八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

八ッ場ダム周辺、デマンドバスの実証実験始まる

 観光客の利便性を高めるために、八ッ場ダム周辺の各施設をつなぐデマンドバスが来年度から運行されるとのことです。本格的な運行開始を前に、実証実験が始まると、地元紙が一面トップニュースで報じました。 

 八ッ場ダム事業では、水没地域の各地区ごとに、ダム事業によって衰退した地域の活性化、観光客の集客などを目的とした「地域振興施設」が建てられました。このため、ダム湖周辺の各所に、さながらアミューズメントパークのように観光施設ができました。

ほぼ満水のダム湖

 ダム堤の左岸側を走る国道は首都圏から草津温泉、浅間山麓など上信県境の観光地へ向かうルートとして多くの車が行きかいます。このため、国道沿いの「道の駅」やダム堤はマイカー利用の観光客で賑わっているのですが、首都圏から列車で来る人は、駅で下車した後の足がありません。本来の観光地であった川原湯温泉は国道の対岸にあり、賑わいから取り残されてしまっています。 
 2012年までは、東京都心と草津温泉をつなぐ割安なJRバス「上州ゆけむり号」が水没地の川原湯温泉駅に停車したため、特に若い観光客に人気でした。今もJRバスは走っているのですが、利用者が少ないからか川原湯温泉は素通りです。

◆2021年12月24日 上毛新聞一面トップニュース(紙面より転載)
ー八ッ場にデマンドバス あすから実証実験 ドコモCS 草津観光自動車 観光客の周遊狙うー

 2次交通の少ない八ッ場ダム(長野原町)周辺の観光地をつなぎ、観光客の周遊を促そうと、ドコモCS群馬支店(高崎市)と草津観光自動車(草津町)は25日から、利用者の要望に応じて運行する乗り合いのデマンドバスの実証実験を始める。年末年始や1月23日までの週末などに運行し、利用する人数や時間帯といった乗降データを集計。来年度以降の本格運行に向け、効果的な停留所の設置場所やバスの台数などについて検証を進める。

 デマンドバスの利用や予約は、運航車両と同じ名称の専用アプリ「無料周遊バス やんばぐりーん号」から行う。アプリを通じて配車予約をしてもらうことで、人工知能(AI)を備えたシステムが目的地までの最適な経路を案内する。

 実証実験には、長野原町商工会や川原湯温泉協会など地元団体が協力する。JR長野原草津口駅をはじめ、道の駅、水陸両用バス発着所など周辺の観光施設、同温泉街の旅館など21カ所を停留所に設定する。

 配車予約のほか、アプリでは停留所となっている観光施設、旅館などの情報を発信する。見どころやクーポンに関する情報も併せて掲載することで、目的地選びから2次交通の確保までアプリ一つでできるようになる。
 実証実験で使用するバスはワゴンタイプで最大9人乗り。午前9時~午後5時で25日~1月3日は連日、以降は土日と祝日(10日)に運行する。期間中は無料で利用できる。

 同支店法人営業部の堀谷順平さんは、八ッ場ダム周辺は魅力的な観光資源が豊富な一方、観光客を迎え入れる手段やきっかけが少ないと説明。「観光客と事業者のつながりを生み出すことで観光施設を知ってもらい、周遊につなげたい。将来的には地元住民も気軽に利用できるサービスへと発展させ、地域のデジタルデバイド(情報格差)解消にも寄与したい」と話す。

 草津観光自動車の高橋敏幸取締役は「交通手段が少ない地域。交通弱者の足として八ッ場だけでなく、西吾妻地域にも範囲を広げていきたい」と展望した。(桜井俊大)

—転載終わり—

写真=水陸両用バスの発着所となっている横壁地区の観光施設「湖(みず)の駅丸岩」は、国道の橋の脇にあるが、観光客にはわかりにくいこともあり、立ち寄る人が少ない。水陸両用バスは今季は12月26日まで営業。

写真=川原湯地区は湖面橋「八ッ場大橋」で国道とつながっているが、国道から対岸に渡る人は少ない。

写真=名勝・吾妻峡にダム堤が影を落としている。正面の岩山は、ダム建設前は「見晴台」と呼ばれた小蓬莱。ダム直下の八ッ場発電所の周辺では今も工事が続いている。2021年12月20日撮影。