早川非常口」などの工事現場では大手ゼネコンのキャッチコピー「地図に残る仕事」が書かれた看板も。周辺を走るのは「中央新幹線」と書かれたオレンジ色のプレートをフロントガラス内側に掲げたダンプカー。積んでいるのは「グリーンタフ」と呼ばれる青緑色の土だ。
近くでは山梨県発注の道路工事現場が複数あり、重機が川床をさらう。周辺を糸魚川-静岡構造線が通り、土質のためか所々の川沿いで自然の土砂崩れも見受けられた。
富士川との合流地点から約30キロ。早川上流にある山梨県管理の奈良田ダム。導水管の排水があり、濁りが強い日もある。
早川を昔から見てきた地元の男性(74)は「自然の濁りは2、3日たてば消えるが、ここ10年ほど前からはいつまでたっても濁りが消えないようになった。人の手が入り過ぎ、自然を変えてしまっているのだろうか」と不安げだ。