八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

利根川水系の下久保ダム、台風でたまった土砂の除去工事公開

 群馬県と埼玉県の境を流れる神流川の下久保ダムは、利根川水系で二番目、八ッ場ダムより少し貯水容量の大きなダムですが、1968年に建設されてから半世紀の間に溜まった土砂が問題となり、土砂の除去工事が行われています。

 国土交通省が公表している全国のダムの堆砂データによれば、下久保ダムでは想定のほぼ倍のスピードで堆砂が進んでいます。公表されている最新データは、平成29年度の堆砂量985.4万㎥で、すでにこの時点でダム計画で100年間に堆積すると想定された堆砂容量1000万㎥に近づいていました。
(参照➡「全国のダム堆砂の最新データ(平成29年度末)を国交省が情報開示」

 昨年10月の台風19号豪雨の際には、さらに下久保ダムに平年の6年分の土砂が溜まってしまったとのことで、このほど土砂除去工事が報道関係者に公開されました。台風19号の際には、下久保ダムは豪雨の最中にダム湖が満杯近くまで水位が上がり、緊急放流の可能性が報道されました。堆積した土砂は治水容量を減らしてしまいますので、土砂除去が必要です。
 報道によれば、水資源機構下久保ダム管理所の田野弘明所長は「台風19号と同じような大きさの台風が、ことしもないとは言い切れない」と語っているそうですが、今年の台風シーズンまでに工事は終わらないようです。

 ダム計画を立案する際には、ダムの効果をPRするために、100年分で溜まると想定される土砂量(=堆砂容量)を過少に見積もる傾向があります。八ッ場ダムも将来、堆砂が問題となると考えられます。

◆2020年7月2日 NHK前橋放送局
https://www3.nhk.or.jp/lnews/maebashi/20200702/1060007129.html
ー台風に備え下久保ダムの土砂除去ー

 大雨や台風に備え、群馬県と埼玉県の境にある下久保ダムとその上流では、去年10月の台風19号で流れ込んだ大量の土砂を取り除く作業が進められています。

 群馬県と埼玉県の境にある神流川の下久保ダムは、運用が開始されてから50年以上が経過しています。
 ダムの管理所によりますと当初の想定より速いペースで土砂がたまっている上、去年10月の台風19号では、1年間に堆積する土砂の6倍以上にあたる130万立方メートルがダムに流れ込みました。

 このため、管理所はダムの機能を維持するため来年3月まで、ダムとその上流のあわせて3か所の土砂を取り除く作業を進めています。
 1日はダムの上流で作業が行われ、水陸両用のブルトーザーやダンプカーなど特殊な重機を使って、遠隔操作で川の中の土砂をかき出していました。

 水資源機構下久保ダム管理所の田野弘明所長は「台風19号と同じような大きさの台風が、ことしもないとは言い切れないので、施設の管理や訓練などを徹底し備えていきたい」と話していました。

◆2020年7月2日 上毛新聞
https://this.kiji.is/651166370638218337
ー台風でたまった土砂 除去工事を公開 神流・下久保ダムー

 昨年10月の台風19号(令和元年東日本台風)により下久保ダム上流部にたまった土砂の除去工事を進める同ダム管理所は1日、群馬県の神流町内で報道向けの現場説明会を開いた。無人重機を使った作業の様子を公開し、2021年3月末までに約11万4000立方メートルの土砂を搬出することなどを説明した。

 復旧事業として2月29日に着工。堆積物により減ったダムの貯水量を回復させるのが目的で、ダム堤体から上流に約10キロ離れた3カ所で行われる。これまでに約1万7000立方メートルの除去が完了した。

 説明会では安全対策に加え、新型コロナウイルス感染予防策を徹底していることを強調。国内に5台しかない無人で動く水陸両用ブルドーザーによる除去作業を公開し、1日平均500~600立方㍍の土砂を搬出していることを紹介した。
 田野弘明所長は「台風19号発生時には、下久保ダムが洪水調節に大きく貢献した。地元住民の協力や理解に感謝し、安全第一で工事を進めたい」と話した。

◆2020年6月26日 毎日新聞埼玉版
https://mainichi.jp/articles/20200626/ddl/k11/040/168000c
ー下久保ダム点検放流 大雨に備えゲート確認ー

  利根川上流に九つあるダムの一つで、神川町と群馬県藤岡市にまたがる下久保ダムで25日、大雨の時に放流量を調節する非常用ゲートの点検放流が行われた。

 下久保ダムは、利根川下流域に流す水量調節や発電などを行う多目的ダムで、1969年に完成。独立行政法人水資源機構が管理している。堤の高さが129メートル、L字型の堤は605メートルで、コンクリート製ダムでは日本一の長さとなる。有効貯水量は約1億2000万立方メートル。7~9月に8500万立方メートルまで減らし、大雨に備える。

 この日は午前10時半ごろ、放流口が下段から最上段の非常用ゲートに切り替わり、濁流が勢いよく落ちてきた。茶色がかっていた水しぶきは、やがて白く変わり、神流(かんな)川を下っていく。1時間で約6万立方メートルを放流した。今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、例年実施しているイベントは行わなかった。

 2019年10月の台風19号の際は、水道用などの水を流す事前放流を初めて実施。最接近時には緊急放流の恐れがあったが、見送られた。【岡礼子】

—転載終わり—

写真=八ッ場ダム貯水池の上流端、長野原草津口駅前大橋の上流側。2020年7月2日撮影。

写真=昨年10月の台風19号では、吾妻川沿いの国道(鹿沢発電所下流側)が崩落。来年6月の復旧を目指すと、嬬恋村広報紙(令和2年6月1日特別号)。写真は吾妻川支流の湯尻川。各所で倒木、土砂崩落が起き、湯尻川沿いの鹿沢温泉、新鹿沢温泉も甚大な被害。2020年6月27日撮影。