昨日2月16日、「台風19号千曲川災害検証シンポジウム」が長野市で開かれ、当会代表世話人の大熊孝さん、運営委員の嶋津暉之さんらがパネリストとして水害の原因について解説しました。
昨年10月の台風19号豪雨では千曲川の穂保(ほやす)地点で堤防が決壊し、凄まじい氾濫になりました。家々が濁流に吞まれ、2階近くまで水に浸かった住宅も出ました。堤防決壊から4ヵ月が経ち、住宅が水没したり、住宅が大きく損傷した住民の多くはこれからどうするか、この場に住み続けるか、離れるか悩んでいるということです。台風19号のような大豪雨が再来しても、堤防が決壊しないという安心がなければ、住み続けるという判断はできるものではありません。
今回のシンポジウムの主な目的は、決壊による大氾濫が再び起きないようにするためには、国土交通省に対して何を求めるべきかを明確にすることでした。
嶋津さんはこのことに関して、次の二点を強調したとのことです。
1.決壊地点で計画されている復旧堤防は耐越水堤防になっていない。川裏のり面の全面を連接ブロック等で覆う必要があるのに、のり肩のところだけの保護工になっている。本当の耐越水堤防工法を導入する必要がある。
2.台風19号豪雨による洪水位の異常上昇は降雨量が大きかったことだけではなく、河床の掘削がきちんと行われず、河床が上昇してきたことの影響が少なからずある。低水路だけでなく、高水敷も含めて河床の掘削を定期的に実施して必要な河道断面を確保する必要がある。
関連記事を転載します。
◆2020年2月17日 信濃毎日新聞
https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20200217/KT200216ATI090006000.php
ー土砂堆積 千曲川氾濫一因か 治水研究者招き長野でシンポー
昨年の台風19号により長野市の千曲川堤防が決壊した原因や対策を考えるシンポジウムが16日、長野市で開かれた。共産党県議団などの主催で、治水問題に関わる研究者3人が講演。土砂の堆積で川が浅くなったため千曲川の水位が高まった可能性を指摘した上で、土砂を撤去するしゅんせつを進めるべきだ―などとした。
大熊孝・新潟大名誉教授(河川工学)は、決壊地点周辺の千曲川について「1995〜2005年の間、砂利の採取がされなくなり土砂がたまっていた」と説明。川が越水し、決壊に至ったのは「川の断面積が不足していたためである可能性もある」とした。
水源開発問題全国連絡会の嶋津暉之共同代表も同様の考えを示し、「国はしゅんせつなどにより河床を(低く)維持する管理が不十分だった」と指摘。国土問題研究会(京都市)理事長で元京都大防災研究所助手の上野鉄男氏は、土砂の堆積を抑えるため「森林整備により山からの土砂流出を減らすことが重要だ」とした。
長野市の堤防決壊箇所で国が示す本復旧工法について、嶋津氏は「住宅地側ののり面をさらに強化すべきだ」と注文した。
シンポジウムには市内外から300人余が参加した。
◆2020年2月17日 しんぶん赤旗
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik19/2020-02-17/2020021704_01_1.html
ー決壊に強い堤防造って 千曲川被災者「国は検証を」 共産党、長野で水害シンポ 武田議員参加ー
昨年10月、甚大な浸水被害が発生した台風19号による千曲川決壊について住民の視点で検証しようと、日本共産党長野県議団と同市議団は16日、長野市でシンポジウムを開き300人を超す市民が参加しました。
和田明子県議が「新たに堤防を造っても水害を防げるのか。皆さんの思いに応えるシンポにしたい」と開会あいさつ。武田良介参院議員は「国はこれまでの河川整備が不十分だったと認め、整備のあり方の根本的な見直しが必要。シンポをその一歩に」と述べました。
3人のパネリストが報告。大熊孝・新潟大学名誉教授は、国土交通省の資料を基に千曲川の河床変動傾向を分析。「河床が上昇し、流下能力が落ちたことが決壊の原因とみている」と述べました。
嶋津暉之・水源開発問題全国連絡会共同代表は、千曲川決壊時の浅川ダムについて「流入量、放流量が少なく、治水の役割を果たさなかった」と指摘。洪水が越水しても簡単に決壊しない「耐越水堤防」を建設する必要性を強調しました。
上野鉄男・国土問題研究会理事長は、水害の直接的な原因の一つに高水敷(低水路より一段高い部分の敷地)の土砂堆積があると説明。「河川の上流で森林を整備し、山地からの土砂流出の抑制が重要だ」と語りました。
パネリストの報告後、被災住民の参加者が相次ぎ発言。「大量の砂利がなぜ出たのか国は検証し、決壊しない堤防を造ってほしい」(長野市穂保=ほやす=区の男性)などの要望が出されました。