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長崎県知事選、石木ダム推進目指した現職落選

 総選挙と同日に実施された長崎県の知事選では、現職が落選し、元副知事の平田研氏が当選しました。長崎県の事業である石木ダム事業は、県知事交代の影響を受けるでしょうか?

◆2026年2月9日 朝日新聞
長崎県知事選、新顔の元副知事・平田氏が初当選 現職を破る

 長崎県知事選は8日投開票され、無所属新顔で元副知事の平田研氏(58)が初当選を決めた。いずれも無所属で現職の大石賢吾氏(43)、共産党県委員会常任委員で新顔の筒井涼介氏(32)=共産推薦=を破った。投票率は57.27%(前回47.83%)。

 2022年の前回選で大石氏を推薦した自民県連は今回、平田氏を推薦。ただ、推薦先をどちらにするか決めた昨年10月の県連委員会での投票数は僅差(きんさ)だった。それにもかかわらず平田氏を強硬に推した執行部に支持者や一部所属議員らが反発。「自民分裂選挙」となった。

 国土交通省出身の平田氏は国とのパイプがあることなどを強調。与野党県連や地元の経済団体が相乗りする組織戦で支持を広げた。大石氏は県医師連盟などの支援を受け県政の継続を訴えたが、及ばなかった。

—–転載終わり—-

 石木ダム事業用地には今もダムに反対する13世帯の住民が暮らし続けており、行政代執行を行わなければダムを建設できません。このようなケースは全国のダム事業の中でも稀有であり、注目を集めています。現職の大石知事は一期目の任期中、ダム推進を前提として住民との対話を求め続けてきましたが、住民らはこれを一切受けつけませんでした。石木ダム事業は毎年予算が計上され続けるもののダム建設ができない状況が続いています。
 知事選の終盤では、石木ダムも争点の一つに浮上しました。石木ダム中止を訴えた共産党の筒井涼介候補は落選、当選した平田氏(国土交通省出身)は、「推進することが基本」としながらも、石木ダムの見直しを求める有識者グループが要望している「流域委員会」を設置するとしています。

 状況を詳しく伝える地元紙の記事がネットで公開されています。

◆2026年1月28日 長崎新聞
ー長崎県知事選、「石木ダム」が争点に浮上…「流域委員会」で現新攻防ー

 長崎県と佐世保市が東彼川棚町で進める石木ダム建設事業が、知事選(2月8日投開票)の争点に急浮上している。推進派の新人、平田研候補(58)が、治水の有識者の意見を聞く「流域委員会」の設置を表明したためだ。同じく推進の立場で現職の大石賢吾候補(43)が「事業遅延を招く」と攻勢を強める中、平田氏は推進派、反対派の双方に配慮しながら対抗する。

 流域委員会は、治水の有識者らでつくる市民団体が県に設置を要望。水没予定地で暮らす反対住民13世帯も希望している。平田氏は知事選に先立ち、無所属の県議2人と委員会設置の政策協定を結んでいた。

 これに対し、大石氏は「(計画を)見直す必要があるという明確な根拠がなくては(流域委は)開催すべきではない」と選挙戦初日から批判を展開。目標の2032年度完成に「覚悟を持って向き合う」と強調する。25日、佐世保市で開いた個人演説会では、応援する金子容三前衆院議員も「ふざけるな」と舌鋒(ぜっぽう)を鋭くした。

 一方の平田氏は「にらめっこしている状態が、建設推進の姿ではない」と主張。委員会の設置は、膠着(こうちゃく)状態にある13世帯との「対話のプロセス」であり、「ただちに事業の遅延につながらない」とする。大石氏と13世帯の対話が、任期1年目で途切れたことを念頭に「信頼関係が構築できていない」と指摘する。

 24日に川棚町であった平田氏の個人演説会には、13世帯を含む反対派と推進派の住民の双方が顔を出した。反対住民は「流域委員会に賭けるしかない」、推進派の町議は「かえって建設が前に進む」とそれぞれが違った期待を口にした。

 平田氏は、自民党佐世保支部とダム建設推進を含む政策協定も結んでいる。このため陣営には摩擦も生まれている。石木ダム建設推進議員協議会幹事長の山下博史県議は、平田氏が流域委員会設置の方針を示したのをきっかけに距離を置き、金子陣営の衆院選支援に注力する。

 佐世保市の平田陣営関係者は「金子氏は当初、知事選で『どちらにも関与しない』という文書を出していたのに、ほごにして大石氏の応援に回った。石木ダムについても、これまで知らんぷりしていたのに、ここぞとばかり平田氏の攻撃に使っている。われわれはダムを政治課題と考えているが、向こうは選挙対策にしているだけ」と切り捨てた。

 新人の筒井涼介候補(32)は3候補の中で唯一、事業中止を目指す立場。反対住民の家屋を強制撤去する行政代執行が可能な状態にあることを踏まえ「住民が追い出されるかもしれない。絶対にストップさせる」と訴えている。

—転載終わり—

 石木ダムの見直しを求める長崎県内外の識者や市民らは、選挙期間中、各候補にアンケートを実施したり、緊急声明を発信するなどの働きかけを強めてきました。
 緊急声明は発信者らによれば、以下の趣旨で作成されたとのことです。

「長崎県知事選挙においてどの知事候補者を応援しようと呼びかけるものではありません。ただ、石木ダム水没予定地の住民の皆様に対する強制的な行政代執行を避けたい。そのために、石木ダム計画について公正に検証して、見直すべきところは見直してほしいということを長崎県知事選挙候補者に訴えるとともに、有権者の皆さんに石木ダムの状況を踏まえてご自身の意思を投票で示していただきたいとお願いするものです。
 石木ダム問題は、決して長崎県のローカルな問題ではありません。全国各地で行われてきた、また今も行われている「開発」をこのまま慣性力に任せて次世代に引き継いでいいのかという問いかけでもあります。」

☆緊急声明全文
 「緊急声明:選挙を通じて石木ダム見直しへ」

 関連記事を転載します。

◆2026年1月10日
ー2026長崎県知事選 県民500人アンケート(3) 石木ダム賛否は拮抗ー

 県と佐世保市が東彼川棚町で建設を進める石木ダム事業は、1月で国の事業採択から半世紀。現地で工事が粛々と進む一方、水没予定地で暮らす反対住民13世帯の理解は得られないままだ。県民アンケートでは、事業への賛否はほぼ拮抗(きっこう)。ただ、反対住民の強制的な排除を意味する行政代執行には批判的な意見が根強い。また回答者の約半数は明確な賛否を示しておらず、事業への理解や関心度には濃淡がみられる。

 回答者のうち、事業への賛否を明確に示したのは半数近くの48・3%。内訳は容認・賛成派が約25%、反対派が約24%とほぼ同数だった。賛成派は、ダムの目的である佐世保市の水需要や川棚町の治水効果から必要性を主張。反対住民らが国などに起こした訴訟で敗訴したことを踏まえ、「司法判断が出ている」(東彼波佐見町・40代公務員男性)とする人もいた。

 ■県手法に不信も
 反対派には「人口減少するのに必要なのか」(佐世保市・60代その他女性)「治水は河川改修で代替可能」(五島市・50代団体職員男性)などの疑問の他、県側の合意形成の過程や強引な手法への不信や反発が目立つ。

 県は土地収用法に基づき、2019年までに13世帯の宅地を含む全ての用地を同意なく取得した。しかし、現在に至るまで13世帯は、同じ土地で生活を続けている。このまま住民が立ち退きに応じなければ、家屋の強制撤去を含む行政代執行が避けられない。

 事業賛成派の中でも、4割近くが行政代執行に反対している。「やり方が強引かと思う」(大村市・60代会社員女性)「住民がかわいそう」(同・30代アルバイト女性)など県側の丁寧な説明や話し合いによる解決を求める意見が多く挙がった。

■理解促進に課題
 事業の賛否を「判断できない」と答えた人は全体の43・3%。「計画の存在を知らない」とする8・4%と合わせると半数を超え、県民の理解促進には依然として課題がある。

 回答者の居住地別にみると、建設地の川棚町や利水の受益地である佐世保市以外では関心度が薄れる傾向がある。「生活に関係がなく、事情がよく分からない」(諫早市・50代団体職員女性)「判断できるほどの知識がない」(長崎市・40代公務員女性)と、情報不足から判断を避ける人が多い。川棚町では回答者6人中4人が事業に反対。佐世保市では、賛成と反対、判断留保がほぼ同じ割合となり、市民の間で意見が分断している。

◆2026年2月2日 毎日新聞(石木ダムに関する回答のみ転載)
知事選候補者アンケート/4 /長崎

 (届け出順)

 ◆質問

 県が佐世保市と石木ダムの建設を進める中、川棚町の水没予定地では建設に反対する13世帯が暮らしています。この問題にどう取り組みますか。

平田研氏(58) 無 新
 石木ダムの建設については、地元との対話を丁寧に行いながら、推進することが基本である。

筒井涼介氏(32) 無 新
 今すぐ石木ダムは建設を中止すべきだ。住民の方は、寒い中でも自分の時間を削って抗議の声を上げ続けておられる。治水・利水の面でさまざまな疑問点が出されており、問題点だらけのダム計画で住民を追い出すべきではない。

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大石賢吾氏(43) 無 現
 石木ダムは、治水・利水の両面から県民の安全安心を確保する上で、必要不可欠なものであり、事業期間を再延長することなく、2032年度の完成へ向けて着実に進めていく。一方で、事業に反対する13世帯の皆さまのご理解とご協力を得た上で、円滑に進めることが最善であるという考えに変わりはないため、引き続き、理解を得る努力をしていく。

 新聞記事で取り上げられた市民団体のアンケートの質問と回答が以下のブログに詳しく掲載されています。

〈参考ブログ〉
 石木川まもり隊ホームページより 「2026年県知事選挙アンケート」