八ッ場ダムが建設された吾妻川は、上流の草津白根山などの影響による酸性河川です。この吾妻川にコンクリートと鉄を使うダムを建設するために行われてきたのが、吾妻川の中和事業です。八ッ場ダムは、一日約60トンの石灰を吾妻川に毎日投入する中和事業なしには成り立たず、中和事業が軌道に乗ったことによって、はじめて八ッ場ダム計画が現実のものとなりました。この中和事業は八ッ場ダムがある限り続ける必要があります。
2017年に中和事業の費用がいくらぐらいなのか、中和事業を行っている国土交通省品木ダム水質管理所の担当者に尋ねたところ、約10億円((石灰の運搬費用…約2億円、品木ダム浚渫費用…約3億円、他に電気系統の管理(外注)、中和設備のメンテナンス費、貯砂ダム建設等)とのことでしたが、今朝の地元紙の報道によれば、今年度は11億8千万円を確保したとのことです。
◆2025年4月25日 上毛新聞 一面より
ー河川中和作業など 事業費11億円に 本年度、国交省品木ダム水質管理所ー
火山由来の成分が流れ込む吾妻川の中和に取り組む国土交通省品木ダム水質管理所(草津町)は、本年度の中和作業やダムの堆積物除去などの事業費として、11億8千万円を確保したと発表した。
主に上流の草津町を流れ、酸性度が高い湯川、谷沢川、大沢川の3河川に1日計約60トンの石灰を投入する。中和反応で発生した堆積物などを処分場に運び出し、ダムの容量を確保する。
同管理所によると、吾妻川は草津白根山に起因する酸性河川が流れ込むため、そのままでは生き物が生息できず、鉄やコンクリート製工作物の劣化といった悪影響もある。中和事業は県が1964年に始め、68年以降は国が魚の生息できる水環境を維持している。
—転載終わり—
中和事業は計画が立案された1950年代から事業が軌道に乗った1960年代にかけて、八ッ場ダムとの関係が新聞で取り上げられていませんが、なぜか八ッ場ダム事業が本格化して以降、両者の関係は伏せられてきました。この記事にも、吾妻川に酸性の水が流れ込むことにより「鉄やコンクリート製工作物の劣化といった悪影響もある」との説明はありますが、八ッ場ダムとの関係については一切触れられていません。
中和生成物をためる品木ダムは、浚渫作業を行っても堆積物が満杯に近い状態になっています。また、ヒ素を含む浚渫物の処分場は、品木ダムの集水域内に限られるため有限です。八ッ場ダムは今後、第二の品木ダムの役割を担う可能性があり、八ッ場ダムと中和事業が切っても切れない関係にあることは将来、避けては通れない問題となる筈です。