大蘇ダムは国営大野川上流土地改良事業の中核施設として2004年に完成しましたが、漏水が止まりません。
何度も行われてきた漏水対策によって、事業費は当初の130億円から720億円に膨らんでいます。農業用水の受益地とされる熊本県阿蘇町と産山村、大分県竹田市は、これまで対策費の負担に加え、ダムの維持管理もさせられてきましたが、これら関係自治体の協力も得られなくなり、国の直轄管理になると発表されました。
右画像=農水省ホームページより、「国営大野川上流土地改良事業の概要」3ページより。
読売新聞の報道によれば、地元、熊本県の佐藤知事は県議会において、地元自治体の管理負担が軽減されるだけでなく、「今後、安定した農業用水の確保や供給が期待できると評価」とのことですが、大蘇ダムの管理が地元から国直轄へ移行しても、漏水の根本的な原因を取り除くことはできません。
大蘇ダムの漏水問題については、13年前の掲載になりますが、週刊ダイヤモンドの以下の記事が詳しいです。当時から現在の惨状は見通せていたことがわかります。
◆2012年7月10日 週刊ダイヤモンド
ー誰も責任をとらず、湯水のように注がれる修復費用 “底抜け”大蘇ダムに振り回される住民たちの失意ー
◆2012年9月25日 週刊ダイヤモンド
「“底抜け”大蘇ダムの修復はきちんと進んでいるのか? 再び現地で見た“ぼったくり工事?”の迷走としわ寄せ」
◆2025年3月10日 読売新聞
https://www.yomiuri.co.jp/local/kyushu/news/20250311-OYTNT50056/
ー漏水続く熊本県の大蘇ダム、国の直轄管理へ…2027年度めど「高度な技術的配慮が必要」ー
漏水が続いている農業用の大蘇ダム(熊本県産山村)について、九州農政局が2027年度をめどに国直轄管理とする方向で調整を進めることが分かった。佐藤樹一郎・大分県知事が7日の県議会一般質問で明らかにした。
大蘇ダムは、熊本県阿蘇市、産山村と大分県竹田市の農業用水を安定確保するために建設された。05年に本体工事はいったん完了したが、地盤からの水漏れが判明。対策を行ったが、19年の貯水試験でも漏水が続いていた。現在、地元の維持管理協議会がダムの操作や管理を行っている。
佐藤知事は一般質問で、5日に九州農政局から同協議会に説明が行われたことを明らかにし、「ダムの管理について高度な技術的配慮が必要となることから、27年度から国の直轄管理事業を導入する方向で関係機関と協議を進めると話があった」と答弁。その上で、「今後、安定した農業用水の確保や供給が期待できると評価している。地元の管理経費も大幅に軽減される」と述べた。
◆2025年3月11日 くまもと県民テレビ
https://news.yahoo.co.jp/articles/bf495826fd7a49f711bd51e724097131ffd1e831
ー想定上回る水漏れが続く産山村の国営大蘇ダム 2027年度めどに国が直轄管理へー
想定を上回る水漏れが続く産山村の国営大蘇ダムについて、熊本県の木村敬知事は11日の県議会で、2027年度をめどに国が直轄管理することを明らかにしました。
■熊本県 木村敬知事
「本県が要望していた大蘇ダムの管理を国が直轄して行うことになることによって、 地元の負担はおおいに軽減されます」
農業用水確保のために建設された大蘇ダムは、2005年の完成以降水漏れが想定を上回り、貯水池全体から地下に水が浸透していることが判明。
当初約130億円だった総事業費は720億円までに膨らんでいます。
国は新年度からコンクリートの補修工事などに取り組みますが、追加費用は国でまかない、地元には負担を求めない方針です。