長崎県が建設強行をめざす石木ダム事業。ダム予定地では、土地の所有権が国に移っても、13世帯の住民が立ち退く気配はありません。長崎県が住民説得の場と位置づける「話し合い」の条件は依然として折り合わず、両者はそれぞれ今月27日に記者会見を行い、世論の理解を求めました。
NHKの報道によれば、中村知事は記者会見で、「石木ダムについては地域の皆様の安心安全を確保する上でも極めて重要な事業だと考えており、いつまでも工事を見合わせている状況を続ける訳にはいかない」と述べたということですが、石木ダムが治水利水両面で必要だという根拠を長崎県は示すことができずにいます。ダム行政では、利権のための事業を「安心安全のため」と推進してきたケースが数多くあったことが改めて思い出されます。
中村知事は「工事を見合わせている状況」と述べていますが、関連工事が終わらなければ着工できない本体工事を行えずにいるだけで、住民の生活圏を脅かす県道の付け替え工事は休むことなく継続しています。
長崎県が本当に住民との誠心誠意の話し合いをめざすのであれば、石木ダムの必要性について根拠を示すべきですし、話し合いの間は道路工事を一時中断してほしいという住民の提示条件を受け入れるはずです。
両者の記者会見を長崎県の人々はどう受け止めたでしょうか。
◆2021年7月27日 長崎テレビ
https://www.ktn.co.jp/news/detail.php?id=20210727008
ー石木ダム 知事との話し合いに向け地元住民が回答書提出へ 両者の主張は平行線【長崎県】ー
東彼杵郡川棚町の石木ダム建設を巡る 知事と地元住民との話し合いに向けた「条件交渉」が続いています。
ダム建設に反対する地元住民は、改めて時間をかけた話し合いを長崎県側に求めています。
ダム建設予定地の住民 岩下和雄さん 「このまま続けていっては、例えダムができたとしても禍根を残すダムになることは間違いない。今、時間をかけて話し合いをすべき」
長崎県は先週、話し合いについて・期間を8月末、工事の中断を当日に限るとの条件を提案しました。
しかし、住民側は「話し合いの当日だけでなく、期間中の工事中断がないと穏やかに話し合いに臨むことができない」などとする回答書を準備しています。
長崎県 中村法道知事 「話し合いの機会をいただきたいと早い段階から考え方を示し、現場などでも繰り返し条件整理について相談させていただいた。そういった作業もすでに半年経過している。これ以上長く時間をかけて、工事を止めておくわけにはいかないものと判断している」
両者の主張は平行線となっていて、話し合いの実現のめどは立っていません。
◆2021年7月27日 NHK長崎放送局
https://www3.nhk.or.jp/lnews/nagasaki/20210727/5030012128.html
ー石木ダムの建設工事即時中断に応じるのは難しい状況ー
長崎県の中村知事は、定例の記者会見で、石木ダムの建設に反対する地元住民との直接の話し合いをめぐって、住民側が話し合いの条件として求めている工事の即時中断などについては応じるのが難しいという考えを示しました。
川棚町で建設が進む石木ダムをめぐって、中村知事と建設に反対する地元住民との直接の話し合いに向けて模索が続く中、長崎県は話し合い当日に限って工事を中断するなどの条件を示した文書を今月19日付けで地元住民に宛て送っています。
これに対し、住民側は27日、記者会見を開き、工事を即時中断した上で、話し合いの期間中には工事を行わないことなどを県に求めていく意向を改めて示しています。
こうした中、中村知事は27日に開かれた定例の記者会見で、「石木ダムについては地域の皆様の安心安全を確保する上でも極めて重要な事業だと考えており、いつまでも工事を見合わせている状況を続ける訳にはいかないと」と述べました。
その上で、「今回、話し合いの期間中はすべての工事を止めてしまえというお話だったが、これについてもなかなか難しい状況だ」と述べ、住民側が求める工事の即時中断などに応じるのは難しいという考えを示しました。
県が示した条件の中で、話し合いの期間を来月末までとしていることについて、中村知事は「相当の時間をかけましたけれども、まだ環境整備にご理解をいただくにいたっていない。これ以上長く時間をかけて工事を止めておくわけには行かないと判断をしている」と述べ、話し合いの期間を延ばすのは難しいという考えを示しました。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/nagasaki/20210727/5030012129.html
ー石木ダム建設 住民が知事との話し合いの条件理解できずー
川棚町で建設が進む石木ダムをめぐって、長崎県が、中村知事と建設に反対する地元住民との直接の話し合いに向けて示した話し合い当日に限って工事を中断するといった条件について、住民側は、「本当に話し合いを望んでいるのか疑問で理解できない」とする回答書を中村知事宛てに送る考えを示しました。
川棚町で建設が進む石木ダムをめぐって、長崎県は、中村知事と建設に反対する地元住民との直接の話し合いに向けて、話し合いの期間を来月末までに設定し、話し合い当日に限って工事を中断するといった条件を示した文書を今月19日付けで地元住民に宛て送りました。
住民側は27日、川棚町の建設予定地で記者会見を開き、28日付けで中村知事に宛て、回答書を送る考えを示しました。
回答書では、「県からの回答を見て知事が本当に話し合いを望んでいるのか疑問で全く理解できない」としています。
また、県が示した条件については、「『話し合い当日限りの中断』とあるが、そのような中で静穏な話し合いができるとは考えられない」としています。
住民の岩下和雄さんは、「話し合いのときだけ工事をストップするのは静穏といえるのか。同じことを何度もいっているが、工事を即時中断して話し合いができる環境を作って欲しい」と述べました。
◆2021年7月28日 長崎新聞
https://nordot.app/792929015952228352?c=684597186287141985
ー「本当に対話望むのか」 石木ダム 反対住民が県批判ー
長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業を巡り水没予定地で暮らす反対住民は27日、中村法道知事との対話について現地で記者会見を開いた。県側が示した「対話当日限りの工事中断」などの条件について「本当に話し合いを望んでいるのか」と批判した。
一方、中村知事は同日の定例会見で対話の期限を来月末と区切った理由について「住民の安全安心のため事業をこれ以上先延ばしできない」と述べ、一昨年9月以来となる対話の実現は不透明感を増してきた。
現地の会見には住民約20人が参加。岩下和雄さん(74)は「私たちは猛暑の中、毎日座り込みを続けている。『1日だけ工事を止めるから話し合いに来い』で、県の言う『静穏な環境』になると本気で思っているのか」と批判。「半年間、本体工事着手を見合わせるなど配慮してきた」とする県の主張に対しても「説明を受けたことはなく、その間も現場では(本体工事以外の)工事が強行されていた」と反論した。石丸勇さん(72)は「話し合いは両者が対等の立場でするもの。県の条件は一方的だ」と訴えた。
ただ対話の可能性を全否定するのではなく「私たちと向き合い信頼を得て、対話ができる環境をつくってほしい」(岩下さん)と呼び掛けた。住民側は28日に意見をまとめた文書を県に発送する。
知事も会見で工事中断について態度を軟化させる可能性を問われ「住民から返事をいただいた上で検討する必要がある」と明言を避けた。
◆2021年7月29日 毎日新聞長崎版
https://mainichi.jp/articles/20210729/ddl/k42/040/442000c
ー「本気で話し合い望むのか」 石木ダム建設計画、住民が県を批判 川棚町で記者会見ー
県と佐世保市が川棚町に建設を計画する石木ダムを巡り、石木ダム建設絶対反対同盟は27日、同町川原地区で記者会見を開いた。知事と水没予定地の住民との対話に向けて県が示した条件への回答内容を明らかにし、「県が本気で話し合いを望んでいるとは思えない」と批判した。
県への回答書では、県が「本体工事の着工を半年にわたり見合わせている」としていることについて、そのような説明は受けていないと反論。話し合いを呼びかける一方で、工事を強行するなどして対話できない状況を作っているのは県だと主張している。
住民の岩下和雄さん(74)は会見で「県が本当に(ダムを)造りたいのなら私たちを説得するべきだ。工事を半年見合わせていたのなら話し合いもできたはずだが、それもせずに『配慮してきた』というのは間違っている」と訴えた。
一方、中村法道知事は27日の定例記者会見で、ダムは必要との認識を改めて示した上で「話し合いに向けて誠心誠意対応したい」と述べた。【綿貫洋、田中韻】
◆2021年7月28日 西日本新聞
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/776699/
ー石木ダム「話し合える環境整備を」 住民側、県に要請文送付へー
川棚町の石木ダム建設事業を巡り、県が水没予定地の住民に申し入れている中村法道知事との話し合いについて、住民側は27日、期間中の工事中断など「話し合いができる環境の整備」をあらためて求める文書を県に送る方針を明らかにした。
同日に現地で記者会見した。県は住民側に送った19日付の文書で、知事との話し合いの期限を8月末とし、工事は当日に限り中断するとした上で、28日までの回答を求めていた。
知事が住民と話し合う意向を示した5月以降、その条件を巡って県と住民との間で交わされた文書のやりとりは今回で4回目。県は本体着工を見送るなど「住民側に配慮している」と説明しているが、住民の岩下和雄さん(74)は会見で、座り込み現場では早朝や深夜帯に工事が進んだと指摘し「静穏な環境とはほど遠い」と主張した。
一方、中村知事は27日の記者会見で「全ての工事を止めるのは難しい」と述べ、今後の対応は住民側の文書を受け取った上で検討するとした。 (岩佐遼介、泉修平)