雨が少なかった今年の夏は、八ッ場ダムの貯水池にも異変をもたらしました。2025年のダム完成後、これほど水位が低下したことはありません。
(気象庁は9月3日午前9時現在、日本の南で発達中の熱帯低気圧について「12時間以内に台風に発達する見込み」と発表しています。台風(15号)となれば、日本列島を縦断する進路が想定されており、八ッ場ダムにも影響するかもしれません。)
★ダム堤に近い八ッ場大橋より8月30日撮影。貯水率21%。
ダム堤周辺は水深があり、立ち枯れた木が少ないため、水陸両用バスはダム堤近くの通路から進入。この2日後には運行が休止された。
NHKが八ッ場ダムの貯水率が半分以下となったと報じたのは8月19日のことです。
この時点でカヌーなどダム湖観光に支障が出ていたのですが、翌20日には貯水率が40%に低下。8月26日には30%を切りました。この間、ダム上流の上信県境では時折夕立や雷雨がありましたが、八ッ場ダムは放流も行っているため水位はさらに低下。以下で紹介した9/2付の上毛新聞では21%となっていますが、現時点(9月3日13時)の貯水率は、八ッ場ダムのリアルタイム情報によれば15.7%です。
https://www.ktr.mlit.go.jp/tonedamu/teikyo/realtime2/E014020_6.html
水陸両用バスも運航困難となり、9月1日から休止。
https://dtsline.jp/news81
国交省利根川ダム統合管理事務所は、「1日、渇水対策支部を設置し、さらなる水位低下への「準備体制」に入った。」(上毛新聞)とのことです。こうしたニュースを見ると、水道への影響を心配する声があがるのですが、たとえば群馬県の県庁所在地、前橋市の場合、水道水の半分は地下水から供給されています。かつては地下水のみで賄われていましたが、八ッ場ダム事業に県の水道事業が参画したため、利根川の表流水を取水しなければならなくなりました。豊富で水質がよく、地産地消の安価な地下水を減らし、利根川の水への依存度を高めたため、前橋市の水道料金は大幅に値上げされてきました。利根川流域都県の他の自治体でも、同様の状況が住民が気がつかないうちに起きています。
★水没した川原湯温泉の旧温泉街は、斜面に残された木が立ち枯れて黒々と広がっているあたりにあった。背後の山は金鶏山。
★道の駅「八ッ場ふるさと館」の脇の湖面橋(不動大橋)より、下流側を望む。右岸側に川原湯地区の上湯原。左岸側では水位低下により、水没した吾妻川沿いの線路(JR吾妻線)の跡が見えてきた。久森沢が吾妻川に注ぐこのあたりには田んぼが広がり、山麓には長野原第一小学校があった。
★不動大橋の上流側。猛暑で藻類が増殖しているせいか、ダム湖の中ほどにあたるこのあたりでは水の色が緑がかっている。水没した線路跡と上湯原橋も見える。
★同じく不動大橋の上流側で9月2日午後5時撮影。貯水率は17.5%へとさらに下がった。
◆2025年8月19日 NHK前橋放送局
https://www3.nhk.or.jp/lnews/maebashi/20250819/1060020428.html
ー群馬 高温少雨の影響でダムの貯水率低下 観光にも影響出るー
群馬県内では気温が高く雨が少ない状態が続いていて、国などが管理する県内のダムの貯水率は半分に満たないところも出てきています。
今のところ取水制限は行われていませんが、国土交通省は引き続き貯水率などの状況に注意する必要があるとしています。
国土交通省関東地方整備局河川環境課によりますと、気温が高く雨が少ない状態が続いている影響で、国などが管理する県内にあるダムの19日正午時点の貯水率は平均で65.3%と、渇水への注意が必要な70%を割り込んでいます。
それぞれのダムの貯水率は藤原ダムが100%、草木ダムが83.7%などと、平年並みになっている一方で、八ッ場ダムが47.2%、薗原ダムが24%と貯水容量の半分を下回っています。
県内では今のところ取水制限などは行われていませんが、国土交通省では「今後も暑さが続くと予想されることから、引き続き、水を大切に使ってもらえるようよびかけるとともに、貯水量を注視していきたい」と話しています。
【観光への影響】
ダムの水位が下がっている影響で観光への影響も出ています。
長野原町にある八ッ場ダムは、猛暑と雨が少ない影響で19日正午時点の貯水率は47.2%と半分以下となっています。
湖畔の風景やレジャーが楽しめるため、毎年年間20万人以上の観光客が訪れ、本来なら、いまが観光シーズンの最盛期です。
しかし、地元の観光業者によりますと、水位が下がっている影響でカヌーの乗り場が舗装されていない足場の悪い場所となり安全な乗り降りができなくなっているほか、湖に出ても、水中の樹木に接触してけがをするおそれがあるとして、23日以降のツアーの予約を当面休止にすることを決めました。
19日も、水位が下がり、一部で干上がっている場所があったほか、ふだんは湖の底に沈んでいて見ることができない鉄橋があらわれていました。
カヌーツアーを行っている高田勝さんは、「安全を考えるとお客さんを入れない方がいいと判断しました。経営的に大変な部分もありますが、しかたがありません。来たいと言ってくれるお客さんには申し訳ない気持ちです」と話していました。
◆2025年9月2日 上毛新聞一面
https://www.jomo-news.co.jp/articles/-/754549
ー群馬県の利根川上流9ダムの貯水率45% 八ツ場ダム(長野原町)では水底から道、鉄橋 少雨で水位低下ー
記録的な猛暑に伴う少雨で、群馬県内のダムの貯水率が低下している。八ツ場ダム(長野原町)では水位が通常より10メートル余り低くなり、ダム完成に先立つ2019年秋の試験湛水で水没し、普段は水中にある道路や旧吾妻線の鉄橋があらわになっている。
利根川ダム統合管理事務所(前橋市)によると、利根川上流の九つのダムの1日時点の貯水量は計1億6439万立方メートル、貯水率は45%で「かなり減っている状態」という。
◆2025年9月2日 上毛新聞社会面 紙面より
ー群馬のダム水位低下を受け、利根川ダム統合管理事務所(前橋市)が渇水対策支部を設置 八ツ場ダム(長野原町)、水陸両用バスの運行を中止ー
少雨によるダムの水位低下は観光面にも影響が及んでいる。群馬県の八ツ場ダム(長野原町)ではダム湖でのカヌーやカヤックに加えて、1日からは観光用の水陸両用バスの運行も中止に。八ツ場ダムを含めた利根川上流9ダムの貯水量の減少は今後も続く見通しであることから、利根川ダム統合管理事務所(群馬県前橋市)は1日、渇水対策支部を設置し、さらなる水位低下への「準備体制」に入った。
水位がダムの管理開始以降、最低となった八ッ場ダムでは1日、観光用の水陸両用バスに必要な水位が確保できないとして、バスの運航が中止となったほか、9月の予約もキャンセルとなった。ダム湖で楽しめるカヌーやカヤックについても、8月中旬からできない状態が続いているという。
水陸両用バスを運転する野口徹船長(45)は「こんなに水位が低いのは初めて。客が来ないとこちらも干上がってしまう」と困惑していた。
埼玉県飯能市の50代夫婦は八ッ場ダムの水位低下を交流サイト(SNS)で知り、様子を見に来た。水没していたJR吾妻線や道路が現れたのを見て、「普段見ることのできない風景。かつての生活の様子が思い浮かび、感慨深い」と写真を撮影していた。
利根川上流にある9つのダム(矢木沢、奈良俣、藤原、相俣、薗原、八ッ場、下久保、草木、渡良瀬遊水池)を管理している同事務所によると、貯水率が最も低下しているのは相俣(みなかみ町)で18%、次いで八ッ場(長野原町)の21%だった。今後はダムの貯水状況の監視を強化し、きめ細かなダム運用を行う。
同事務所の守谷武史副所長は「現状では取水制限には至っていないが、水資源には限りがある。引き続き節水を心がけてほしい」と呼びかけた。
前橋地方気象台によると、県内の8月の合計降水量は、全17観測地点で平年値(1991年~2020年の平均値)をいずれも下回った。藤岡では同月の合計降水量が31.5ミリと、平年の2割弱にとどまった。
気象庁によると、県内は今後1か月ほど高気圧に覆われやすい状態が続く見通し。9月中旬ごろまでは平年に比べて晴れる日が多くなり、降水量が少なくなるとみられている。