静岡新聞が追求してきた富士川上流の雨畑ダムの堆砂問題に、地元の山梨県知事が取り組む姿勢を表明したと報道されています。
静岡県はリニア新幹線のトンネル工事による水漏れ問題には熱心に取り組んできましたが、富士川上流は山梨県になるためか、雨畑ダムに関しては沈黙が続いています。一方、山梨県はこれまで、雨畑ダム上流で水害が頻発しているにもかかわらず、この問題に踏み込もうとしませんでした。県幹部(治水課長)が雨畑ダムを管理する(株)日本軽金属に再就職し、子会社、ニッケイ工業の代表取締役に就任していることから、企業と県との癒着も指摘されてきました。
これまで動きがみられなかった山梨県知事の姿勢の変化は、静岡新聞の報道による影響が大きそうです。
(参考ページ➡「雨畑川、生コン大量投棄 汚泥現場の上流、山梨県が採石業者聴取」)
なお、山梨県の長崎幸太郎知事は財務省職員、衆院議員(自民党)を三期務めたのち、2019年の知事選で自民・公明の推薦を受け、現職(立民・国民推薦)の後藤斎氏を破って初当選しています。
◆2021年5月21日 静岡新聞
https://www.at-s.com/news/article/shizuoka/904508.html
ー山梨知事 汚泥調査を表明 富士川堆積「放置しない」【サクラエビ異変 母なる富士川】ー
サクラエビの主産卵場の駿河湾奥に注ぐ富士川の中下流域に高分子凝集剤入りポリマー汚泥が堆積している問題を巡り、山梨県の長崎幸太郎知事は20日の記者会見で、静岡新聞の報道内容を踏まえ「責任ある行動を取っていく必要がある」と述べた。「科学的な分析、実地的な分析をしなくてはならない」と説明。健康被害の有無の検証を含め、実態把握に向け調査の具体的方法や規模の検討に入る考えを明らかにした。
長崎知事は、汚泥の発生源や複数の高分子凝集剤の使用について「たまっているものの原因は分からない。ファクト(事実)を確定させた上で言える」と言葉を選んだ。問題の発覚から2年が経過しているが「放置するつもりはない」と強調した。
富士川水系雨畑川へのポリマー汚泥の大量投棄は2019年5月に発覚。その後の県への情報開示請求により、採石業者が11年夏以降8年間で500万立方メートルに上る汚水を発生させ、相当程度のポリマー汚泥を川に流していた実態が判明している。県は19年6月に投棄現場の4400立方メートルを同社に除去させ「撤去完了宣言」し、刑事告発も見送った。
富士川水系に高分子凝集剤の成分が残留している可能性が極めて高いと指摘した識者は、ポリマー汚泥の粒子は下流に拡散され、河床に堆積し、固着すると生態系を破壊する恐れがあると指摘した。「富士川の河川環境は既に異様で壊滅的な状況」などと述べている。
(「サクラエビ異変」取材班)
■事実確認が出発点 一問一答
長崎知事の記者会見での発言は次の通り。
―ポリマー汚泥問題とどう向き合うか。
「責任ある行動を取る。事実確認が出発点。専門的観点から分析し、採石業者にも報告を求める。不法投棄物が富士川に堆積しているという因果関係があると判断した場合、しっかり責任追及する」
―発覚からすでに2年。具体的計画は。
「今後検討する。静岡新聞の実験は重要なきっかけをもらった。真剣にスピード感を持って取り組む。具体的にいつまでに出してくれというのは酷」
―届け出書類から因果関係は明白では。
「ファクトを確定させたい。別のところから流れてきた可能性が一つもないか。新聞社が警鐘を鳴らすのは役目だが、権力を行使する上では調べたい」
―人体への影響は。
「しっかりと議論する。人体に影響あるかどうかも検証する」
◆2021年5月23日 毎日新聞山梨版
https://mainichi.jp/articles/20190912/ddl/k19/010/126000c
ー雨畑ダム問題で知事、日軽金批判 「かけ離れた認識」ー
長崎幸太郎知事は11日の定例記者会見で、土砂が堆積(たいせき)し問題となっている早川町の雨畑ダムに言及し、ダムを所有する日本軽金属(東京)について「抜本的な対策を日軽金に求めているが、我々の思いとは相当かけ離れた認識を持っているのではないか」と批判した。その上で「国土交通省にはしっかりと行政権限を行使し、日軽金に適切な行動を取るよう促してもらいたい」と話し、12日に自ら国交省に出向き、日軽金に対する更なる指導を求める考えを明らかにした。【野呂賢治】
◆2021年5月28日 静岡新聞
https://www.at-s.com/news/article/shizuoka/907520.html?lbl=557
ー富士川の汚泥調査へ有識者会議 山梨知事、7月にも 実態把握に全力【サクラエビ異変 母なる富士川】ー
富士川中下流域に高分子凝集剤入りポリマー汚泥が残留している問題で、山梨県の長崎幸太郎知事は27日、臨時記者会見を県庁で開き、7月にも高分子化学などの専門家による有識者会議を立ち上げ、ポリマー汚泥の堆積状況を調査すると明らかにした。20日の会見で表明していた実態把握に向けた調査の具体策を示した。
長崎知事は、富士川の河川環境改善に向け静岡県と連携することに合意したとし「まさにこの泥をどうするか。アクリルアミドポリマー(AAP)の蓄積をどうするか。取り組まないといけない」と、凝集剤成分の一つであるAAPの拡散状況の把握に全力を挙げる考えを示した。その上で「人工物による、本来自然にない泥をどう評価し、どうあるべき姿にしていくか。静岡県と一体となってやっていく」と強調した。
山梨県大気水質保全課によると、6月にコンサル業者に発注し、業者から示された内容を基に調査方法を有識者会議で決める。秋までには泥のサンプル採取を行う方針で、現在、長年にわたり富士川水系雨畑川(早川町)で不法投棄を続けてきた採石業者ニッケイ工業が県に提出した書類などから、凝集剤の種類や量の特定を進めている。
ただ、同社の当時の社長は県の元治水課長で、雨畑川は県管理の河川。県は、2019年5月の本社取材班による不法投棄報道にもかかわらず、投棄現場に堆積していた4400立方メートルを同社に撤去させ「撤去完了」を宣言。刑事告発も見送った経緯がある。県に対する情報開示請求によれば、同社は11年夏以降の8年間で500万立方メートルに上る汚水を発生させ、相当程度のポリマー汚泥を川に流していた実態が明らかになっている。
長崎知事は河川管理者としての調査に透明性や中立性をどう確保するか明言はせず「変な調査をする、お手盛りをするということはない。ちゃんとやるという言葉を額面通り受け止めてほしい」と述べた。
(「サクラエビ異変」取材班)