ジャーナリストのまさのあつこさんが「川から考える日本」と題してJBpress に掲載してきた連載でダムの緊急放流の問題を取り上げていますので紹介します。
今回の舞台は愛媛県を流れる肱川です。2018年夏の西日本豪雨では、この肱川にある国直轄の二つのダムが緊急放流を実施して肱川が氾濫、8人の死者が出ました。まさのさんがこの記事で取り上げているのは上流側の野村ダムの緊急放流です。
ダムの緊急放流の危険性を指摘する声に対して、ダムの治水効果を称賛する人々は判で押したように、同じ反論を繰り返します。いわくー「緊急放流はダムがないのと同じ状態になるだけで、ダムがあるから犠牲者が出たわけではない。ダムは満杯になるまで洪水を貯留して避難する時間を稼ぐのだから、洪水対策として有効だ。逃げなかった住民が悪い。」
しかし具体的な事例を見ると、緊急放流は人為的な操作で、自然の洪水とは大きく異なることがわかります。緊急放流にはあらかじめダム事業者(野村ダムの場合は国土交通省四国地方整備局)が決めたルールがあり、現場の担当者はこのルールに沿って緊急放流を行います。
また、豪雨はしばしば夜中に襲うもので、野村ダムの場合も緊急放流が行われたのは早朝でした。緊急放流実施の知らせは殆どの流域住民には伝わっていませんでした。
★【川から考える日本】豪雨で凶器と化す川「誰の何のためのダムか」
5人の命を奪ったダムの「緊急放流」、降水量に見合った運用していればこんな悲劇は…(まさのあつこ)