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リニア・トンネル工事による水位低下(続報)、工事いったん中止し地質調査へ

 さる5月14日、JR東海がリニア新幹線のトンネル工事によって岐阜県瑞浪市で昨年12月以来、地下水位が低下していることを公表したことが報道されました。この時点では、工事は引き続き行うとの説明でしたが、二日後の16日になって、「一部トンネルを掘り進めた上で工事を中断する」(毎日新聞)と発表しました。
 井戸やため池の水枯れなど、生活に深刻な影響が起きている地元だけでなく、工事ルート周辺自治体にもトンネル工事への不安は広がっており、国土交通省はJR東海に適切な対応を求めています。新たな報道によれば、トンネル工事による残土の受け入れを検討していた瑞浪市の隣の岐阜県御嵩町は、JR東海に対して残土に関する協議中断を申し入れたとのことです。
 一方、静岡県では今月10日に辞職した川勝平太・前知事がリニアのトンネル工事が地下水に甚大な影響を及ぼすことを懸念して、これまで県内の工事を許可してきませんでしたが、ここで退任することになり、今月26日の知事選ではリニア新幹線の工事に支障のない知事が誕生する可能性が濃厚です。
 長年、リニア新幹線問題を取材しているジャーナリストは、リニアのトンネル工事による水枯れはこれまでも各地で起きていながら、これまでマスコミが殆ど報道してこなかったと指摘しています。川勝知事という障害が取り除かれた今、リニア新幹線は後戻りできない状況になっていることが逆に問題を表面化させることになっているのでしょうか。

◆2024年5月16日 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20240516/k00/00m/020/251000c
ーJR東海社長「大変な心配と迷惑」 水位低下でリニア工事中断、調査へー

 「地域の皆さんに大変な心配と迷惑をかけている」。リニア中央新幹線のトンネル掘削工事が行われている岐阜県瑞浪市で井戸などの水位が低下した問題について、JR東海の丹羽俊介社長は16日の定例記者会見でこう述べた。同社は工事を一時中断してボーリング調査を実施する方針だが、地域住民には不安が広がり、今後は地域や周辺自治体の理解がさらに求められる。

 同社によると、同市大湫(おおくて)地区では地下を通る日吉トンネル(全長7・4キロ)の工事が行われ、水位が低下した水源近くまで掘削が進んでいた。同社が水位の低下を把握したのは2月下旬で、個人用の井戸9カ所、水源・ため池5カ所の計14カ所で低下を確認した。一部では水枯れで使用できない状況だった。

リニア工事中断、対応策を説明
 掘削現場では昨年12月と今年2月中旬に湧水(ゆうすい)が発生。昨年12月の湧水は止まったが、2月中旬の湧水はトンネルの切り羽(工事の先端部分)から約50~100メートル手前の区間で今も毎秒20リットル程度の水量が出続けており、丹羽社長は薬液注入で止水する方針を明らかにした。

 また応急措置として、井戸水を上水道に切り替える工事を順次進め、今後の工事が水田の地下を通ることから、深さ約15メートルの新たな観測用の井戸を設置し、代替水源を確保する。工事終了後、家庭の井戸が復旧すれば、再び井戸水を使えるように配管工事を行う。一方、復旧しなかった場合は配管を埋設するなど本格的な上水道への切り替えを実施し、水道料金や維持管理費の増額分は同社で負担するという。

 同社は、一部トンネルを掘り進めた上で工事を中断するとしている。地元の大湫町区長会長の纐纈(こうけつ)富久さん(67)は、毎日新聞の取材に「なぜすぐに中断しないのか疑問はある。とにかく原因究明に努めてほしい」と語気を強めた。丹羽社長は会見で今後について「専門家の意見を聞きながら、地域住民や自治体に状況を逐一報告し、真摯(しんし)に対応していく」と話した。【真貝恒平】

リニア工事の残土処分場巡る協議は中断
 岐阜県御嵩町は16日、同県瑞浪市での水位低下問題を受け、リニア中央新幹線工事で生じる残土の処分場整備計画を巡るJR東海との協議を中断すると発表した。中断期間は「原因究明と対策などが明らかになるまで」としている。【太田圭介】

◆2024年5月16日 NHK
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240516/k10014451571000.html
ー岐阜県内のリニアトンネル工事 いったん中断し地質調査へー

 岐阜県内にあるリニア中央新幹線のトンネル工事の現場周辺で井戸などの水位が低下している問題で、JR東海はトンネル掘削のルートがこの先、水田が広がる盆地の地下を通るため、その手前でいったん工事を中断して地質調査を行う方針を示しました。

 岐阜県瑞浪市にあるリニア中央新幹線のトンネル工事の現場では2つの区間で地下水が湧き出し、周辺にある井戸やため池、共同水源の水位の低下が確認されました。

 この問題についてJR東海の丹羽俊介社長は16日の記者会見で「地域の皆様に大変なご心配とご迷惑をおかけしている。地域の皆様や関係自治体ときめ細かくコミュニケーションをとり真摯(しんし)に対応していく」と述べました。

 そのうえで、今後の工事の進め方について、丹羽社長はトンネル掘削のルートがこの先、水田が広がる盆地の地下を通るため、その手前でいったん工事を中断して地質調査を行う方針を示しました。

 さらに専門家の意見を聞きながら工事を進めるにあたっての追加対策が必要かどうかを検討する考えを示しました。

 一方、トンネル掘削の現場では、今も毎秒20リットル程度の地下水が湧き出していることから、JR東海では地盤に薬液を注入するなど水を止めるための対策の実施も急ぐことにしています。

 岐阜 御嵩町 残土の協議一時停止を申し入れ
 リニア中央新幹線のトンネル工事の残土置き場についてJR東海と協議していた岐阜県御嵩町は隣の瑞浪市で井戸などの水位が低下している問題の原因や対策が明らかになるまで残土の協議を一時停止するよう申し入れました。

 リニア中央新幹線のトンネル工事の残土について、御嵩町では基準を超えた自然由来の重金属が含まれる残土は町有地への搬入を認めず、それ以外の残土については受け入れる方針を決め14日からJR東海と協議を始めていました。

 こうした中、隣の瑞浪市のリニアのトンネル工事現場の近くで個人の井戸やため池などの水位が低下した問題が明らかになり、御嵩町は、16日、残土の協議を一時停止するようJR東海に文書で申し入れました。

 この中で、御嵩町は、町内には、瑞浪市と同じように井戸水や農業用水を利用している住民がいるため、住民の不安が払拭される必要があるとしています。

 また、御嵩町は井戸などの水位が低下している問題を報道で知ったとしていて、水位低下の原因と対策に加えて、連絡体制の改善方法が明確になるまで協議を一時停止するよう求めています。

◆2024年5月17日 岐阜新聞
https://www.gifu-np.co.jp/articles/-/386834
ーリニア、トンネル掘削工事一時中断へ JR東海、水位低下の岐阜・瑞浪市で湧水調査ー

 リニア中央新幹線のトンネル掘削工事が進む岐阜県瑞浪市大湫(おおくて)町で井戸などの水位が低下した問題で、JR東海は16日、同町を貫く日吉トンネルの掘削工事を一時中断し、ボーリング調査を行うと発表した。一部を掘り進めた地点でいったん工事を止め、地質や湧水の状況を詳細に調査する。

 名古屋市の本社で記者会見した丹羽俊介社長は「(水位低下は)工事の影響による可能性が高い」とした上で「地域の皆さまに大変なご心配とご迷惑をおかけしている」と述べた。中断する期間や、ボーリング調査の開始時期は示せないと説明した。

 湧水は同町の集落から数百メートル南西の日吉トンネルの工事現場2カ所で確認された。昨年12月中旬には最大で毎秒40リットル、今年2月中旬には毎秒20リットル程度の湧水が発生。その後の調査で、個人方の井戸9カ所など計14カ所で水位低下が確認されたほか、町内のゴルフ場の井戸など、影響が出ている場所は他にも複数あるとみられる。湧水のうち毎秒20リットル程度の場所は現在も続いている。

 JRは薬液注入など湧水を低減させる対策を実施する。また、水位が低下した地域の代替となる水源として、新しい井戸を数日以内に掘り始めることなどを明らかにした。丹羽社長は「岐阜県をはじめさまざまな関係者と密に情報交換を行い、経過を見ながら進めていきたい」と話した。

 県は、JR側から詳細な報告を受けた上で、今後の対応を判断するとした。県環境管理課の担当者は取材に「調査をした上で対策をしっかり考えてもらい、折々で報告をもらいたい」と説明。また、できるだけ早く県による有識者会議を開く方針を明かし、「専門家の意見を聞きながら中身をよく精査し、今後の対応を検討したい」と述べた。

2024年5月17日 NHK岐阜 NEWS WEB
https://www3.nhk.or.jp/lnews/gifu/20240517/3080013515.html
ーリニアトンネル工事水位低下 斉藤国交相原因究明と説明求めるー

 岐阜県内にあるリニア中央新幹線のトンネル工事の現場周辺で、井戸などの水位が低下している問題で、斉藤国土交通大臣は、JR東海に対し、速やかな原因究明と住民などへの丁寧な説明を求めました。

岐阜県瑞浪市にあるリニア中央新幹線のトンネル工事の現場では、2つの区間で地下水が湧き出し、周辺にある井戸やため池などの水位の低下が確認され、JR東海は、トンネル掘削のルートがこの先、水田が広がる盆地の地下を通るため、その手前でいったん工事を中断して地質調査を行う方針を示しています。
この問題について、斉藤国土交通大臣は、17日の閣議のあとの記者会見で「井戸水やため池の水位低下について、JR東海からリニア中央新幹線のトンネル工事の影響である可能性が高いとの報告を受けている。会社に対し、速やかに原因究明を行うとともに、地元住民の方々などへの丁寧な説明を求める」と述べました。
その上で「国土交通省としても会社が現場を調査した上で適切な処置をとっているかどうか、引き続き指導や助言を行っていく」と述べました。

◆2024年5月17日 NHK信州 NEWS WEB
https://www3.nhk.or.jp/lnews/nagano/20240517/1010030823.html
ーリニア中央新幹線 長野県内沿線でも地下水への影響懸念する声ー

 岐阜県内にあるリニア中央新幹線のトンネル工事の現場周辺で井戸などの水位が低下している問題について、JR東海は工事を中断して地質調査を行う方針を示しました。
 これを受けて飯田市など長野県内の沿線でも地下水に影響がないよう、工事の進め方の検証やこれまで以上に丁寧な説明を会社側に求める声が強まるものとみられます。

 岐阜県瑞浪市にあるリニア中央新幹線のトンネル工事の現場では2つの区間で地下水が湧き出し、周辺にある井戸やため池、それに共同水源の水位の低下が確認されました。
 これについてJR東海が16日会見を開き、問題となっている現場では、今後、トンネル掘削のルートが水田が広がる盆地の地下を通るため、その手前で工事を中断して地質調査を行う方針を示しました。
 そのうえで、専門家の意見を聞きながら、工事を進めるにあたっての追加対策が必要かを検討する考えを示しました。
 こうした中、長野県内はルートの9割以上がトンネルで、このうち飯田市では2つのトンネル工事が計画されています。
 飯田市によりますと、水資源対策として工事の開始前から河川などの水量の調査が行われていて、これまで、水量は減少していないということです。
 一方で、来月以降、県内の沿線各地では、今後の工事のスケジュールなどに関するJR東海の住民説明会が開かれる予定です。
 沿線の住民の中には地下水への影響を懸念する人もいることから、工事の進め方の検証やこれまで以上に丁寧な説明を会社側に求める声が強まるものとみられます。