2月4日、京都府の淀川水系河川整備技術検討会が大戸川ダムの建設が必要だという提言を京都府に提出しました。
昨年暮れから大阪府と京都府で、大戸川ダム受け入れの動きが出ており、今回の提言で大戸川ダムの建設が進められることになりそうです。
この技術検討会の提言の内容は次のURLで見ることができます。
★淀川水系の河川整備に関する技術検討会「淀川水系における今後の河川整備に関する提言」(令和3年2月4日)
上記の提言13ページに、大戸川ダムの治水効果を説明する図があります。
京都府の資料でありながら、京都府内では治水効果が示せないためか、大阪府内の淀川・枚方地点での大戸川ダムの効果が示されています。
(天ケ瀬ダムは現在工事中の再開発事業の完了を想定)
大戸川ダムと天ケ瀬ダム二次調節がない場合のピーク流量が11300㎥/秒、天ケ瀬ダム二次調節だけがある場合は11200㎥/秒、大戸川ダムと天ケ瀬ダム二次調節の両方がある場合は10800㎥/秒です。天ケ瀬ダム二次調節の効果は100㎥/秒の減少、大戸川ダムの効果は400㎥/秒の減少です。両者がない場合のピーク流量11300㎥/秒に対して、それぞれ0.9%、3.5%ピーク流量を下げるにすぎません。この数値は、洪水流量計算の誤差範囲の効果であることを示しています。
科学的な検証を行った2000年代の淀川水系流域委員会が現在も存在していたならば、このようないい加減な”有識者”の提言が受け入れられることはなかったでしょう。
関連記事を転載します。
◆2021年2月4日 京都新聞
https://this.kiji.is/730010924385894400?c=39546741839462401
ー大戸川ダム建設「必要」検討会が京都府に提言 西脇知事は「対応を検討」ー
国が事業を凍結している大戸川ダム(大津市)について、有識者でつくる京都府の技術検討会が4日、建設が必要とする提言を府へ正式に提出した。受け取った西脇隆俊知事は「対応を検討する」とのコメントを発表し、ダム建設の是非には言及しなかった。
提言は淀川水系の河川整備の方向性に対する考え方を示している。同水系内に含まれる大戸川ダムについて、地球温暖化に伴う降雨量の増加などを踏まえ「必要性がより明確化した」と建設に前向きな意見を記した。
西脇知事はコメントで、提言が近年の気象状況を勘案して治水対策を強化することなどを求めている点について「私も同じ考え」との認識を示した。その上で「提言を踏まえ、府民の生命・財産をどのように守っていくか、府としての対応を検討する」とした。
大戸川ダムを巡っては、建設地の滋賀や下流の京都、大阪など関係4府県知事の意見に沿い、国が2009年に事業凍結を決定した。しかし19年に滋賀県の三日月大造知事、今年1月に大阪府の吉村洋文知事がそれぞれ建設を認める考えを明らかにしている。
◆2021年2月4日 NHK京都放送局
http://www3.nhk.or.jp/lnews/k/kyoto/20210204/2010009361.html
ー大戸川ダム必要 府に提言提出ー
建設計画が凍結されている大津市の大戸川ダムについて、京都府の有識者検討会は、洪水の被害を防ぐためにダムの建設が必要だとする提言をまとめ、4日、府に提出しました。
大戸川ダムは、大津市の南部を流れる淀川水系の大戸川に国が建設を計画しましたが、平成20年に滋賀、大阪、京都、三重の4府県の知事が異議を唱え計画が凍結されています。
京都府としてのダムの必要性を議論してきた有識者検討会は、気候変動の影響による桂川流域などの洪水被害を防ぐため、「大戸川ダムの整備に着手する緊急性が高まっている」などとして、ダムの建設が必要だとする提言をまとめ、4日、府に提出しました。
京都府によりますと、大戸川ダムの総事業費は1080億円で、このうち府の負担は128億円余りになると見込まれています。
提言を受けて西脇知事は「近年の気象状況から桂川の整備促進が最優先の課題であることは同じ考えだ。提言を踏まえ、府としての対応を検討する」というコメントを発表しました。
大戸川ダムをめぐっては、おととし、滋賀県の三日月知事が早期の建設を求める考えを示したほか、大阪府の吉村知事も先月、建設を容認する方向で検討する考えを示しています。
◆2021年2月5日 毎日新聞京都版
https://mainichi.jp/articles/20210205/ddl/k26/010/325000c
ー大戸川ダム着工容認提言を提出 府有識者会議ー
国が建設を凍結した淀川水系・大戸川(だいどがわ)ダム(大津市)について、府の有識者会議(委員長=中北英一・京都大防災研究所教授)は4日、着工を容認する提言を府に提出した。
提言では「(下流の宇治市にある)天ケ瀬ダムの洪水調整機能を強化するため、大戸川ダムの必要性が明確になった」と指摘。気象変動の影響により、戦後最悪の豪雨をもたらした2013年の台風18号以上の豪雨が発生する確率も高まっており、「緊急性も高い」と結論付けた。
西脇隆俊知事は「府民の生命・財産をどのように守っていくか、対応を検討する」とのコメントを出した。
同ダムを巡っては大阪、京都、滋賀、三重の4知事が08年、凍結を求める共同見解を発表。滋賀が19年、建設容認に転換し、三重と大阪も容認に転じた。国土交通省近畿地方整備局は今後、兵庫、奈良を加えた淀川流域6府県による会議を開催し、凍結解除に向けた手続きが動き出す。【大川泰弘】
◆2021年2月5日 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO68839870U1A200C2LKB000/?unlock=1
ー京都府の有識者委、大戸川ダム「必要」提言ー
本体工事が凍結されている淀川水系の大戸川(だいどがわ)ダム(大津市)の建設計画について、京都府の有識者検討委員会は4日、ダム建設の必要性と緊急性を明記した提言を府に提出した。京都府の西脇隆俊知事は同日、治水の重要性への理解を示した上で「提言を踏まえ、府としての対応を検討する」とのコメントを発表した。工事の凍結解除には淀川水系6府県の同意が必要で、京都以外の5府県が容認の方針を示している。
天ケ瀬ダム(京都府宇治市)で流量が調整できるかが焦点となったが、提言は大戸川ダムなしでは天ケ瀬ダムの貯留量が不足するとした。洪水が起きた2013年の台風18号と同程度の災害が起きた場合、現状では流下能力を超えて氾濫が起きると予想。「大戸川ダムの整備に着手することの緊急性が高まっている」と指摘した。