石木ダム事業から目が離せない状況が続いています。
事業を強行する長崎県は、ダム予定地でこれまで通りの暮らしを続ける13世帯の住民を立ち退かせるために、ダム本体工事の準備工事ともいえる県道の付け替え工事を強引に進める一方で、住民らに知事との対話を提案し、それがすぐには実現しないとなると、対話の前提を話し合うための事前協議を提案しました。
しかし、生活を守るために、県道の工事を座り込みの抗議行動で遅らせている住民らは、工事現場を離れることができません。このため、住民は長崎県の提案に対して、話し合いの条件は「工事の即時中断」であると再三伝えていますが、長崎県は住民の要望を受け入れず、本日19日とみずから提案した事前協議の中止を決めました。
土地収用法の手続きにより、住民らが暮らす土地や田畑の所有はすでに国に移転しており、長崎県は行政代執行によって住民を立ち退かせることができる立場にあります。しかし、土地収用法の後ろ盾があっても、13世帯という大人数を対象とした行政代執行は前例がなく、強硬な姿勢を貫いてきた長崎県は窮地に立たされています。
住民を守っているのは、必要性が希薄なダムのために人権を蹂躙するダム行政への世論の反発です。緊迫している現場の行方をこれまで以上に見守っていく必要があります。
◆2021年6月19日 NHK長崎放送局
https://www3.nhk.or.jp/lnews/nagasaki/20210618/5030011751.html
ー石木ダム反対住民 事前協議の前提として再び工事の即時中断をー
石木ダムをめぐる長崎県の中村知事と、建設に反対する地元住民との直接の話し合いに向けた事前協議について、住民側は、その前提として工事の即時中断を求める文書を再び、中村知事に宛てて送ったことを明らかにしました。
長崎県は、川棚町で建設中の石木ダムをめぐって、中村知事と建設に反対する地元住民との直接の話し合いに向けた具体的な条件を確認するため、19日、川棚町中央公民館で、県側と住民側がそれぞれ5人程度出席する事前協議の場を設けるよう改めて提案する文書を、今月11日付けで地元住民13世帯に宛てて送りました。
これについて、住民側は18日、川棚町の建設現場で記者団の取材に応じ、その前提として工事の即時中断を求める文書を、17日付けで再び、中村知事に宛てて送ったことを明らかにしました。
文書では、「工事は中断しないとか、私たちが現場を離れれば工事は粛々と進めるなどと意に反したことばを繰り返され、県職員に対する怒りと不信感が増すばかりだ。このような状況では穏やかな協議が行えるとは思えない」としています。
住民の岩下和雄さんは「県は私たちが拒否したような状況を作りたいのではないか。工事を止めた穏やかな状況で話し合いたいだけだ。それは知事の望みでもあるのではないか」と述べました。
一方、長崎県は、住民側の意向を再確認したうえで、提案していた19日の事前協議を見送ることを決めました。
また、住民側が今回中村知事宛てに送った文書については、「前回の文書と同じく、求めている工事中断の具体的な期間などが書かれておらず、不明確な点が多い。今後、対応を協議したい」としています。
◆2021年6月18日 長崎文化放送
https://www.ncctv.co.jp/news/90235.html
ー【長崎】石木ダム反対地権者 工事現場で会見ー
長崎県の石木ダム建設に反対する地権者が改めて工事の中断を訴えました。県は約2年ぶりの知事と住民の対話に向け先月から2回、地権者13世帯に対し話し合いを求める文書を送りました。住民側は工事を阻止する座り込みを続けていて、協議のために現場を離れる間に、県が工事を進めることを危惧しています。県が設定した協議の日時は19日で、それを前に住民が現地で改めて現状を訴えました。
岩下和雄さんは「私たちがここにいなければ工事をするんじゃないかと尋ねました。その答えが工事は粛々と進めますということなんです。私たちはここを離れることはできません」と話しました。
住民側は17日付で知事に対し「工事を即時中断して穏やかな話し合いができる環境をつくり知事と直接話し合いたい」とする回答を県に郵送しています。県は住民側の主張を受け19日の協議を中止しました。
◆2021年6月18日 テレビ長崎
https://news.yahoo.co.jp/articles/71990693735a652e694194dd52dcd94324f2d538
ー「工事を即時中断し、話し合いのできる環境を」長崎県川棚町の石木ダムめぐり地元住民が県に回答書提出ー
東彼杵郡・川棚町の石木ダムの関連工事をめぐり、長崎県が反対する住民に申し入れた事前協議の場は実現しませんでした。
住民側は、あらためて知事に対し話し合いのできる環境を求める文書を送っています。
18日午前、石木ダムの建設に反対する地元住民は、座り込みを行う現地で会見を開き、中村 知事宛てに「工事を即時中断し、話し合いのできる環境を」とあらためて文書を送ったと明かしました。
長崎県側は、中村 知事と住民との話し合いに向け事前の協議を申し入れる文書を、5月と6月の2回、送っています。
住民側は長崎県の申し出に対して「協議の場を拒否しているわけではない」としたうえで、長崎県側の「座り込みの現場を離れれば工事を粛々と進める」といった発言への不信感を訴えました。
ダム建設予定地の住民「(長崎)県職員に対して不信感が募るばかりで、私たちは話し合いをしたいという気持ちになっていない。本当に話し合いを望むなら、私たちと話しができる状況を作ってほしい」
住民の参加が見込めないことなどから、長崎県は、19日午後予定していた事前協議の場を見送りました。
しかし、長崎県は引き続き協議の場を模索していて、今後の対応を検討するとしています。
◆2021年6月19日 長崎新聞
https://nordot.app/778798665581264896?c=174761113988793844
ー反対住民 改めて「工事中断を」 長崎県、石木ダム事前協議見送りー
長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業を巡り、水没予定地の反対住民13世帯でつくる「石木ダム絶対反対同盟」は18日、建設予定地などで続ける抗議の座り込み現場で記者会見を開いた。中村法道知事との対話に向けて県が求めている19日の事前協議開催について「現状では穏やかな話し合いはできない」として先に工事を中断するよう改めて訴えた。これを受けて県は事前協議をいったん見送ることを決めた。
住民は現在、ダム建設に伴う付け替え県道の工事現場とダム本体建設予定地近くの2カ所で、月曜-土曜の早朝から午後6時ごろまで抗議活動を続けている。
県は5月下旬、対話の実現に向け条件面を詰める事前協議を提案したが、住民側は工事の即時中断を要求。これに対し県は6月19日の事前協議を求める一方で、工事は中断しない考えを伝えていた。
住民側は会見で、17日に県に送った文書について説明。それによると、住民側が(事前協議で)抗議現場を離れた場合も県が「工事は粛々と進める」姿勢を示したといい、「話し合いを求める言動と思えず、怒りと不信感が増すばかりだ」と主張。その上で「工事を即時中断して穏やかな環境を作り、知事と直接話し合いができるようにお願いします」と求めた。
会見に出席した岩下和雄さん(74)は「私たちは話し合いを拒否していない。一時的にでも工事をストップして話し合いをしたい」と強調した。2017年8月にも、知事との対話に向けた協議を開いたが、県が付け替え県道の工事再開を譲らず決裂した経緯に触れ「県側が住民に無理な条件を提示し、話し合いができない状況をつくるのが理解できない」と訴えた。
一方、県は事前協議で工事の中断期間や場所などの条件面を詰めたい考え。県河川課は「穏やかな環境で知事との話し合いを行うためにも、反対住民の方々に条件面の協議に応じていただきたい」としている。
◆2021年6月19日 朝日新聞長崎版
https://digital.asahi.com/articles/ASP6L71R6P6LTOLB004.html
ー住民との「事前協議」、隔たり埋まらず断念 石木ダムー
長崎県川棚町で石木ダム建設を進める県と、予定地住民との間の「事前協議」は、双方の主張の隔たりが埋まらず、開催しないことになった。中村法道知事と住民との対話に向けて県が19日開催を住民に申し入れていたが、18日になって「調整がつかない」と判断し、見送りを発表した。2019年9月以来の中村知事と住民との直接対話は実現しなかった。
県は住民側と、19日に町内で双方5人程度による協議を模索してきた。だが、この間も建設現場には重機が搬入されるなどし、交渉に来た県の関係者は、協議予定の19日の工事についても「粛々と進める」と住民に説明。県の対応に不信感を募らせた住民は15日、全13戸で対応を協議し、事前協議よりも「静穏な環境での知事との直接協議」を求める方針を確認していた。
18日午前、住民は抗議の座りこみを続ける現地で記者会見した。「県は協議当日でさえ工事を中断できないと言う。それでは我々はここを離れられない」と批判し、逆に知事との直接の話し合いを求めた。(原口晋也、安斎耕一)
◆2021年6月19日 西日本新聞
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/757445/
ーいつもより少ない座り込みの現場 雨の中、反対住民が記者会見ー
石木ダム・リポート ―6月18日―
雨の中、傘を差しての記者会見が開かれた。18日午前、長崎県川棚町の石木ダム建設工事現場。
「工事を即時中断し、穏やかな話し合いのできる環境をつくってほしい」。水没予定地に暮らす岩下和雄さん(74)ら反対住民はこの日、知事との話し合いに向けた事前協議を求める県に対し、こう回答した。岩下さんは集まった報道陣を前に「住民が協議を拒否したと受け取られるのは不本意。環境が整えば話し合いに応じたい」と、住民側の思いを丁寧に説明した。
事前協議は5月下旬に県が申し入れたが、住民側は「工事の中断」を要求した。県は今月11日に改めて協議開催を提案する文書を住民側に送っていた。
住民側の回答を受け、県は19日に開催を予定していた協議の見送りを決定。今後の対応については早急に検討するという。
かつて県は住民との話し合いに入るため、工事を中断したことがある。県道付け替え工事の進行を住民が阻止していた2017年8月、県は工事を止めて協議する場を設けた。
協議の場で、住民側は知事との面談を要望した。県は応じる姿勢を示したものの「工事の再開」も明言した。住民側は反発し、協議は物別れに終わった。協議のために工事が中断されたのは、わずか2週間あまりだった。
18日、福岡高裁に向かう住民や支援者もいた。県などを相手取った工事差し止め訴訟の控訴審で、意見陳述に臨んだのだ。
いつもより人数の少ない座り込みの現場。雨はしとしとと降り続いた。 (岩佐遼介)
石木ダム 長崎県と同県佐世保市が、治水と市の水源確保を目的に、同県川棚町の石木川流域に計画。1975年度に国が事業採択した。当初完成予定は79年度。移転対象67戸のうち川原(こうばる)地区の13戸は立ち退きを拒否し、計画撤回を求めている。2019年5月に県収用委員会が反対地権者に土地の明け渡しを命じた裁決を出し、同年9月に土地の所有権は国に移転。同年11月の明け渡し期限後、県の行政代執行による強制収用の手続きが可能になった。
◆2021年6月18日 長崎新聞に掲載された河川工学の第一人者、今本博健京都大学名誉教授の投書。
今本先生は京大防災研究所所長、国交省近畿地方整備局の淀川水系流域委員会の委員長などを歴任。
できるだけダムに頼らない治水を目ざした今本先生は、民主党政権が自公政権に代わる治水を本気で目指すのであれば、最初に登用されるべき有識者だった。
今本先生は一貫して公開での議論を求めてきたが、ダム行政はこれを無視。非公開、一方的な主張でかろうじて成り立っているのが、今進められている石木ダム、川辺川ダムなどのダム事業。