国土交通省はさる5月16日、土地収用法に基づく川辺川ダムの事業認定を申請しました。
ダム事業者が事業用地を強制的に収用(召し上げる)ことを可能とする「事業認定」は、ダム事業者(川辺川ダムの場合は国土交通省九州地方整備局)が国土交通省本省に事業の「公共性」を認定してもらうことによって成立します。
同じ省内での手続きですから、最初から形式にすぎないことは明らかですが、手続きとして一応は関係者の意見を聴く段階を経ることになっています。その手始めが、5月26日に始まった事業認定申請書の公告と縦覧です。
けれども、申請者である国土交通省は自らのホームページで事業認定申請書を公開せず、ダム建設地の相良村と水没予定地を抱える五木村の両村役場のみで広告と縦覧を行っているとのことです。驚くことに、川辺川ダム事業を進める国土交通省川辺川ダム砂防事務所のホームページは、本日5月31日時点で事業認定の公告と縦覧を開始したことすら明らかにしていません。
川辺川ダムは国民すべてが事業費を負担する国の事業ですから、すべての国民が関係者と言えますが、できるだけ一般の関心が向かないようにしたいということなのでしょう。
けれども、事業認定に関する意見書の提出は、誰でも行うことができます。国土交通省は事業認定に関する公聴会すら、川辺川ダムに反対する熊本県の市民運動では意見書の提出を広く全国の人々に呼びかけています。
関連記事を転載します。
◆2025年5月28日 熊本日日新聞
https://kumanichi.com/articles/1784523?check_logged_in=1
ー川辺川の流水型ダム計画 収用法に基づく事業認定申請書の公告・縦覧開始 国交省ー
国土交通省が球磨川支流の川辺川に計画する流水型ダム建設事業を巡り、国交省九州地方整備局が提出した土地収用法に基づく事業認定申請書の公告・縦覧が26日、建設地の相良村と湛水時に一部が水没する五木村で始まった。6月9日まで。
縦覧期間中に請求があれば公聴会や審議会を開催する。意見書は熊本県に、公聴会開催の請求は国交省(東京)に提出できる。
九州地方整備局は16日、国交相に事業認定を申請。認定されれば、任意交渉による取得が困難になった場合、県収用委員会の裁決を経て用地や漁業権の収用が可能になる。
用地など1203件のうち99%は取得済みで、未取得は15件程度。球磨川漁協(八代市)と漁業権の補償について交渉する。国交省川辺川ダム砂防事務所(相良村)は「認定後も任意協議による用地取得に努める」としている。
閲覧は五木村役場1階ダム対策課窓口と、相良村役場1階村民ホールで、いずれも開庁日の午前8時半~午後5時15分。閲覧には氏名、住所の記入が必要。(金村貫太)
◆2025年5月29日 毎日新聞熊本版
https://mainichi.jp/articles/20250529/ddl/k43/040/181000c
ー事業申請書 縦覧始まる 川辺川・流水型ダム 熊本の2村役場ー
熊本県の球磨川支流の川辺川に建設予定の流水型ダムについて、土地収用法に基づく事業認定申請書の公告・縦覧が五木、相良の両村役場で始まった。縦覧は6月9日までで、期間中は意見書の提出などができる。
五木村は水没予定地があり、相良村は建設地。国土交通省九州地方整備局川辺川ダム砂防事務所などによると、土地買収が必要になる五木、相良の両村長名で26日に公告・縦覧の開始を公示した。
事業認定は九地整が国交相に申請し、認定されれば土地や漁業権の強制収容ができるようになる。土地買収が必要な市町村では土地収用法に基づく公告・縦覧が定められ、関係者は期間内に意見書を提出したり、公聴会の開催を請求したりすることができる。
縦覧開始は、申請手続きを進める国交省がホームページで公表した。一方、開始が分かりにくいとの指摘も受けたといい、同砂防事務所の担当者は「法にのっとった手続きを進めているが、引き続き分かりやすい周知に努めたい」と述べた。【山口桂子】