リニア新幹線のトンネル工事の影響で岐阜県瑞浪市の山間の集落で地下水位が低下していることをメディア各紙が一斉に報じています。
報道によれば、瑞浪市の地下を東西に走る日吉トンネル(延長14・5キロ)の掘削工事によって最初に涌水が発生したのは昨年12月。今年2月にはJR東海が所有する井戸で地下水の低下を確認、今月には最大40メートルの水位低下を確認しているとのことです。
トンネルの工事現場では今も涌水が流れ出ていますが、JR東海は工事を続けるとしており、生活用水に使ってきた井戸水が枯渇した住民らには補償する意向とのことです。
リニア新幹線の8割以上の区間はトンネル工事を行わなければならず、今後も地下水低下を含め、悪影響が出るのは必至です。八ッ場ダム事業もそうでしたが、「想定外」の難工事に対処するために際限なく事業費が膨らんでいきそうです。
各社の記事をまとめました。
◆2024年5月14日 共同通信
ー岐阜で井戸水位低下、工事影響か リニアトンネル掘削ー
JR東海は14日、リニア中央新幹線のトンネル掘削工事を行っている岐阜県瑞浪市で、井戸など14カ所で水位の低下を確認したと明らかにした。他に地下水に影響を与えるような工事は行われていないため、同社はトンネル掘削が影響した可能性があるとしている。掘削工事は今後も慎重に続けるという。
同社によると、計32カ所の水源やため池、個人の井戸を調査したところ、うち14カ所で水位が低下し、一部は使用できない状況であることが分かった。
昨年12月と今年2月中旬、瑞浪市大湫町でトンネルの掘削中に湧水が発生。2月下旬、同社が設置している水位観測用の井戸で低下を確認したのを受け、調査を行った。
◆2024年5月15日 NHK岐阜
ーリニアトンネル工事現場周辺で井戸の水位低下 JR東海が対策ー
岐阜県瑞浪市にあるリニア中央新幹線のトンネル工事の現場周辺で、井戸の水位が低下するなどしていることがわかり、JR東海は工事の影響とみて対策を進めています。
JR東海によりますと、去年12月中旬とことし2月中旬に、瑞浪市の日吉トンネルの掘削工事現場の2つの区間で地下水が湧き出ました。
その後、瑞浪市大湫町にあるJR東海が設置した観測用の井戸で、5月上旬には最大でおよそ40メートル水位が低下しました。
周辺でも個人の井戸9か所と、およそ40戸に水を供給している共同水源3か所、それにため池の2か所で水位の低下を確認し、水が枯渇したところもあったということです。
JR東海は、トンネル工事の影響とみて住民に説明するとともに、応急的な対策として水の量が減るなどした家庭に対して上水道の水を井戸に引き込む工事を行っています。
トンネル工事の現場では、今も地下水が湧き出ていますが工事は継続しているということです。
JR東海は「早急に上水道の工事を進めるとともに、引き続きトンネル掘削との関係を調査して真摯に対応します」とコメントしています。
◆2024年5月15日 岐阜新聞
ーリニア工事で水位低下、岐阜・瑞浪市内の井戸など14カ所 JR東海認める「早急に上水道工事進める」ー
リニア中央新幹線のトンネル掘削工事が進む岐阜県瑞浪市で、大湫(おおくて)町内にある水道の共同水源や井戸など14カ所で水位の低下が起きていることが14日、JR東海や県などへの取材で分かった。同社は「リニア工事の影響」と認めた上で13日夜に地元説明会を開き、井戸から上水道への切り替えや新たな水源確保などを同社の費用で行う応急措置について説明した。掘削工事は継続するという。県は同社に対し、原因の究明、抜本対策について報告するよう求めた。
同社によると、瑞浪市大湫町の地下には同市と恵那市武並町にまたがる日吉トンネル(延長14・5キロ)が通る計画になっており、掘削工事は既に町内へと達している。今年2月下旬、同社が掘削予定地にある観測井戸3カ所の水位が下がっていることを確認したため、地域住民の了解を得て町内での調査を開始。共同水源3カ所、個人方の井戸9カ所、ため池2カ所でそれぞれ水位が下がっていた。
同社は、昨年12月中旬と今年2月中旬に町内に掘られたトンネル内で湧水が発生したほか、周辺で他に地下水へ影響を与えるような大規模な工事が行われていないことなどから「リニア工事の影響と考えられる」と判断。今月に入って県や市に調査結果を報告するとともに、住民向けに説明会を開いた。同社によると、共同水源1カ所が使用できなくなっているため新たに水源となる井戸を掘削するほか、井戸水の減水が確認された家庭に対しては上水道を使うための工事費や水道加入料、維持管理費の増加分を同社が負担することなどを説明したという。
ーリニア工事で井戸枯渇、ため池にひび…住民「元に戻して」 岐阜・瑞浪市、井戸水の家庭もある集落ー
リニア中央新幹線のトンネル掘削工事の影響で、14日までに井戸などの水位が低下していることが明らかになった岐阜県瑞浪市大湫(おおくて)町。井戸水を利用する家庭もある山あいの集落では、今年に入ってから水位低下が見られ始めた。リニア工事の負の影響に住民はショックを隠せず、「環境を元に戻して」と望みを口にした。
大湫町区長会長の男性(67)は、本紙の取材に「まさかこんなことが起きるとは。ライフラインで最も大事な水。元に戻してほしい」と訴えた。男性は1月、リニア中央新幹線日吉トンネルの工事を見学した際、トンネルからあふれ出る湧き水に、これは大湫町から流れ出ているのではと懸念した。その1カ月後にJRが設置している観測井の水位が減少していて、同町内の一つの井戸が枯渇していると連絡が入った。
3月の大湫町の北、西各区の総会で、JR側から「地下水の水位の低下はトンネル工事の影響が考えられる」と告げられ、住民は工事の中止と水源確保を要求した。
住民女性は、飲み水に使っていた自宅の約30メートルの井戸について、約1カ月前に水位が下がっていることを確認。「今は水が出なくなった」と話し、水道に切り替えたという。ある男性は、近くのため池について「水がなくなるなんて初めて」と語った。
付近の水田について、住民男性は「近くの川から水を引き影響ないはずだが、田んぼの水が早く引いていく気がする」と心配そうに水田を見つめていた。
水野光二瑞浪市長は「早急に住民の意見を聞く」とした上で、「JRにきちっとした対応を求めていく」と答えた。
◆2024年5月15日 読売新聞
ー岐阜の井戸やため池で水位低下、リニア「日吉トンネル」工事影響か…JR東海が調査と補償へー
JR東海は、リニア中央新幹線のトンネル掘削工事が行われている岐阜県瑞浪市で、井戸やため池など14か所で水位が低下していたことを明らかにした。同社は工事が影響した可能性もあるとして因果関係を調べるとともに、水源確保や補償などの対応を進める。工事は今後も続けるという。
JR東海によると、今年2月、同社が同市 大湫(おおくて)町に設置した観測用の井戸で水位低下を確認。周囲の井戸やため池計32か所を調査した結果、約40世帯の共同水源3か所、個人宅の井戸9か所、ため池2か所の計14か所で水位の低下が判明した。一部では水が枯れてしまっていたという。
同社は瑞浪市の地下を東西に通る「日吉トンネル」の工事を進めており、今年に入り、水位の低下した水源近くまで掘削が進んでいた。掘削現場では、昨年12月と今年2月中旬に湧水が発生していたという。
これまで同社は個別に住民に対応してきたが、地元の要望を受け13日夜、説明会を開き、今後の対策を説明した。説明会では井戸水の上水道への切り替え工事や、新しい井戸や給水槽の設置などを提案。一部は着工済みで、工事費などは同社で負担する。14日には同市に同様の内容を伝えた。
JR東海は「早急に上水道工事を進めるとともに、引き続きトンネル掘削との関係を調査して 真摯しんし に対応してまいります」とコメント。瑞浪市の水野光二市長は「生活に支障が出ないよう地元の意見、要望をまとめ、JRに求めていきたい」と話した。
◆2024年5月15日 朝日新聞
ーリニア工事原因か、岐阜・瑞浪で水位低下 JR東海、14カ所で確認ー
リニア中央新幹線のトンネル掘削工事が近くで進む、岐阜県瑞浪市の大湫(おおくて)地区の井戸やため池などで水位の低下が相次いでいることがわかった。JR東海は14カ所で水位低下を確認し、トンネル工事による湧水(ゆうすい)が原因とみて、13日に住民説明会を開いた。代替の水源確保や補償などの対応を進める一方で、状況を見ながら、リニアの工事は進める予定だ。
JR東海によると、水位低下を把握したのは2月下旬。工事の影響を調査するために設置した水位観測用の穴で水位低下がみられたという。
その後、井戸に水位計を設置するなどして調査し、個人用の井戸9カ所、水源・ため池5カ所で水位の低下が確認されたという。
リニアの中間駅ができる中津川市から名古屋方面に向かう途中の位置にあたる、大湫町の地下を貫く形でリニアの日吉トンネル(南垣外工区、全長7.4キロ)の工事が行われている。現在、地域住民が暮らす地区の手前までトンネルが掘り進められているという。
JR東海はリニア工事と水位低下の因果関係は確認できていないものの、「他に工事をやっていないので、(水位低下は)リニアの工事によるものと考えている」(JR東海広報部)として、住民らへの補償交渉を進めている。
13日夜には大湫町の住民説明会を開いた。井戸水を上水道に切り替える工事をJR側の負担で実施するなどの対策を説明した。また、今後、減水した水源の代替地を確保するため、新たに2カ所で井戸を掘るほか、給水槽も新設するという。
リニア中央新幹線は品川―名古屋(約285.6キロメートル)を最速40分で結ぶもので、工事区間のうち86%がトンネル区間となっている。(米田怜央、寺西哲生)
水が完全に抜け池の底ひび割れ、住民「こんなの見たことがない」
江戸時代に旧中山道の宿場町として栄えた瑞浪市大湫町の集落に、異変が起きたのは今年3月ごろ。田や森林に囲まれた旧街道沿いの民家で、風呂や洗濯など生活用水として使っている井戸から地下水が徐々に減少し始めた。
記者が5月上旬に集落を訪れてみると、町内のため池の水は完全に抜け、日照りにあったかのように、深いひび割れが出来ていた。池の底には手のひらほどの大きさの二枚貝が転がっていた。
ほかにも異変はあった。これまで枯れたことがないと伝わる「天王様の井戸」も完全に干上がり、井戸の底に出来たひび割れが見えた。
これらのため池や井戸について、JR東海は13日にあった住民説明会の資料のなかで、「水位低下が確認された」としている。
大湫町の「くて」とは、湿地を意味する。5月発行の町の広報紙によると、2月下旬に地下水を水源とする簡易水道組合の水源地の井戸が枯渇し、各家庭の井戸の水位が低下していると判明したという。
地元住民の80代男性は「たまっている水が、こんなふうに枯れるのは、見たことがない」。
13日にあった住民説明会の冒頭、工事責任者は、集まった人たちに「誠に申しわけございません」と謝罪。質疑応答の中では、トンネル工事を一度止めて、検証をすべきだ、という厳しく指摘する声も上がったという。40代男性は「田んぼの水張りに不安を感じている人は多い」と話す。(戸村登)