ダム計画では、ダム本体工事とセットで水没地域の振興策が図られます。都市用水の供給を目的とするダム建設では、水源地域特別措置法(略称:水特法)によって潤沢な予算がつけられます。八ッ場ダム事業における水特法事業の費用は、ダム本体工事費より高額な997億円に上りました。人口が激減し、高齢化が進む地域に過剰な道路や地域振興施設、公園等々が整備されてゆく様は、「札束で頬を打つ」という言葉を思い起こさせるものでした。
石木ダム事業でも「地域振興」の説明会が行われたとのことです。八ッ場ダムは国の事業であり、水特法の事業費を負担したのは首都圏一都五県でした。石木ダムは県の事業であり、事業費を負担するのは長崎県と佐世保市だけですから、事業の規模は八ッ場ダムに比べて小さいものの、巨大プロジェクトが「地域振興」の名のもとに地域の分断をもたらす点では変わりありません。
◆2025年11月16日 長崎新聞
https://www.nagasaki-np.co.jp/kijis/?kijiid=ff235216e73144fbba51ac0c1f31081e
ー石木ダム振興策に住民賛否 インフラ充実など長崎県が説明 川棚ー
長崎県と佐世保市が東彼川棚町で進めている石木ダム建設事業に関し、県は14日、周辺地域のインフラ施設などを充実させる「水源地域整備計画案」を地域住民に説明し、ダム完成後の地域振興策を示した。
計画は水源地域対策特措法(水特法)に基づき、県が佐世保市、川棚町と策定中。生活基盤充実や生活の質向上、誘客による活性化などを盛り込んだ素案を昨年12月に県のホームページなどで公表し、意見を募っていた。
説明会は町役場であり、約50人が参加。大石賢吾知事は、上流と下流の各エリアに多目的広場や水と親しめる公園などを整備する計画の内容を説明した。
質疑応答では「移転した地権者は苦渋の決断をした。2032年度の完成を守って」「世界的にダムは不要とする流れなのに、自然を壊していいのか」などと賛否の意見が出た。
大石知事は「ダムの必要性を理解してもらえるよう努力する。町民の意見も踏まえ、整備計画を魅力的なものにしたい」と述べた。
今後は住民の意見を踏まえ、県、佐世保市、川棚町が協議。来年度中に国へ計画を申請する予定。
◆2025年11月16日 讀賣新聞
https://www.yomiuri.co.jp/local/kyushu/news/20251116-OYS1T50024/
ー石木ダムの水源地域整備計画案、長崎県が住民に説明…下流にはキャンプ・ソフトボールなどに使える広場ー
長崎県と佐世保市が川棚町で進めている石木ダム建設事業で、県は14日夜、川棚町役場で住民説明会を開き、ダム建設で影響を受ける地域の生活環境などを整える水源地域整備計画案について説明した。
計画は水源地域対策特別措置法に基づいて県が原案をまとめ、国の決定を受けて県などが整備事業に着手する。計画案は、ダムの下流エリアにはキャンプやソフトボールなどに使える広場、上流の木場地区にはホタル祭りなどのイベントが開ける広場や農産物直売所を整備するなどの内容。この日は地元住民約60人が参加し、大石知事が説明した。
会場からは、整備計画に伴って佐賀県嬉野市と結ぶ県道の早期全線開通を求める要望やダム建設のために移転した住民の声を知事が聞く機会を求める意見が寄せられたほか、自然保全のために建設撤回を求める意見も出た。大石知事は「ダムの必要性の議論はもう確定している。地元の声をくみ取って整備計画をまとめ、再延長なく完成させていきたい」と完成に向けた意欲を伝えた。
県は今後、建設予定地の住民らを対象にした地元説明会を12月7日に開く予定で、大石知事も出席する方針。
◆2025年11月16日 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20251116/ddl/k42/040/179000c
ー石木ダム 住民ら賛否飛び交う 川棚で整備計画案説明会 /長崎ー
県と佐世保市が進める石木ダム建設事業について、完成後の地域振興につなげる「水源地域整備計画案」の説明会が14日夜、川棚町役場であった。住民約60人が参加。事業によって分断された地域住民の複雑な意見が飛び交った。
計画案では、多目的広場などを整備し、生涯スポーツ振興の場にしつつ、農産物販売施設やダムカレーの提供などで誘客による活性化を目指すとした。質疑応答では参加者から「ダムができるのを心待ちにしている。反対住民に説明を尽くしてほしい」「行政代執行してまで、現在の自然あふれる風景を壊さないでほしい」といった意見が寄せられた。
計画案は今後、波戸勇則・川棚町長らの意見をふまえ、国に申請し、決定後に振興策を進める方針。【柳瀬成一郎】 〔長崎版〕