八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

支流の決壊どう防ぐ 堤防強化や調整池整備など

 昨年10月の台風19号の豪雨の際には、利根川は堤防に余裕がありましたが、群馬県の太田市や大泉町、玉村町では支流が溢れて多くの家屋が浸水被害となりました。また、今年7月の熊本豪雨では、球磨川だけでなく、球磨川に注ぐ支流の氾濫によって被害が大きく広がりました。
 栃木県では台風19号による氾濫被害を踏まえて、支川の治水対策工事を進めつつあると朝日新聞が報じています。
 栃木県と群馬県の県境には利根川の大きな支流である渡良瀬川が流れていますが、台風19号豪雨における氾濫は、渡良瀬川の支流で発生したということです。
 
 以下の記事が取り上げている事業の内容は、栃木県の公式サイトに掲載されています。

 ★「改良復旧事業(7河川)の事業採択について」
 http://www.pref.tochigi.lg.jp/h06/r1kairyoufukkyu_hp.html

 栃木県は、八ッ場ダムの治水負担金を支払い、さらに現在は、利根川支流の思川に南摩ダムを建設するために公金を投入していますが、八ッ場ダムも南摩ダムも洪水対策としては効果が期待できません。

◆2020年10月17日 朝日新聞
https://digital.asahi.com/articles/ASNBJ6RLWNBGUUHB013.html?iref=pc_ss_da
ー支流の決壊どう防ぐ 堤防強化や調整池整備などー

 「足利で水害というと渡良瀬川本流、というイメージが強かった」。足利市の和泉聡市長は、そう振り返る。死者も出た昨秋の台風19号では、市東部の旗川、出流川、尾名川の流域で、特に被害が大きかった。栃木市でも、巴波(うずま)川の支流の永野川が決壊し、広い範囲に被害が出た。

 これらの川は、渡良瀬川に流れ込む支流。国が管理する渡良瀬川本流区間とは異なり、県管理の区間が大半を占める。

 国や県によると、利根川は、「200年に1度」の豪雨にも耐えられるダム、堤防、遊水地を備えている。利根川の支流でもある渡良瀬川は、「100年に1度」を想定した造りで支えられている。しかし、その支流となると、「50年に1度」を想定した造りになっている。

 戦後間もなく、1947年のカスリーン台風や49年のキティ台風の被害が相次いだ頃、県では治水対策を急いだ。その頃の高水基準が残っている川もある。

 当時の地形図で確認すると、昨秋の台風で浸水した地域の多くは、周囲よりやや高い場所に街道があり、自然にできた高み(自然堤防)の上に集落がある程度で、ほとんどが田や桑畑。もともと、ある程度は水に漬かるかもしれない地域だったことがうかがえる。しかし、高度経済成長期を経て工業団地が造成されたり、住宅が増えたりした。

 利根川の治水は国の「利根川水系利根川・江戸川河川整備計画」で決められている。渡良瀬川水系は、大雨の時には渡良瀬遊水地や草木ダムを生かし、利根川に流れ込まないようにしていて、さらにその支流で大量の雨水をどうさばくかが問われている。

 県県土整備部の田城均・次長は「本流と支流は、親亀と子亀、孫亀の関係のようなもの」と話す。利根川が親亀なら、渡良瀬川は子亀、昨秋の台風で被害が出た旗川、秋山川、巴波川、思川は孫亀に当たる。

 県は、佐野市の秋山川と栃木市の永野川で、決壊した堤防の改良復旧工事に取り組んでいる。秋山川は約3キロ区間で、永野川は約12キロ区間。堤防を復旧し、河積(川の横断面で水の占める面積)の小さい橋や堰(せき)を改修する。全体事業費は秋山川が約57億円、永野川が約192億円に上る。

 「近年の天候を考えると、従来のように『命を守るために早めの避難を』とだけ言っているわけにはいかない」と田城次長。大規模な改修工事の理由と、決壊が起きないような対策の必要性を語る。

 今年度から始めた「堤防強化プロジェクト」は、向こう9年間で県内約900カ所を対象とし、堤防全体をコンクリートなどで覆う「巻堤」や、掘削した土砂を使って堤防の幅を広げる「腹付け」をする。たとえ水が堤防を越えてあふれたとしても、決壊は防ぎ、避難の時間をかせごう――という方針だ。

 渡良瀬川に流せる水量は国の計画で、思川が毎秒3700立方メートル、巴波川が毎秒1200立方メートル、秋山川が毎秒500立方メートル、旗川が毎秒900立方メートルと、上限が定められている。

 これに対応するため、県は管理する支流に遊水地や調整池を作ることを検討している。調整池は用地取得だけではなく、平時は農地などとして所有者が利用し、洪水発生時のみ調整池として使う「地役権」を設定する策も視野に入れている。「被害軽減を第一に考えたい」と田城次長は話す。

 熊本県などの水害で広く知られるようになった「線状降水帯」について、佐野市や栃木市の担当者は「今まで(地元に)かからなかったのは幸運だったというしかない」と話す。佐野市や足利市は今年、市内の商業施設と協定を結び、洪水時に、車での避難先として屋上や立体式の駐車場を使えるようにした。(根岸敦生)