住民の反対運動が続く長崎県の石木ダム事業は、ダム予定地から離れた佐世保市の水道用水の供給を目的としています。
当会運営委員の嶋津暉之さん(水問題研究家)が佐世保市水道の2021年度の一日最大給水量がどうであったかを知るため、佐世保市に対して2021年度の毎日の給水量について情報公開請求を行いました。
嶋津さんからの報告を紹介します。
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昨日、佐世保市より開示されたデータが届きましたので、2021年度までの佐世保市水道の一日最大給水量の動向のグラフを早速描いてみました。
◇減り続ける佐世保市水道の給水量(利水面で石木ダムは不要に)
佐世保市水道の一日最大給水量の動向は右図の通りです。(クリックすると拡大)
2021年度の一日最大給水量は69,901㎥/日で、一段と小さくなりました(一日最大日は2021年12月31日)。2000年度前後の一日最大給水量は10万㎥/日程度ありましたが、その後はほぼ減少の一途を辿り、現在は7万㎥/日程度です。
佐世保市の水需要予測では、2020年度以降は一日最大給水量が10万㎥/日を超え、10.7万㎥/日程度になるから、石木ダムの水源約4万㎥/日が必要だということになっています。しかし、一日最大給水量の実績は減り続け、予測値との差は3万㎥/日以上に拡大しています。
なお、佐世保市の水道水源は許可水利権の他に慣行水利権も加えると、10万㎥/日程度あります。利水面で石木ダムはますます無用になってきているのです。
◇治水面でも石木ダムは必要性が希薄
一方、石木ダムは治水面での必要性も希薄なダムです。
石木ダムは長崎県の説明によれば、石木川が注ぐ川棚川における100年に一度規模の大洪水の際、下流の水害を軽減するために必要とされています。しかし右図の通り、石木ダムより下流の川棚川の流域面積は7.14㎢と、川棚川の全流域面積81.44㎢のわずか8.8%しかありません。
そのうちの大半を占めるのは下図右の通り、川棚町市街地の公共下水道計画区域と、川棚大橋下流の最下流域です。
前者は内水氾濫による10年に一度規模の降雨の計画対象区域ですから、雨量規模が1/10を上回れば内水氾濫で溢れる危険性が高まります。後者は港湾管理者の管理区間であるということで、低い堤防がそのまま放置されており、堤防整備の計画も示されていません。1/100洪水に対応するために石木ダムが必要だとしていながら、公共下水道計画区域と川棚大橋下流の最下流域はもっと小さい規模の洪水で溢れる危険性が高いのです。
したがって、川棚川下流域の治水対策として必要とされているのは「内水氾濫の危険性の高い公共下水道計画区域について内水氾濫対策を充実すること」と、「川棚大橋下流の港湾管理者管理区間の低い堤防を嵩上げすること」です。石木ダムよりはるかに重要な治水対策があるのに、長崎県はもっぱら石木ダム事業の推進に力を注いでいます。
◇必要性が希薄な石木ダムの建設中止を!
以上の通り、石木ダムは利水面でも治水面でも必要性が希薄なダムです。
ダム予定地に住む13世帯約50人の人たちの生活が守るために、必要性が希薄な石木ダムの建設を中止させましょう。