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球磨川水系河川整備計画のパブリックコメント

 4月4日から5月6日の期間、球磨川水系河川整備計画の原案についてのパブリックコメント(パブコメ)が行われています。
 パブリックコメントとは、行政が策定中の計画に市民の意見を反映させるために、広く意見を募るものです。球磨川水系の河川整備計画は、熊本県を流れる球磨川の今後30年間の治水対策を定めるものです。この計画は、球磨川最大の支流である川辺川に国が半世紀以上前から計画してきた巨大ダム計画を組み込むなど、4336億円もの公金が投じられることから問題視されています。

 今回のパブリックコメントについて、当会会員で水問題研究家の嶋津暉之さん(水源開発問題全国連絡会共同代表)の意見を紹介します。

*河川整備計画のパブリックコメントの基本的問題点
 率直に言って、国土交通省による河川整備計画原案のパブリックコメントは、一般の人々の意見を計画に反映したことにするためのセレモニーにすぎません。市民が国土交通省の意向に反する意見を持ち、いかにその意見が正当であっても、反対意見によって計画が修正されることはほとんどありません。河川管理者(国土交通省と熊本県)の考えに抵触しない、無難な意見だけが僅かに計画に盛り込まれるだけです。
 とはいえ、今回の球磨川水系河川整備計画によって、多くの人が長年反対し続けてきた川辺川ダムが法的に位置づけられ、建設に向けて動き出すことになります。また、問題が指摘されている遊水地の整備、市房ダム再開発も動き出すことになりますので、パブリックコメントを無視するだけではすみません。

*今回のパブリックコメントの仕組み
 今回のパブリックコメントの仕組みを説明します。
 今回のパブリックコメントは国管理区間と県管理区間に分かれていて、かなり複雑です。

 球磨川は下図の通り、国の管理区間と熊本県の管理区間があります。球磨川本川は河口部から上流の幸野ダム(市房ダムのすぐ下流)までは国の管理区間です。支川は川辺川の五木村~相良村(川辺川ダムの予定地)は国の管理区間ですが、それ以外は県の管理区間です。

 国と県のそれぞれの管理区間の河川整備計画の原案は次のURLで見ることができます。

 <国管理区間>http://www.qsr.mlit.go.jp/yatusiro/site_files/file/river/kasenseibi/kuma_seibikeikaku_genan.pdf

 <県管理区間>https://www.pref.kumamoto.jp/uploaded/attachment/175952.pdf

 国管理区間の原案についての意見は国に、県管理区間の原案についての意見は県に送らなければなりません。

 意見を意見書提出様式に記入してください。意見書の送付先は次の通りです。
 (上記の意見書提出様式の文字列をクリックすると意見書の書式が開きます。)

 〇国管理区間に対する意見: 
  〒866-0831熊本県八代市萩原町1丁目708-2 国土交通省九州地方整備局八代河川国道事務所調査課 
 〇県管理区間に対する意見: 
  〒862-8570熊本県熊本市中央区水前寺6丁目18番1号​ 熊本県土木部河川港湾局河川課 

*今回の河川整備計画原案の基本的な問題(1)
 ー”流水型”川辺川ダムの建設

 今回の河川整備計画原案の基本的な問題点を私なりに述べれば、第一は長年、流域住民をはじめ、多くの人々が反対し続けてきた川辺川ダム建設事業が流水型ダムという衣をまとって動き出すことです。川辺川ダムのことは<国管理区間>の原案の103ページに書かれています。
 
 川辺川ダム事業にはすでに2200億円が投じられていますが、これからさらに2700億円という巨額の公費を投じて川辺川ダムの建設が進められることになっています。(2035年度完成予定)
 川辺川ダムは球磨川水系の自然を大きく損なうものですので、反対運動の高まりで一時は中止されたのですが、2020年水害で復活しました。何とか中止させたいです。

*今回の河川整備計画原案の基本的な問題(2)
 ー遊水地の整備による先祖代々の土地、現在のコミュニティの喪失

 球磨川の本流では中流部の人吉市と球磨村で計約90世帯の移転が必要な遊水地が計画されています。
 (「遊水地「90世帯移転」住民困惑「自宅再建したのに」」(読売新聞2022/3/22 05:00

 この本流の遊水地については<国管理区間>の原案の103ページに書かれています。遊水地は先祖代々の土地、現在のコミュニティを喪失させますから、安易につくるべきものではありません。

*今回の河川整備計画原案の基本的な問題(3)
 ー市房ダム再開発

 球磨川上流の市房ダムを再開発する計画が今回の河川整備計画原案に盛り込まれています。(<国管理区間>の原案の104ページ)
 市房ダムは県が管理しているダムですが、国土交通省が大規模な改造(再開発)を行うとしています。

 市房ダムは2016年にも大規模な改造が検討されたことがありますが、今回の再開発事業の内容、費用はまだ決まっていません。
 ➡市房ダム再開発についての国土交通省説明資料

 市房ダムについて思い出されるのは、2020年7月洪水で洪水調節機能を失って、緊急放流に近い状態に陥ったことです。このことを踏まえれば、市房ダムは再開発ではなく、撤去を検討すべきだと思います。 
 参考ページ➡「昨夏の球磨川豪雨で緊急放流寸前だった市房ダム」 

 以上、雑駁ですが、今回の球磨川水系河川整備計画原案に対する私の意見を述べさせていただきました。

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 関連記事を転載します。

◆2022年4月5日 朝日新聞
https://www.asahi.com/articles/ASQ4472QDQ44TLVB00F.html
ー球磨川水系の治水計画でパブコメを募集 5月6日までー

 2020年7月の記録的豪雨で氾濫(はんらん)した球磨川流域の治水対策について、国土交通省と熊本県は4日、今後30年間かけて進める河川整備計画の原案を発表した。5月6日までパブリックコメントを募る。

 原案は、3月28日の専門家委員会での意見を参考にまとめたもので、治水専用の流水型ダムを川辺川に整備する内容のほか、遊水地の造成や河道掘削などが含まれている。

 県のホームページ(https://www.pref.kumamoto.jp/soshiki/105/130972.html別ウインドウで開きます)などで意見を募集するほか、球磨川流域の12市町村でも1回ずつ公聴会を開く。今後、パブコメや球磨川流域の市町村の意見を踏まえ、河川整備計画を策定する予定だ。(大貫聡子)