ダム事業では事業用地を取得するために、地権者が手放そうとしなかったり所有者が不明な土地をダムの事業者が収用することを可能とする手続きが行われます。それが「土地収用法に基づく事業認定の申請」です。「土地収用」の根拠は事業の「公共性」です。
「事業認定の申請」の際、事業の「公共性」が検証されるのが、この手続きの本来の趣旨ですが、申請を受けるのは国土交通省ですから、公共性の検証はダム事業にお墨付きを与える形式的なものにすぎません。
川辺川ダム事業をめぐり、今月16日、国土交通省が事業認定を申請しました。八ッ場ダムもそうでしたが、国土交通省が申請し、国土交通省が事業認定を行う、お手盛りの手続きが控えています。
国土交通省の記者発表の資料はこちらです。
◆2025年5月16日 朝日新聞
https://digital.asahi.com/articles/AST5J2CWWT5JTLVB001M.html
ー川辺川ダム、土地収用法の事業認定申請 国交省「任意取得に努める」ー
熊本県を流れる球磨川支流の川辺川ダム建設計画で、国土交通省が16日、土地収用法に基づく事業認定を国交相に申請した。未取得の用地を得るための手続きの一つ。今後、公共性が高い事業と認められれば、所有者の同意がなくても土地を取得できるようになる。
担当する同省の川辺川ダム砂防事務所は「事業認定された後も収用手続きは保留し、強制ではなく任意による用地の取得に努める」とする。流水型となるダムの建設用地は99%が取得済みで、残りは所有者が判明しない土地などを含め、必要な契約件数ベースで約15件という。
ダム計画は1966年に旧建設省が発表し、反対の住民意見などを受けて2008年に当時の蒲島郁夫知事が白紙撤回。民主党政権が翌年、建設の中止を表明したが、20年7月の豪雨を受けて流水型ダムの建設へと方針転換された。
国交省は「早期に球磨川流域の治水安全度の向上をはかりたい」とし、27年度にダム本体の基礎掘削工事に着手し、35年度の事業完了を目指す。