八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

群馬県、八ッ場ダム貯水池を湖沼として水質調査・対策へ

(*12/24 追記した箇所を太字で表示しました。)

 群馬県の環境保全課が今年2月に開催した「令和6年度環境審議会水質部会」の結果概要を公式サイトに掲載しています。
 https://www.pref.gunma.jp/page/731060.html

 この中に、八ッ場ダムの貯水池についての資料と報告があります。

 八ッ場ダムの貯水池における水質は、下流の河川環境に影響を与えるだけでなく、ダム湖観光を地域振興策として掲げる地元にとって非常に大きな意味を持ちます。八ッ場ダムは完成からまだ5年と新しいのですが、ダム湖は年を経るにつれて堆砂が進み、富栄養化による藻類の増殖などの問題が各地のダムで発生しています。

 水質調査にあたっては、対象を類型指定することになっています。これまで八ッ場ダム貯水池は河川として類型指定されてきましたが、上記ホームページの資料によれば、県環境保全課は湖沼として類型指定を行うとのことです。

配布資料 資料5 「八ッ場あがつま湖の類型指定に向けた調査の実施について 」

1.概要
 令和2年度から管理を開始した八ッ場ダム(八ッ場あがつま湖)は、現在吾妻川上流の一部として河川の類型が適用されているが、湖沼としての類型指定の要件(「貯水量 1,000 万㎥以上」及び「滞留時間4日以上」)を満たしているため、湖沼として改めて類型指定を実施したい。
 湖沼の類型指定を実施することにより、湖沼としての利水や水生生物に着目した総合的な水質汚濁防止対策を行うことが期待される。 (以下略)

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 河川から湖沼へ類型指定を変更する理由として、事務局(環境保全課)は次のように説明しています。
(「6.報告事項」の「(4)八ッ場あがつま湖の類型指定に向けた調査の実施について」)

「八ッ場あがつま湖は現在河川として類型指定がされているが、河川と湖沼では基準値が異なるため、湖沼として類型指定を行うことで水質分析結果と基準値との比較をし、対策を行いやすくなると考えている。」

 河川指定から湖沼指定に変更すると、河川指定ではなかった全窒素と全燐が水質基準項目となります。
 国土交通省による八ッ場ダム定期報告書の概要の水質箇所を参考に、湖沼の全窒素基準で当てはめると(年間平均値で評価)、ⅠからⅤまで5種類の類型がある中で、一番最低ランクのV類型1㎎/Lに相当します。これは窒素過多の湖沼であることを意味します。

 八ッ場ダムは草津山麓の温泉水だけでなく、上流から大量の生活雑排水や農業廃水が流れ込むのは確実ですので、長期的には窒素だけでなく、燐も増加すると考えられます。窒素と燐の比率は藻類の発生、ひいてはダム湖観光にも影響を及ぼす可能性があります。今後の長期的変化に着目することが必要です。

〈参考資料〉
 第33回 関東地方ダム等管理フォローアップ委員会 八ッ場ダム 定期報告書の概要 令和6年10月31日 国土交通省 関東地方整備局 

「5.水質」➡35ページ~58ページ

〇52ページ T-N(全窒素)
 「貯水池は、0.62mg/L~1.2mg/Lで推移し、上層の年平均値は0.8mg/L程度で栄養塩階級では富栄養湖に該当している。」

 

〈参考〉環境基準の表(環境省ホームページより)

 〇河川の環境基準
  https://www.env.go.jp/content/000344420.pdf

 〇湖沼の環境基準
  https://www.env.go.jp/content/000344421.pdf

 
 群馬県環境保全課のホームページに掲載されている環境審議委員会の委員の発言には、以下の文言があります。
「現在は八ッ場ダムの水質に窒素及びリンの影響は出ていないが、水質や底質の様子を見ると、窒素及びリンの影響が出始めているのではないかと考えており、さらに5年後には現在よりも悪化すると考えられる。」

◆「6.報告事項」より