明日(10/30)午後4時より、東京高裁101号法廷において、千葉県の森田知事を提訴した八ッ場ダム住民訴訟の判決があります。
この裁判に取り組む八ッ場ダムをストップさせる千葉の会によれば、判決後、弁護士会館一階ロビーで報告集会が開かれるとのことです。
★東京高等裁判所の地図
http://www.courts.go.jp/tokyo-h/about/syozai/tokyomain/index.html
★弁護士会館の地図
http://www.toben.or.jp/know/access.html
今朝の東京新聞千葉版に関連記事が載っていますので転載します。
◆2013年10月29日 東京新聞千葉版
http://www.tokyo-np.co.jp/article/chiba/20131029/CK2013102902000150.html
-八ッ場を止めたい住民訴訟・高裁判決を前に <上>提訴から9年訴え続け 負担500億円 メリットなし 「ダムは県民の問題なのに」ー
国が建設を進める八ッ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)の事業費を県が支出するのは違法として、県民四十八人が県に支出差し止めを求めた訴訟の控訴審判決が、三十日に東京高裁で言い渡される。住民側が「ダムは治水や利水に効果がなく、必要性の検証が不十分」と提訴して、間もなく九年。その訴えとは何か。高裁判決を前に二回にわたり振り返る。
県議会九月定例会の最終日、二十二日。八ッ場ダムをめぐる一つの議案と、一つの請願が審議された。
議案は、ダムの完成時期を二〇一五年度から一九年度へと四年間延長する国の方針に、同意する内容。国は今年八月に方針を示したが、事業費の一部を負担する県は議会の承認を得る必要があった。
一方、請願はダムの推進に待ったをかけ、「県人口が減少に転じ水の需要は減っている。国は事業費を四千六百億円とするが、これから増額される恐れが高い」と主張する。
「議案に賛成の方は起立願います」。議場では河上茂議長の声と同時に、自民、民主、公明など六会派の議員八十一人が立ち上がり、賛成多数で可決。請願は不採択となった。議案に反対したのは共産や市民ネット・社民・無所属の八人だけだった。
請願を出した原告の一人で元佐倉市議の中村春子さん(69)は、傍聴席でため息を漏らした。「議員は国が造るものや、打ち出す方向性に何も考えず従うだけ。県民が何を言っても心に響かない」
中村さんがダムに疑問を抱いたのは、二十五年近く前。家庭からの排水をきれいにする市民運動に取り組んでいた。同市の水道水は八割が地下水、残り二割が利根川の表流水で「水がおいしい」。
ところが、ダムが完成すれば水のブレンドの比率は正反対となり、味が落ちるだけでなく、水道料金も一・三倍に。調べると、県の負担金は大きいうえ、国が言うような治水、利水の効果があるかは不明確だった。
市民団体を結成し、住民監査請求をへて〇四年十一月に千葉地裁へ提訴。一〇年一月に地裁は住民側の訴えをすべて退けたため、控訴していた。
地裁の判決前、政権が民主党に変わった。「八ッ場ダムは中止する」という言葉に胸が躍った。事業は一時凍結されたが結局、一一年末に建設継続に転じる。「あまりにも唐突すぎた。ちゃんと準備して問題点を整理してから中止を言うべきだった」(中村さん)
原告の主張は一貫している。国が治水対策の目標とするのが、一九四七年に下流域に大きな被害を及ぼしたカスリーン台風時に利根川の治水基準点・八斗島(やったじま)(群馬県伊勢崎市)を流れた水量。国は最大で毎秒二万二千立方メートルと推定するが、過大すぎる。千葉にはダムを造ってまで多くの水は必要なく、県が負担する巨費の五百億円超に見合うメリットはない-。
「ムダな公共事業の象徴であるダムを止めたい、という思いだ」。中村さんと一緒に活動してきた元佐倉市議の服部かをるさん(65)は強調する。
活動の周知には苦労してきた。今月、地元のお祭りで来場者から「八ッ場ダムは群馬の話では…」と言われた。「残念で、同時に活動の意義を広く伝える難しさも感じた」
だが、中村さんと服部さんはこう続ける。「誰かがダムに異議を唱えなければ、ダムの問題は表面化しなかった。法廷で争って証拠を残したことで、今後ダムに問題が見つかったときに、国の対処を指摘できる」
<八ッ場ダムと住民訴訟> 利根川の支流、吾妻(あがつま)川で建設が予定されている多目的ダム。国土交通省関東地方整備局が事業主体で、1952年に建設計画を発表した。当初(86年)は事業費2110億円で2000年度の完成予定だったが、工期の変更は4回目。現時点で事業費は4600億円で、約6割を負担する流域の千葉、埼玉など6都県の住民が事業費支出は違法だとして提訴。各地裁は住民の訴えを退け、いずれも東京高裁に控訴。今年3月、都民の控訴は棄却されたため上告している。
◆2013年10月30日 東京新聞千葉版
http://www.tokyo-np.co.jp/article/chiba/20131030/CK2013103002000151.html
ー八ッ場を止めたい住民訴訟・高裁判決を前に <下>県予測「伸びる」だが…ー
紅葉が映える景勝地・吾妻(あがつま)渓谷の上流に巨大な橋が現れた。下には八ッ場(やんば)ダムで水没する川原湯(かわらゆ)温泉(群馬県長野原町)。橋はダムの完成後、両岸の高台に造られた二つの代替地を結ぶことになる県道の湖面1号橋だ。JR吾妻線の付け替え工事も進み、渓谷美を撮り残そうとカメラを手にした人が目立つ。
水没地の住民が移転を強いられた「大義」の一つが、東京や千葉の住民の利水だ。
「増え続ける水需要を支え、洪水から生活を守る」。国土交通省八ッ場ダム工事事務所はホームページで事業の必要性をうたう。裁判を争う県側も「新たな水源の確保を」と建設を後押ししてきた。
「でも、実際は水余りです」。東京高裁で住民側の証人となった市民団体「水源開発問題全国連絡会」共同代表の嶋津暉之(てるゆき)さん(70)は反論する。
一年のうち最も多くの水が使われた日の水量「一日最大給水量」。県内は一九九四年度の百四万七千立方メートルから漸減し、二〇一二年度に九十九万五千立方メートルに。節水型家電の普及などに伴い、利根川流域の一都六県全体でも減っている。
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水の需要に影響する人口も減少が続く見込みだ。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、一二年に約六百二十一万人だった県人口は、十三年後の二五年には五百九十九万人へ。「少子高齢化で人口が減っていくならば、水の需要も減るはず」(嶋津さん)
だが、県水道局の予測は右肩上がりだ。二五年度の一日最大給水量は百十三万四千立方メートルと、昨年度から10%以上伸びるとする。「利根川に近い地域では県全体の人口の推移とは異なる。一二年度に給水を受けた人口は五千人増えている」を根拠に挙げる。
県がダム完成で得る利水量は十二万立方メートル余。これは県の水需要の実績を上回る予測増加分とほぼ一致する。しかし、国交省水資源部の研究会は〇八年、利根川流域の水使用量が減ると予測済みだ。
工業用水も水余りだ。原告側の山口仁弁護士が「各企業は契約した水量の四分の三しか使っていない。工業用水が水道用水に転用されている」と主張。県側は「契約水量を安定供給するために、水源の確保が必要だ」と反論している。
県内の利根川は下流にあたり、治水面での恩恵は少ないという。「洪水時でも八ッ場ダムによる水位低下は数センチ程度」(原告側)
国は、将来想定される最大流量について一九四七年のカスリーン台風時を基に算出。上流の治水基準点・八斗島(やったじま)で当時と同じ毎秒二万二千立方メートルの水を安全に流すために、ダムが必要だとしてきた。
この数字をめぐって、民主党政権の馬淵澄夫国交相が二〇一〇年十月の衆院予算委で「根拠がない」と明言したが、その後、国交省に依頼された日本学術会議が「妥当」との結論を出している。県側も同様の立場だ。
しかし、今年三月まで開かれた国交省関東地方整備局の利根川の有識者会議では、流量の算出方法などへの疑問が次々と露呈した。
「最大流量は多くても一万七千立方メートル程度の可能性がある。有識者会議ではカスリーン台風時の上流域での『氾濫図』が過大で捏造(ねつぞう)も判明した」
原告側の中丸素明弁護士は三十日の東京高裁判決を前に、語気を強めて続ける。「ダムの根拠となる治水データが崩れている点で、過去の判決とは状況が違う。ダム事業は合理性を欠くため、公金支出は違法だ。画期的な判決を期待している」(この連載は白名正和が担当しました)
<八ッ場ダム工事の状況> 事業主体の国交省によると、ダムにより水没する地域の家屋移転、JR吾妻線や国道の付け替え工事は、約9割が完了(今年8月末時点)。来年10月から本体工事を始め、19年9月の完成後、半年かけてダムに水をためる「試験湛水(たんすい)」を行う。
一方、家屋の移転先の代替地はダムののり面近くに位置し、湛水時に地盤が不安定になる恐れも指摘されている。民主党政権時、150億円と見積もった追加の地滑り対策費などは、現在の事業費4600億円には含まれておらず、変更の可能性もある。