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高知・物部川、流水型ダムも検討 濁水対策を具体協議へ

 高知県を流れる物部川のダム問題について地元紙が報じています。

 物部川の上流域では、山火事やシカの食害により森林の荒廃が進行しており、特に2004年と2005年の台風被害による大規模な山腹崩壊やダムへの土砂流入等により、濁水の長期化が問題となってきたということです。
 このため、2005年に高知県が主体となって、学識者、国(国土交通省、林野庁)、物部川漁業協同組合で構成する「物部川濁水対策検討会」が組織されました。2007年以降は、検討会に流域住民の声も反映されるよう、流域3市の市長も参画し、濁水の実態把握、監視および濁水軽減対策を実施してきたということです。

〈参考〉➡高知県ホームページより「物部川濁水対策検討会_これまでの検討」

 さる1月24日に開かれた「物部川濁水対策検討会」では、既設の3つのダムが土砂をせき止めて起こる環境問題を解決するためとして、事務局の国土交通省高知河川国道事務所が既設のダムを平常時は水をためない「流水型ダム」(穴あきダム)へ改造する案や、下流に土砂を運ぶためにベルトコンベヤーや排砂バイパスを設置する案などを提示したということです。

 三つの既設ダムの位置、容量、竣工年は以下の通りです。いずれも60~70年前に竣工した古いダムです。

【物部川の既設ダム】
 物部川水系河川整備計画より

 〇永瀬ダム   総貯水容量 4909万m3  1956年竣工 洪水調節、発電
 〇杉田ダム  総貯水容量 1053万m3 1959年竣工 発電専用ダム
 〇吉野ダム  総貯水容量 209万m3  1953年竣工 発電専用ダム

◆2023年1月29日 高知新聞
https://www.kochinews.co.jp/article/detail/625226
ー高知・物部川、流水型ダムも検討 濁水対策を具体協議へー

 高知県や国、有識者らでつくる「物部川濁水対策検討会」(会長=笹原克夫・高知大教授)はこのほど、三つのダムが土砂をせき止めて起こる環境問題を解決するため、平常時は水をためない「流水型ダム」への改造や、土砂を迂回(うかい)させるバイパス新設などを選択肢として、具体的な協議に入る方針を確認した。

 物部川では三つのダムが泥をため込み、長期にわたり下流を濁らせる被害が長年の懸案に。岩や砂利が下流に移動せず、アユなどの生育環境への悪影響も出ている。

 24日の会合では、事務局の国土交通省高知河川国道事務所が対策案として、ベルトコンベヤーや排砂バイパスを整備して下流に土砂を運ぶ方法を紹介。さらに、最下流の杉田ダムを治水専用の流水型ダムとする案を示した。

 流水型は、平時はダム河床部に設けた放流設備から水と土砂を流す構造で、洪水調整機能に特化させたもの。このほか、ゲート開閉により土砂を流下させるダムや、複数のダムが連係して土砂を流す方法など全国の事例を示した。

 これに対し、委員からは「排砂バイパスも流水型ダムも歴史が浅く、環境への長期的影響が分かっていない。下流の生態系を壊さないようリスクを見極めてほしい」「長い工事期間中に関係者が共存できる水の有効利用を考えるべきだ」「農業用水の確保に配慮を」という声が上がった。

 同事務所の小林賢也所長は「できるだけ急いで検討を進めたいが、三つのダムを治水も利水も環境も踏まえて改造する事例は全国でもない。技術的にも難しいため一定の時間がかかる」との見方を示した。

 検討会は2021年度、流域関係者が連携して土砂を総合管理する提言をまとめた。これを基に、今後2、3年で、ダムの治水容量や放流能力を増やす▽ダムの運用ルールを見直す▽土砂を運ぶ・流す―などの具体策を検討して、着工を目指している。(八田大輔)