試験湛水中の立野ダムを同じ熊本県内の五木村の住民が視察したことがニュースとなっています。
五木村には川辺川ダムの水没予定地があります。ダム事業を進める国土交通省九州地方整備局は、新たに計画した川辺川ダムは、洪水の時だけ水を貯める「流水型ダム」であることから、河川環境への影響は最小限だと説明しています。しかし、「流水型ダム」は通常は貯水しないため、ダムができたところで定番となっている「ダム湖観光」による地域振興策は不可能です。水没予定地とされるかつての五木村の中心部は、川辺川ダムができれば空き地のまま残されることになります。「流水型ダム」の先例である島根県の益田川ダムや山形県の最上小国川ダムでは、洪水時に水没地に流れ込んだ大量の流木やゴミで、「空き地」の景観は年々損なわれてきているとのことです。
川辺川ダムと同様、「流水型」となった熊本県の立野ダムも、国土交通省九州地方整備局が造ったダムです。川辺川ダムは前例のない大規模な「流水型ダム」となる予定で、立野ダムの貯水量の10倍とのことですが、五木村民は流水型ダムの先例として立野ダムに注目している様子が記事から伝わってきます。
◆2024年2月8日 熊本朝日放送
https://news.goo.ne.jp/article/kab/region/kab-20240208-00008933.html
ー運用開始近づく 立野ダムを五木村住民が視察ー
立野ダムの試験湛水が8日終了しました。ダムに水が貯まると環境にどんな影響があるのか。同じ流水型ダムによる水没予定地の熊本県五木村の住民らが現地を訪れました。先月15日に始まった白川上流の立野ダムの試験湛水は今月4日に最大貯水量の1010万立方メートルに達しました。その後3日間かけて放水し、ダムの下流側の川の水位は上昇しましたが、8日正午に水位は平常時に戻りました。試験湛水によってダム本体の安全性を確認できたとしています。8日は、川辺川に計画されている流水型ダムの水没予定地である五木村の住民と国の川辺川ダム砂防事務所の職員らが現地を訪れ、満水時の写真と比較しながら立野ダム周辺を視察しました。
(五木村の住民)
「一回ぐらいの試験湛水ですから、そう悪影響は出ていないと思うわけですが、これを繰り返していくと、かなり環境破壊もありはしないかと感じます。五木の場合はもっとこれよりひどくなりはしないかと」
同じ流水型ダムでも川辺川に建設されるダムの最大貯水量は立野ダムの10倍となる予定で、平常時はできるだけ水を貯めずに運用するとしていますが、村の一部が水没することへの住民の懸念について国の担当者はー
(川辺川ダム砂防事務所 齋藤正徳事務所長)
「やはり百聞は一見にしかずということで、しっかりこの先行事例を見て頂いて、我々も川辺川の方でデータを取って、その結果に基づいていろんな予測をやっていく」
2つの流水型ダムの担当者は、今後も情報を共有していくとしています。
(川辺川ダム砂防事務所 齋藤正徳事務所長)
「データも参考にしながら計画を深めていきたいと考えています」
立野ダムは、4月からは本格運用を開始する予定で環境への影響については運用開始後も調査を続けるとしています。
◆2024年2月6日 熊本朝日放送
https://news.yahoo.co.jp/articles/efca9a92facca7e1d6abe7a1d990cf9e17585fc4
ーダム問題 五木村が12項目の要望を申し入れ 熊本ー
国が熊本県の川辺川に建設を計画している流水型ダムについて、賛否を表明していない五木村の村長らが、県に12項目の要望を申し入れました。
6日、五木村の木下丈二村長と村議会の代表が蒲島知事と面会し、要望書を手渡しました。
(五木村 木下丈二村長)
「二度にわたり、村づくりの方向転換を余儀なくされた。村が掲げる、光輝く五木村の実現に向けた歩みを確実なものにするため、国・県の支援が必要不可欠です」
川辺川で進むダム計画を巡っては、蒲島知事が2008年に白紙撤回、2020年の熊本豪雨後に流水型ダムの建設要請と方針転換を繰り返してきた歴史があります。
要望書では、村の環境に与える影響を不安視する声が大きいことを訴えたうえで、12項目に分け、洪水・土砂対策など、五木村の安全の確保や人口減少への対策などを求めています。
ダム問題について蒲島知事は、任期中の来月までに五木村と相良村から同意を得たいとしていますが、
(木下村長)
「村としては、まだまだ今回の要望事項の回答も含めて、総合的に村の判断として、知事の任期中如何というのは関係ないと思っております」
ダム建設予定地の相良村も五木村と同じく、ダム建設に対する賛否をまだ表明していません。