八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

吾妻線の不採算区間(長野原草津口~大前)、廃線を検討

 利根川水系の吾妻川に沿って走っているJR吾妻線は、ダムの上流端にある長野原草津口駅から終点の大前駅まで13.3キロの区間(長野原草津口ー群馬大津-羽根尾ー万座・鹿沢口ー袋倉ー大前)が不採算であるとして、廃線が検討されています。不採算とされる区間のうち、長野原草津~羽根尾は長野原町、万座・鹿沢口~大前は嬬恋村になります。この区間の乗客の多くは、吾妻線で高校に通学している若い世代です。嬬恋村では、村民の利用を無料にするなどの施策を打ち出していますが、沿線の人口減少と高齢化が進む中、抜本的な解決策は見当たらないのが実情です。
 一方、八ッ場ダム事業では、ダムの水没区間を走っていた吾妻線の付替え工事費用として370億円以上が投じられました。付替え費用は国直轄のダム事業からの支出で、JR東日本の負担ではなかったとはいえ、人口減少時代、都市用水の需要は年々減少し、八ッ場ダムは将来ますます不要になります。国の在り方、地域の在り方として、ダムによる付替え工事費の何分の一かでもあったなら、吾妻線の存続が可能になったのではないでしょうか。採算が合わないからと本数を減らすことで利便性が損なわれ、利用者がさらに減り、人口も減少するという悪循環を断ち切るためには、私たちの生活を支えるライフラインの在り方を根本から問い直す必要があります。

◆2024年5月23日 NHK首都圏ナビ
https://www.nhk.or.jp/shutoken/article/021/14/
ー“赤字は年間4億円超” JR吾妻線 長野原草津口~大前の今後は 沿線自治体などが初の協議ー

 群馬県の渋川と大前を結ぶJR吾妻線。草津温泉や四万温泉などへの観光輸送に加え、地域の生活も支えてきました。しかし、長野原草津口と大前の間は、年間4億円を超える赤字が課題となっています。この区間について、沿線の自治体などが将来のあり方を協議する初めての会議が23日に開かれました。

吾妻線とは
 吾妻線は群馬県渋川市の渋川駅と嬬恋村の大前駅を結ぶ55kmあまりの路線です。地域の生活を支えるだけでなく、草津温泉、川原湯温泉、四万温泉、万座温泉、鹿沢温泉などへの観光輸送の役割を果たしてきました。渋川駅から途中の長野原草津口駅までの間は上野からの特急も走り、概ね1時間に1本程度列車が運転されています。
しかし、今回、協議の対象となっている長野原草津口駅と大前駅の間約13kmは、2022年度は4億6000万円の赤字になっています。特急の運行がなく、普通列車の本数も少なくなり、特に万座・鹿沢口駅と大前駅の間は1日4往復のみの運転となっています。
JR東日本はことし(2024年)3月、長野原町と嬬恋村、それに群馬県に、将来の路線のあり方を
協議することを申し入れていました。

協議会の初会合で話し合われたことは
 きょう(5月23日)は、2つの自治体とJR東日本の担当者などが出席して、初めての会合が、冒頭以外およそ1時間、非公開で行われました。この中では、現在の利用状況などを共有したうえで、今後、この区間の利用客のおよそ8割を占める高校生とその家族などに、利用実態についてアンケートを行う方針などが話し合われたということです。次の会議の日程は未定ですが、
今後も協議を続けるとしています。

長野原町 未来ビジョン推進課 佐藤忍課長
「会議で議論されることが地域の活性化に結びつくというスタンスで取り組んでいきたい」

嬬恋村 未来創造課 熊川明弘課長
「村は吾妻線の存続を希望しているが、長野原町と協力して利便性が向上する交通体系を
検討したい」

交通政策に詳しい 前橋工科大学 吉田樹特任教授(会議の座長)
「今の鉄道がこの地域の役に十分、立てていないのではないかという考えがある。この地域にどういう役割を果たしているのかを検証し、最適なあり方を検討していく」

嬬恋村は「利用促進策」を発表
 今回、協議の対象になった区間のある嬬恋村は、吾妻線の利用客を増やすことで路線の存続を図りたいとして、来月(6月)から村民を対象に一部区間の運賃を全額補助する取り組みを始めます。その内容です。

〇補助の対象
嬬恋村に住所を有する人が、渋川と大前の間で、村内にある「袋倉」「万座・鹿沢口」「大前」の3駅のいずれかで乗り降りした場合。
吾妻線が乗り入れている上越線の新前橋などを利用した場合は、乗り降りした村内3つの駅から渋川までの分の運賃を補助。ただし、通勤・通学は対象外となっています。

〇補助を受けるには
利用後の30日以内に申請書と乗車を証明する書類を村役場に提出することで指定の口座に
補助金が振り込まれます。

知事やJR東日本高崎支社長は
吾妻線の将来について、群馬県の山本知事やJR東日本高崎支社の樋口達夫支社長は記者会見で次のように述べました。

群馬県 山本知事
「地域にとって最適な交通サービスを選択するために関係者で議論を行うものだ。大事なことは、地域住民の移動に便利で快適なものにすることだと認識している。その認識のもとで県としては中立的な立場で調整に努めていきたい」

JR東日本高崎支社 樋口達夫支社長
「関係者に集まってもらい、議論が始まることを大変うれしく思っている。これからの未来に向けてよい議論ができればいいと思っている」

◆2024年5月24日 上毛新聞 紙面より
https://www.jomo-news.co.jp/articles/-/468028?utm_term=Autofeed&utm_medium=Social&utm_source=Twitter#Echobox=1716500029
ー沿線高校生の実態調査、在り方協議初会合で合意 JR吾妻線・長野原草津口ー大前間ー

 利用者の減少が続き不採算路線となっているJR吾妻線の長野原草津口―大前間(13.3キロ)について、今後の在り方を検討する沿線地域交通検討会議の初会合が23日、群馬県長野原町役場で開かれた。同区間は通学定期利用者が約8割を占めることを踏まえ、沿線の長野原町、嬬恋村の高校生らを対象とする実態調査を行うことで合意した。高校世代の交通手段を把握し協議に役立てる。

 会議はJR東日本、県、沿線2町村、国土交通省関東運輸局、有識者で構成。沿線地域の現状や課題を共有し、鉄道の存続や廃止といった前提を置かず地域の交通体系の在り方について議論するとしている。

 実態調査は良好存在中の高校生、長野原高と嬬恋高に通学する生徒、遠方の学校に通うため下宿している高校生やその家族らを対象に行う。吾妻線の利用状況に加え、車での送迎など鉄道以外の交通手段なども調べる。(以下略)

◆2024年5月16日 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC160UM0W4A510C2000000/
ー群馬県嬬恋村、村民のJR吾妻線運賃全額補助 利用促すー

 群馬県嬬恋村は6月1日から、村民がJR吾妻線の村内3駅で乗降した場合に、運賃を全額補助すると発表した。吾妻線は長野原草津口(長野原町)―大前(同村)間で不採算が続き、JR東日本高崎支社と群馬県など沿線自治体が存廃の前提を置かない交通体系のあり方について協議を行う予定。嬬恋村は村民に鉄道利用を促し、同路線の維持を狙う。

補助対象区間は大前(同村)―渋川(渋川市)間。村内の大前、万座・鹿沢口、袋倉の3駅いずれかで村民が乗降した際に、同区間の片道または往復の普通運賃を補助する。補助を希望する場合は嬬恋村ホームページで申請書をダウンロードし、乗車を証明する領収書などとともに提出する。補助制度の予算額は22万8000円としている。

嬬恋村未来創造課は「補助制度をきっかけに村民に鉄道の利便性に気づいてもらい、利用客を増やしたい」としている。

◆2024年3月22日 上毛新聞
https://www.jomo-news.co.jp/articles/-/437074?utm_term=Autofeed&utm_medium=Social&utm_source=Twitter#Echobox=1711102162
ー不採算の吾妻線区間 JR東日本が群馬県などに在り方協議を申し入れ 「このままでは存続可能ではない」ー

 JR東日本高崎支社は22日、利用者が減少し不採算路線となっている吾妻線の長野原草津口-大前間(13.3キロ)の今後の在り方を協議する場に参加するよう、群馬県と長野原町、嬬恋村に申し入れたと発表した。沿線人口のさらなる減少が見込まれ、現状のままでの存続は困難と判断した。JR東が不採算路線の協議を地元自治体に申し入れるのは久留里線(千葉県)に次いで2例目。

 記者会見した樋口達夫高崎支社長は「このままでは存続可能ではないという問題意識がある」とした上で「利用者の利便性が向上する交通体系の在り方を関係者とともに総合的な観点から検討したい」と述べた。被災した路線でバス転換や地元自治体が鉄道設備を保有する「上下分離」方式を導入した事例があるが「特定の交通モードが腹案にあるわけではない」と強調した。

 JR東日本は21日に山本一太知事と萩原睦男町長、熊川栄村長に文書で申し入れた。今後の協議日程は未定。他に参加を呼びかける団体はこれから検討する。