八ッ場ダム建設によって川原湯温泉と吾妻渓谷というかけがえのない観光資源が破壊にさらされた群馬県長野原町では、ダム湖観光と浅間山麓の観光資源を連携させることで新たな観光開発をめざしています。
同町の取り組みは、昨年5月、観光庁の「インバウンドの地方誘客や消費拡大に向けた観光コンテンツ造成支援事業」に採択された全国800事業の一つです。観光庁の解説によれば、採択された事業への補助額の上限は1250万円とのことです。
〈参考〉
国土交通省観光庁ホームページより
〇「インバウンドの地方誘客や消費拡大に向けた観光コンテンツ造成支援事業」採択事業一覧
〇「令和5年度(令和4年度第2次補正予算)観光庁 インバウンドの地方誘客や消費拡大に向けた観光コンテンツ造成支援事業」
地元紙がこの事業で企画されたモニターツアーについて伝えています。
八ッ場ダムは東日本有数の観光地である草津温泉への通り道にあり、軽井沢からも近距離です。通常でも多くの観光客が往来する立地ですから、山の奥地にある大多数のダムより誘客に有利ですが、それでも、自然資源豊かなすぐれた観光地が数多く競う中で通過地点としてではなく滞在先として選ばれるのは容易ではありません。
記事では、ダム湖畔で注目される天明泥流ミュージアムが取り上げられています。本来の観光資源である川原湯温泉はダム湖畔に移転し、温泉の湧出地が源泉公園として整備されていますが、これらはモニターツアーのコースに入っていたのでしょうか?
◆2024年2月2日 上毛新聞 紙面より転載
https://www.jomo-news.co.jp/articles/-/413523?utm_term=Autofeed&utm_medium=Social&utm_source=Twitter#Echobox=1706924655
ー訪日客誘致へ観光磨く 長野原町ー
インバウンド(訪日客)誘致につながる観光コンテンツ開発へのアドバイスをもらおうと、群馬県長野原町は1日、町内でメディア関係者や留学生らを対象にしたモニターツアーを実施した。参加者は八ツ場あがつま湖周辺の施設を巡り、外国人や首都圏の観光客の関心を引きそうなアピールポイントのほか、多言語対応などの改善点について提案した。
留学生ら招きモニターツアー
八ツ場エリアは2020年3月の八ツ場ダム完成で新たな観光地としてスタートを切ったが、コロナ禍で外国人客の誘致や受け入れ態勢の整備を進められずにいた。町はツアー参加者の声を参考に、八ッ場エリアと浅間山麓の北軽井エリアに点在する観光スポットをつなぐ、町内全域の周遊プログラム構築を目指す。
ツアーはダム湖周辺で実施し、メディアや教育関係者ら計7人が参加。八ッ場ダム見学でダム建設の歴史に触れ、「川原湯温泉あそびの基地NOA」ではバーベキューを楽しんだ。
ダム建設に伴う発掘調査の成果を展示する「やんば天明泥流ミュージアム」では、古沢勝幸館長の案内で1783(天明3)年の浅間山の大噴火で発生した天明泥流の災害について学んだ。
参加者からは「日本の四季を感じたいという外国人は多く、ダム湖周辺の景観は強みになる」といった声や、「母国語で情報を集めるので案内を多言語化したほうがいい」といった提案があった。
ノルウェー出身で早稲田大大学院で学ぶユルスナード・アクセルさん(26)は、八ッ場エリアの歴史に興味を持ったとし、「資料館やミュージアムを通じて後世に歴史をつないでいるところが素晴らしい」と話した。
同町の取り組みは観光庁の「インバウンドの地方誘客や消費拡大に向けた観光コンテンツ造成支援事業」に採択され、JTB群馬支店などが連携してツアーを企画した。(前原久美代)
写真=群馬県長野原町と長野県浅間山の境に聳える浅間山。2022年1月29日撮影。
写真=川原湯温泉の源泉公園。2023年2月18日撮影。
写真=天明泥流ミュージアムの看板。